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坂好きの神様
[コードネーム] LV11の撮影対象、八坂神奈子のコードネーム。さかずきのかみさま。 八坂神奈子の八坂は、諏訪大社祭神・建御名方神の妃神である八坂刀売命に由来するが、 文字通り解せば数多くの坂の意で、山の神様に符合すると言える。 実際は風雨の神だが、マウンテン・オブ・フェイスのスペルや 他作品で山の神とされているので、山の神様でも問題ない。 坂好きは盃(さかずき)に掛けられている。 が、諏訪の神話で酒はあまり関わってこない。 ここでは猪口、すなわちさかずきの「蛇の目」からだろう。 白く丸い磁器の猪口の底に青い蛇の目が描かれたものである。 日本酒の利き酒に用いられ、猪口の白色部分で酒の色を、 蛇の目のラインの冴え具合で酒の濁りを見る。 神奈子は蛇の神様。 蛇をイメージした注連縄を背負い、蛇関係スペルを使用する。
参考 「広辞苑 第五版」 (さかずき、猪口) 「静岡 丸河屋」>酒器>本きき猪口 |
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両生類の神様
[コードネーム] LV11の撮影対象、洩矢諏訪子のコードネーム。りょうせいるいのかみさま。 諏訪子は蛙の神様。 蛙をイメージした帽子をかぶり、鳥獣戯画が描かれた服を纏い、 トノサマガエルのシルエットが背後に浮かび、蛙関係スペルを使用する。
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神桜
「湛えの桜吹雪」
[スペル] 諏訪子のスペル。たたえのさくらふぶき。 ・湛え 「満潮」 湛えとは水が満ちている様子だが、ここでは 古来より諏訪の七木として知られる湛(たたえ)木や 湛(たたえ)神事に見られる、ミシャグジ神を降ろす依代としての「湛え」である。 この湛えの意味については諸説あり明確にはなっていない。 湛神事は大祝の代役である神使(おこう)が諏訪の各所に旅立って、 湛の場所(巨木・岩石・ミシャグジ社)に寄り、御杖柱(みつえばしら)と鉄鐸で 農耕に先立ってミシャグジの神を巨木などに降ろして豊作祈願を行なう神事とされる。 東方風神録で諏訪子が使用したスペルの土着神「七つの石と七つの木」は、 諏訪の七木・七石として知られる代表的な湛を指している。 七木に数えられる湛木には櫻湛木があり、本スペルの元ネタはこの桜と推察される。 ただし、桜湛木は現存しておらず、跡地とされる地に 石碑と祠が見られるばかりである。 ミシャグジさまが降りる神聖なる神籬(ひもろぎ)、幻想となった7つの湛木が 春を謳歌しその身に湛えた花弁が美しく厳かに散り乱れる。
参考 「広辞苑 第五版」 (湛え) 「神長官 守矢史料館のしおり」 「諏訪大社と諏訪神社(附
御柱祭)」>上社散歩道>峯湛、桜湛木跡
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蛇符
「グラウンドサーペント」
[スペル] 神奈子のスペル。 Ground
Serpent. 「大地の大蛇」 東方星蓮船での早苗のショットの1つがスカイサーペントであったが、 あれは早苗が神奈子の神力を発揮してのものなので、由来は神奈子の力である。 そのスカイサーペントの天に対して、地のグラウンドサーペント。 神奈子と諏訪子の能力が乾坤で分かれていることから 神奈子は天、諏訪子は地とはっきりと分けて考えてしまうが、 そうとも限らないようだ。 スカイサーペントは、ネーミングはUMAのスカイサーペントに由来するが、 空飛ぶ蛇体ないし龍は諏訪明神が龍神とされることに基づくと思われる。 諏訪大明神画詞で描写される弘安の役に目撃された空飛ぶ龍や 尾掛け松の伝承などがそれである。 一方で、グラウンドサーペントは、ネーミングはスカイサーペントに呼応する形で、 地に関する蛇体ないし龍は甲賀三郎の伝承に由来すると考えられる。 甲賀三郎は諏訪の伝説に登場する人物で、地底の国に迷い込み、 その後地上に生還できたが蛇体となっており、諏訪の神になったとされる。 風神録の後、神奈子自身が地底に行って来たことも含まれているだろうか。
参考 「Wikipedia」 (甲賀三郎) 「Dictionary of Pandaemonium」
(甲賀三郎)
