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♪無間の鐘 〜 Infinite Nightmare
 

 [音楽]
 
 撮影曲4。むけんのかね 〜 インフィニト・ナイトメア
 
 ・無間
   「[仏] 絶え間ないこと。無間地獄の略」
 ・無間の鐘
   「遠江、小夜の中山の観音寺の鐘。
    これを撞くと現世で富裕になれるが、来世には無間地獄に落ちるという。
    この伝説を取り入れて紀海音「傾城無間鐘」や歌舞伎舞踊(長唄)などが成立。」
 ・infinite
   「無限のもの。[数学] 無限大。無限(の)空間。」
 
 Infinite Nightmare.
 「無限の悪夢」
 無間地獄と意訳しても良さそう。
 無限に続き、覚める事のない終りなき悪夢。
 無間地獄の責め苦。
 
 無間地獄は八大地獄の最下層。
 阿鼻地獄とも呼ばれる。
 比較すれば他の七地獄の方がむしろ幸福と思える程の
 絶え間なく容赦ない苦痛を永劫受け続ける。
 
 無間の鐘は現世での裕福さと死後の無間地獄が約束される鐘で、
 遠州七不思議に粟ヶ岳の無間の鐘として挙げられるものだが、
 その鐘が投げ込まれたという井戸が阿波々神社の無間の井戸である。
 ここに現れる「無間」の語は、必ずしも無間地獄と密接ではなく、
 小泉八雲の「鏡と鐘と」に記される無間鐘は、
 無間山の寺が鋳造した鐘で、(粟ヶ岳の別名が無間山)
 突き破ると財宝が授かるとみなされたものとされる。
 人々が信じた鐘の効果に無間地獄の代償は伴わない。
 人々が鐘を突き破るべく連日鐘を撞く音に坊さんたちは辟易し、
 鐘を外して沼に投げ込んだとされる。
 
 とは言え、ここでは英題を考慮し、
 無間地獄の副作用が不可避(むしろ主題?)の鐘
 という捉え方で良いと思われる。
 
 曲コメントの「フハハハ、精々頑張るんだな!」は、
 シミュレーションゲーム「Sid Meier's Civilization IV」における
 最高難易度・天帝の説明文、「フハハハ、せいぜい頑張るんだな!」より。

 参考
 「広辞苑 第五版」 (無間、無間の鐘)
 「Wikipedia」 (八大地獄、阿波々神社、粟ヶ岳、シヴィライゼーション)
 「怪談・奇談」 小泉八雲著、平川祐弘編、講談社学術文庫
 「ゲーム板見るよ!」>>ゲームの最高難易度の名前って

 Special Thanks!
 「東方幻想板」>【ネタバレ】 第12.5弾 ダブルスポイラー 〜 東方文花帖 その15>128
 



みんなの心の病み
 

 [コードネーム]
 
 LV9の撮影対象、古明地さとりのコードネーム。みんなのこころのやみ。
 
 ・心の闇
   「思い乱れて理非の判断に迷うことを闇にたとえていう語。
    親が子を思って心が迷うこと。」
 ・病み
   「病むこと。やまい。病気。また、その病人。」
 
 辞書を引くと上記の「心の闇」に出会うが、
 ここでは一般的に用いられる、文字通りの心のダークサイド、負の側面だろう。
 「病み」と置き換えたのは、ネガティブな部分を憎しみや暴力ではなく
 心の負の活動、恐怖や不安に限定するためか。
 恐怖や不安に苛まれる症状は、パニック障害や強迫性障害を想起させる。
 妖怪・さとりである古明地さとりは心を読む能力ゆえに
 如何なる妖怪、怨霊からも恐れられ、忌避され、忌み嫌われた。
 東方地霊殿での二つ名は「怨霊も恐れ怯む少女」であった。
 恐怖や不安に密接であることから、「みんなの心の病み」か。

 参考
 「広辞苑 第五版」 (心の闇、病み)
 「Wikipedia」 (神経症)



何も考えていない者
 

 [コードネーム]
 
 LV9の撮影対象、古明地こいしのコードネーム。なにもかんがえていないもの。
 
 ・無意識
   「意識を失っていること。ある事をしながら、自分のしていることに気づかないこと。
    本人は意識していないが日常の精神に影響を与えている心の深層。」
 
 こいしが操る無意識は主に心理学用語としての無意識で、
 人々や妖怪の深層心理と考えられる。
 これにより、誰にも気付かれずに行動できる。
 
 一方で、さとりの能力を疎い、心を読む第三の眼を閉じてしまっている。
 これは自らの心を閉ざしたことに相当し、他者との意識の向け合いを
 双方向的に遮断していることになるため、他者の意識が向かってこないことと
 他者に意識を向けない事が両立してしまっている。
 何かの拍子にこいしの存在が気付かれても、
 こいしからその者へ意識が返って来ない可能性が高く、
 また、何処へも意識を向けていない様子を見て取ることが出来ると思われる。
 悲しいかな、それはさながら忘我、何も考えていない様子に見えることだろう。
 睡眠や気絶といった意識の無い状態と、あまり変わらないとか。

 参考
 「広辞苑 第五版」 (無意識)
 「Wikipedia」 (無意識)



心符 「没我の愛」
 

 [スペル]
 
 こいしのスペル。ぼつがのあい。
 
 ・没我
   「自我を没却すること」
 ・無我愛
   「自我を離れた真の愛。没我の愛。」
 
 没我。無我。
 我意や私心の無い状態で、
 無我愛は、我を通したり利己的な部分の無い純粋な愛を言う。
 程度や解釈によって、ボランティア精神からアガペーまで
 いろいろと考え当て嵌められるところではある。
 
 単語を分けて考えれば、
 没我や無我には「無我夢中」など、「我を忘れる」意味合いがある。
 我を忘れるとは、物事に心を奪われて無意識状態になること。
 すなわち、こいしの無意識能力に照らして考え、
 ここでは無意識の(しかも没我のため純粋無差別な)愛と言えるか。

 参考
 「広辞苑 第五版」 (没我、無我愛、無我、我を忘れる)



脳符 「ブレインフィンガープリント」
 

 [スペル]
 
 さとりのスペル。
  
 ・fingerprint
   「指紋、鱗紋。はっきりした特徴。」
 
 Brain fingerprint.
 「脳指紋」
 脳指紋法(brain fingerprinting)と呼ばれる嘘発見法より。
 外界からの刺激を意識をもって判別処理し、
 予め狙っていたものが判別された時に発生する脳波の変化を
 繰り返しの脳波記録とコンピュータ処理で解析することに基づく。
 例えば、静止した自機周囲に弾幕がランダムに降り注ぐ中、
 弾が自機に接触した瞬間にボムボタンを押す。
 弱い脳波であるため、同じテストを何度も行ない、
 データを重ね合わせる必要があるが、解析すると、
 自機の脇を弾が通り去る時の脳波に比較して、
 被験者が待ち構えて待ち構えてその瞬間が来た!と判断した際の脳波では
 P300と呼ばれる事象関連電位が見て取れる。
 視覚刺激だけでなく、種々の効果音を聞かせる中で
 ピチューンという音がしたら手を上げる、という条件でも良いようだ。
 脳指紋法は、この視覚に関連したP300の検出を嘘発見法に用いたものである。
 時に欠点や回避方法が指摘されるポリグラフよりも優れると言及されることもあるが、
 示された物品と被験者の反応の間の関連がどういったことに関連するのか、
 あるいは、解析結果の波形と解析者の判断に解釈や意図が入る余地がある
 という懸念もあり、検出精度と判定精度の乖離が課題と言える。
 