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姫川
「プリンセスジェイドグリーン」
[スペル] 諏訪子のスペル。 ・jade 「ヒスイ◆淡い緑色をした軟玉(nephrite)または硬玉(jadeite)を指す」 ・jade
green 「深緑色、ヒスイ色」 ・imperial
jade 「インペリアル・ジェイド◆ヒスイのうち、特に深いエメラルド・グリーンをしたもの、 リューイーソウ、緑一色◆麻雀の手役の名前」 ・姫川 「長野県北部白馬村に発源して新潟県南部を流れ、糸魚川で日本海に注ぐ川。 糸魚川‐静岡構造線に沿い、電源開発が進む。流域から翡翠を産する。長さ53キロメートル」 Princess
Jade
Green. 「王女の翡翠の深緑」 翡翠は古くは玉(ぎょく)と呼ばれ、東洋では金以上に珍重された 人気の高い宝石である。 化学組成の違いから硬玉と軟玉とがありそれぞれ別物であるが、 見た目で区別がつきにくく、どちらも翡翠と呼ばれる。 現在、硬玉の方だけが宝石とみなされる。 翡翠のモース硬度は6〜7と、価値の高い宝石の中では硬度が低い部類であるが、 すべての鉱物の中で最も割れにくい性質を持っている。 特定角度からの衝撃に弱いダイヤモンドと異なり、 衝撃に弱い方向が翡翠には無く、そのため加工が難しい。 中国で硬玉は産出されず、古くは玉として珍重されたものも軟玉であったが、 18世紀以降、硬玉が輸入されるようになると鮮やかな緑の翡翠がより好まれるようになり、 高品質のものは熱狂的収集家だった西太后にちなんでインペリアル・ジェイドと呼ばれた。 翡翠の産地は日本にも数ヶ所あるが、符名にある通り、 ここではその1つ、新潟県糸魚川市姫川流域を挙げることができる。 姫川は長野県北部の白馬村を源に、新潟県南部を流れ 糸魚川市で日本海に流れ込む川であり、そもそも日本最大の翡翠の産地である。 なお、糸魚川市に糸魚川という名の川は流れていない。 糸魚川の由来について、いくつかある説の中に、 この地の姫川が頻繁に災害を起こしたため呼ばれた「厭川」が転じたとするものがある。 風神録で諏訪子が使用したスペル、源符「厭い川の翡翠」の元ネタであり、 厭い川の翡翠 = 姫川の翡翠である。 インペリアル・ジェイド+ジェイド・グリーンに、 インペリアルの皇后風味を姫川の姫で置換した、そんなネーミングか。 上述したように、現在、硬玉の方だけが宝石とみなされる。 軟玉を含め、硬玉とよく似た石は「キツネ石」と総称される。 本ヒスイを探し求める人が良く似た鉱石をつかまされた、 そんなガッカリ感をよく伝える呼び名である。
参考 「広辞苑 第五版」 (姫川) 「SPACE ALC」 (jade, jade green, imperial
jade) 「Wikipedia」 (ヒスイ、姫川) 「フォッサマグナミュージアム」>ヒスイ 「糸魚川ご当地クイズ」>第1問 「鉱物と隕石と地球深部の石の博物館」>宝石の原石図鑑 >キツネ石
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御柱
「メテオリックオンバシラ」
[スペル] 神奈子のスペル。 ・meteoric 「流星の、流星に似た。(地球の)大気の。 (流星のように)素早い、一時的な、華々しい。」 Meteoric
ONBASHIRA. 「流星にも似た御柱」 諏訪地方で6年に一度(慣例表記で七年に一度)開催される御柱祭は、 諏訪大社の社殿の四方に聳える御柱を新たに山中から切出し、 各宮まで曳行して建てる勇壮な祭として知られる。 日本三大奇祭の1つにも数えられている。 御柱祭の構成は山出しと里曳きに大別できるが、 山出しの見せ場であり御柱祭の代表的なシーンが木落しである。 御柱本体と目処梃子に氏子を乗せたまま、 急斜面の木落し坂から御柱を落とす、もっとも危険な場面として知られる。 上社木落しは美しさを、下社木落しは勇壮盛大さを重視する傾向があると言われる。 本スペルはこの「木落し」に、よりスピード感あふれるエクスパンドを 施したようなイメージだろうか。 赤レーザーブレードで御柱を表現するのは、風神録でのスペル 神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」と同様。 