 さとりの能力+地霊殿でのこいしのスペル「妖怪ポリグラフ」を意識したものか。
 
 弾幕は嘘発見というよりも、脳ゲー。
 脳(brain)に弾幕の姿(figure)を焼き付ける(print)とか
 強引解釈の出番だろうか。単語も変わってるけど。

 参考
 「SPACE ALC」 (fingerprint)
 「Wikipedia(英)」 (Brain_fingerprinting)
 「WIRED VISION」>>2001年10月11日「脳波測定でテロリストを見分ける?」
 「精神科医YASU-QのHome Page」>>「脳波」と「事象関連電位」
 「関東神経生理検査技術研究会」>>注意の集中度の評価 〜P300〜



記憶 「DNAの瑕」
 

 [スペル]
 
 こいしのスペル。ディーエヌエーのきず。
 
 ・DNA
   「デオキシリボ核酸の略称」
 ・デオキシリボ核酸
   「5炭糖の一種デオキシリボースを含む核酸。細胞核内の染色体の重要成分。
    遺伝子の本体として遺伝情報の保存・複製に関与、リボ核酸と共に、
    生体の種や組織に固有の蛋白質生合成を支配する。DNAと略称。」
 ・瑕
   「玉の表面についたきずや、ひび。また、それがあるさま。欠点があるさま」
 
 DNAはデオキシリボ核酸 (deoxyribonucleic acid) の略称で、
 塩基とリン酸を持つデオキシリボース(五炭糖)が
 リン酸エステル結合で連なった生体高分子を言う。
 塩基はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種があり、
 これらがランダムとも思える配列でずらりと連結されたものがDNA(DNA鎖)である。
 ヒト染色体のDNAはおよそ30億塩基もの長さとなる。
 アデニンとグアニン、シトシンとチミンはお互いに水素結合で馴染みやすく、
 例えば、AAGCCTという6塩基のDNAにはTTCGGAという配列のDNAが相方としてフィットし
 互いにDNAの二本鎖を形成する。
 二重螺旋として一般的に知られるDNA二本鎖の構造は、
 このように互いに相補的な配列から形成されており、
 細胞分裂時には二本を引き離して、A,G,C,Tのフィットするパーツを当て嵌めて
 連結すれば二本一対が四本二対になる、という具合にコピーされる。
 DNAの重要性は遺伝子の本体という点にあり、特定個所のDNAは
 複製時と同様に塩基を当て嵌めるようなやり方でリボ核酸(RNA)に転写される。
 RNAの遺伝子コード領域がアミノ酸配列に翻訳され、機能的なタンパク質が産生される。
 これらの酵素タンパク質の働きにより、細胞は物質産生や代謝を行なってゆく。
 細胞が組織を、組織が器官を形成し、それらの働きが生命活動に連絡している。
 
 DNAは遺伝情報をコードしているが、その重要性と裏腹に
 ある塩基が別の塩基に置き換わることが確率的に起こり得る。
 塩基の互変異性で自然発生的に、または、DNA複製時に偶々ミスマッチのままつながれる、
 外来物質で塩基がアルキル化される、活性酸素で塩基が酸化される、
 紫外線でチミンがダイマー化する、ウイルスDNAの侵入などなど、
 いくつもの要因でDNAには元の配列と複製後が異なってくる可能性がある。
 (大強度の放射線など短時間の大ダメージはDNAもズタズタになって細胞は死滅するが)
 たった一塩基の変化といえども、
 翻訳されるアミノ酸配列には変化が無いナンセンス変異や
 非コード領域であるイントロンでの変異など、従来は無害とされた変異も
 近年は疾病への関与も見出されるなど看過できるわけではない。
 DNAのキズは遺伝子疾患や種々の特質に時に重大に関与することがある。
 
 とは言え、その変化をマイナスと見てキズと言うのは正確ではない。
 遺伝子の変化は同一種の個性や生物種の変化にも関わっており、
 種の進化や生命の多様性という観点で非常に重要なファクターである。
 そもそも、DNAのダメージに対処するために、細胞内には種々のDNA修復酵素がある。
 修復可能であるため、DNAに生じる異常や変異は「DNAの傷」と表現するのが適当である。
 
 では、「DNAの瑕」とは何だろうか。
 ここでまず考えたいのは、東方地霊殿でのこいしのスペル、
 深層「無意識の遺伝子」である。
 ユングの用語に「集合的無意識」があり、これは
 「われわれの心の奥底には、われわれの祖先の経験したものが遺伝してきていると
  考えた場合の心の深層。個人的な経験を超えた、人類に普遍的にある無意識。」である。
 集合的無意識の対義語とされる個人的無意識は、
 個人の人生と関連し、不快な記憶や情動、苦痛な刺激となるトラウマを
 抑圧し防衛する領域とされる。さとりが(スペルで)踏み込む領域と言えるだろうか。
 それに対して集合的無意識は、個人のコンプレックスよりも深い無意識領域に
 人類の心に太古より普遍的に受け継がれ遺伝してきた存在と仮定されたものである。
 符名の「記憶」、という点にも符合する、太古からの経験。
 
 遺伝子の玉に瑕なところとは、もれなく受け継がれる集合的無意識が
 時にコンプレックスのようなこじれを生み出すとか
 太古の膨大な経験が余計にもたらされるとか、そんなところだろうか。

 参考
 「広辞苑 第五版」 (DNA、デオキシリボ核酸、集合的無意識)
 「Wikipedia」 (深層心理学、個人的無意識、集合的無意識、コンプレックス)



心花 「カメラシャイローズ」
 

 [スペル]
 
 さとりのスペル。
 
 ・camera-shy
   「カメラ嫌いの」
 ・心の花
   「移ろいやすい人の心を、散りやすい花にたとえていう語。
    美しい心、風流を解する心、晴れやかな心などを花にたとえていう語。」
 
 Camera-shy Rose.
 「カメラ嫌いのバラ」
 バラの花言葉は、愛・美・内気な恥ずかしさ・輝かしい・愛嬌・新鮮・斬新・無邪気・
 私はあなたを愛する・あなたのすべてはかわいらしい・愛情・気まぐれな美しさ・爽やか、
 といったところで状況や目的に応じてチョイスすれば良いと思うが、
 愛はハート弾に、美は弾幕に任せるとして、
 スペル名として見た時には「内気な恥ずかしさ」を選びたい。
 バラの花言葉のバリエーションには「秘密」が含まれることもあるが、
 これも同様に関連付けられる。
 "under the rose" で、「秘密に、内証で」との表現ともなる。
 弾幕のバラの下に隠れて、カメラの写界からは素早く逃れる、恥ずかしがりやの少女。
 なお、ピンク色のバラの花言葉は、上品・愛を持つ・しとやか、といったところである。
 
 ちなみに、さとりのスカートの柄はバラの花である。
 「東方雑考」の「東方素材集」を参照。

 参考
 「広辞苑 第五版」 (心の花)
 「SPACE ALC」 (camera-shy, under the rose)
 「花言葉事典」>>バラ



「胎児の夢」
 

 [スペル]
 
 こいしのスペル。たいじのゆめ。
 
 夢野久作の代表作とされる小説で日本探偵小説三大奇書に挙げられる作品
 「ドグラ・マグラ」の作中に、「胎児の夢」という論文が登場する。
 作中では、「胎児を主人公とする万有進化の大悪夢に関する学術論文」と要約される。
 
 「……すなわちこの論文は、人間が、母の胎内に居る十箇月の間に一つの想像を
  超絶した夢を見ている。それは胎児自身が主役となって演出するところの
  『万有進化の実況』とも題すべき数億年、乃至(ないし)数十億年の
  長時間に亘(わた)る連続活動写真のようなもので、既に化石となっている有史以前の
  異様奇怪を極めた動植物や、又は、そんな動植物を惨死滅亡させた天変地妖の、
  形容を絶する偉観、壮観までも、一分(ぶ)一厘(り)違わぬ実感を以て、
  さながらに描きあらわすのみならず、引続いては、その天変地妖の中から生み出された
  原始人類、すなわち胎児自身の遠い先祖たちから、現在の両親に到る迄の代々の人間が、
  その深刻な生存競争のためにどのような悪業を積み重ねて来たか。
  どんなに残忍非道な所業を繰返しつつ、他人の耳目を眩(くら)まして来たか……
  そうしてそのような因果に因果を重ねた心理状態を、ドンナ風にして胎児自身に
  遺伝して来たかというような事実を、胎児自身の直接の主観として、詳細、明白に
  描きあらわすところの、驚駭(きょうがい)と、戦慄とを極めた大悪夢である事が、
  人間の肉体、及(および)、精神の解剖的観察によって、直接、間接に推定され得る……
  と主張している。」(「ドグラ・マグラ」より)
 
 「胎児の夢」はエルンスト・ヘッケルの反復説を下敷きにしていると言われる。
 受精卵は胚を経て胎児へと発生・分化してゆく。
 受精後8週目に入った胚を胎児と呼ぶが、胎児までの過程、
 脊椎動物の単細胞から胚にかけての発生過程は形態的に類似性があるという
 ヘッケルの観察結果からヘッケル自身が提唱した仮説が反復説である。
 形態の類似、特に哺乳類の胚にも鰓裂が観察されることから、
 個体の発生は系統発生・進化の過程が短縮されたようなもので
 急速にその流れを反復し、生物祖先が長い経過の間に経た遺伝・適応における
 重要な形態変化を繰り返すとしたもの。
 個体の発生が生物進化のエッセンスの凝縮であるというところに、
 人が見る夢において注目される脈絡の無さや超自然さ、不合理さとそれに反するような
 現実味と痛切さ、人が時々体験する既視感、邯鄲の夢の故事に見られるような
 人の一生を一睡の夢で見るといった夢というものの時間的可塑性など
 夢の不可思議性を裏付け的に関連付けたのが「胎児の夢」と言える。
 
 夢の重要視ならびに人間の無意識に人類共通の素地を見る点は
 集合的無意識すなわち「無意識の遺伝子」や「DNAの瑕」へも関連を見てのものか。
 
 弾幕は、微生物あるいはプランクトンの群像、水棲生物の群(脊椎動物)、
 陸上に繁茂するシダ系植物(陸生生物の誕生)といった「異様奇怪を極めた動植物」に
 最後はそれらを「惨死滅亡させた天変地妖」かつ胎児の誕生と浮世の地獄か。
 
 なお、ヘッケルによる胚の形態的類似性は捏造だと言われている。
 近年では、実際に見られる形態的類似性も、
 例えば遺伝子から転写・翻訳を経てタンパクが産生されるセントラル・ドグマが
 微生物から高等動物に至るまで広く生物種の基盤となっているように、
 進化の過程で大胆な変革が介入しにくい位に生物発生にとって重要な部分ではないか、
 といったような考え、発生砂時計モデルなどが提唱されている。

 参考
 「Wikipedia」 (ドグラ・マグラ、反復説、胚、発生砂時計モデル、集合的無意識)
 「青空文庫」>>ドグラ・マグラ
 「総合図説生物」 第一学習社



想起 「うろおぼえの金閣寺」
 

 [スペル]
 
 さとりのスペル。うろおぼえのきんかくじ。
 
 ・疎覚え
   「確実でない記憶」
 
 対象者の弾幕トラウマを読み取り再現する、さとりの想起スペル。
 文にとっての相対的に高い難度の弾幕といっても
 ぼんやりと記憶に留まっている程度だった模様。
 弾幕写真も記事を生み出すための捏造の材料でしかないためか。
 はたての場合は文の記事にでも基づくためだろう。
 
 原形は東方文花帖での輝夜のスペル、新難題「金閣寺の一枚天井」。
 
 メインは一枚天井のはずが、金閣寺の方がスペル名に取られている。
 東方プレイヤー間で異様な難易度が話題になったこととともに
 金閣寺の略称で通じていたことからか、
 あるいは、海を見た事があるような本作での言及と同様に、
 文達が金閣寺を見た事があるということだろうか。

 参考
 「広辞苑 第五版」 (疎覚え)



「ローズ地獄」
 

 [スペル]
 
 こいしのスペル。ローズじごく。
 
 東方地霊殿でのスペル、「サブタレイニアンローズ」より。
 地霊殿本編での空の最終スペルが
 「地獄の人工太陽」「サブタレイニアンサン」だったため、
 その対応に呼応しての「地獄」だろうか。
 
 「東方雑考」の「東方素材集」で紹介したが、
 こいしのスペル背景やスカートの柄は
 一見バラ(バラ科バラ属)に見えるが
 実際はラナンキュラス(キンポウゲ科キンポウゲ属)。
 一方で、さとりのスカート柄はバラである。
 
 こいしとさとりにはこのような対比関係、
 正確には、完全に正反対ではないが、類似のある中での対比がある。
 同じ妖怪さとりだが、その能力を使うさとりと第三の眼を閉じたこいし。
 地下の最深部・地霊殿での遭遇と地上の最高峰・妖怪の山での遭遇。
 頭部の装飾はさとりがカチューシャ、こいしが帽子。
 瞳の色は紫と緑で補色の関係。
 服の色もさとりが水色・ピンクの組合せに対し
 こいしが黄色・緑の組合せでこちらも補色に近い関係である。
 服のボタンもハートとダイヤ。
 第三の眼から伸びるコードも、さとりは頭部・胸部・腹部・両腕で
 下肢には連結されていないが、こいしは両足のみである。
 
 地霊殿では他にもあべこべな点が見られる。
 キャラ選択時の霊夢はお払い棒を下向きに持っており、地底への下降を暗示。
 難易度選択画面では素材の文様を天地逆転。
 普段は退治される側の妖怪があからさまに主人公側に力添え。
 大木の上から飛来する釣瓶落としが地下への坑道内で襲来。
 山の四天王の一角が地下世界でお出迎え。
 地霊殿の主がラスボスではなく、そのペットがラスボス。
 地底に太陽、カラスが白い。
 そして、サブタイトルのサブタレイニアン・アニミズム(意訳:地霊の太陽信仰)が
 空のテーマでは霊知の太陽信仰という具合に、地霊⇔霊知の天地逆転関係にある。
 
 このあたりの要素を踏まえれば、ラナンキュラスのこいしがバラへ発展する道が見える。
 さとりとの関連では、地霊殿のキャラ設定テキストで
 こいしの第三の眼の閉ざされた瞳が緩むような示唆がある。
 第三の瞳を閉ざすことは心を閉ざすことと変わりなかったが、
 地霊殿のごたごたを通して他者へ向けた関心は、心を開くことでもあり、
 同時に連関して、さとりの能力が解放されることでもある。
 これは姉のさとりの側へバランスが傾く形で、
 姉妹の異なる位置付けをバラとラナンキュラスが象徴するならば、
 こいしのバラスペルは第三の眼の開眼傾向と心を開くことを暗示する。
 バラの花言葉に現れるような、愛や恋などの奔流とも言えるようなスペルか。
 
 また、ちれい⇔れいちの天地逆転を適用すると、
 バラはラバとなり、lover に通じる。
 「閉じた恋の瞳」が開けば、恋の瞳全開の恋する少女となるか。
 また、rose は eros ともなる。
 プラトンの説いた愛において、イデアの世界を志向する愛であり、
 真・善・美の世界に到達しようとする最も高次元な愛をエロスと呼んだ。
 エロスはアガペーと対比され、アガペーは神の愛、
 神の人間に対する無限の愛、無償の愛、不変の愛である。
 こちらは本作の「没我の愛」にも関連付けることもできるか。

 参考
 「Wikipedia」 (エロス_(曖昧さ回避)、アガペー)



更新履歴
 

2010年
3月27日 初回更新
12月9日 TXTからHTMLに変更



 

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