東方では東方香霖堂での言及だったり、魔理沙の「ドラゴンメテオ」だったりと 流星と龍が絡められることがある。 蛇神・龍神関連の諏訪大明神と関連して 蛇要素を持つ神奈子なので、メテオリックの流星には龍も掛けられているか。 なお、風神関係でエクスパンドした考察では 龍田大社の風神である天御柱命・国御柱命が注目される。 御柱の読みはオンバシラではないが、 風神要素、龍要素、そして天地の関係(風神録では下から、本スペルでは上から)と 看過できない符合という点で。 撮影コメントには「長い棒を崖から落として谷底の住人に穴居時代の生活を強いる」とある。 長い棒は御柱で、それを崖から落とすのは御柱祭の木落しを指している。 また、穴居時代の生活とは御室神事を指すと思われる。 大祝が光射さない竪穴住居に作り物の大きな蛇とともに入って神事を執り行いつつ 百日間籠もり、その年の豊穣を祈る。 一方、御柱や御柱祭の意味合いについては諸説あるが、 藤森栄一氏は定期的な御柱の挿げ替えが行なわれる御柱祭について 「竪穴住居の柱とりかえの名残」との説を挙げている。 この説に沿えば、コメントの長い棒から穴居時代の生活まで御柱祭とも言える。
参考 「SPACE ALC」 (meteoric) 「Wikipedia」
(御柱祭) 「諏訪市博物館の御柱関連展示」[著者実見]
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鉄輪
「ミシカルリング」
[スペル] 諏訪子のスペル。 ・mythical 「神話的な、架空の、神話上の、根拠のない」 Mythical
Ring. 「神話の輪」 諏訪の伝承では、諏訪土着の洩矢神と外部から侵攻した建御名方神が それぞれ鉄の輪と藤の蔓をもって戦ったとされる。 風神録での諏訪子のスペル、神具「洩矢の鉄の輪」と同じ元ネタであり、 画面端で変色して反射するリング状弾塊という性質もまるごと同じである。 リング状の弾幕だけでなく、「Grimoire
of
Marisa」ではフラフープなどともされた 洩矢神の鉄の輪は、「諏訪大明神画詞」においても「鉄輪」と表記が見られるが、 画詞の増補・改訂・書写や現代訳の過程で齟齬があった可能性もある。 近年の書籍上の画詞で「鉄輪」と目にできる他、 諏訪の洩矢神社の由緒書きや神長官守矢史料館のしおりには「鉄の輪」とあるが、 一方で、鉄鈎、鉄鑰とする言及があったり、 上述の守矢史料館のしおりにおいても実は「鉄(てつ)の輪(カギ)」とルビが振られ、 諏訪市博物館展示内容での洩矢神と建御名方神の戦いのイラストでは 洩矢神が細長い形状の武器を持って描かれていたりする。 撮影コメントで言及のある、実はリング状ではなく、細長い別の形というのは このあたりを意識してのものと思われる。
参考 「SPACE ALC」 (mythical) 「神長官守矢史料館のしおり」 「日本庶民生活史料集成 第二十六巻
神社縁起」>諏訪大明神絵詞 「諏訪市博物館 常設展示ガイドブック」 「古族研究」//藤鑰鉄鑰
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儚道
「御神渡りクロス」
[スペル] 神奈子のスペル。おみわたりクロス。 ・御神渡り 「冬に湖面が結氷し、氷が割れ目に沿って盛り上がる現象。古来、 長野県の諏訪湖では諏訪大社の神が渡ってできたものとされた。」 御神渡りは諏訪の七不思議に挙げられる、冬季の諏訪湖で見られる現象である。 ただし、気候条件に左右されるため毎年発生するわけではない。 厳寒下で全面凍結した諏訪湖において、ある夜更けに雷鳴のような轟と共に 大きな亀裂が1〜3本走る現象で、単に氷が割れるというよりも、 氷が二方向からたがいに圧迫しあった様な、1メートル程も盛り上がった亀裂が あたかも大蛇が這ったような長い道筋として生じるのが特徴である。 上社の建御名方神が下社の八坂刀売命のもとに通った道筋、 大社の御祭神の渡御ということで、御神渡りと言う。 最初に出現した南北に諏訪湖を割る亀裂を「一の御渡り」、 その数日後に同方向に出現した御神渡りを「二の御渡り(重ねての御渡り)」と呼ぶ。 また、東岸から上社方向に走るものを「佐久(佐久新海)の御渡り」と呼ぶ。 佐久の御渡りは、一の御渡りや二の御渡りとクロスする道筋となる。 御神渡りは八劔(やつるぎ)神社の御渡り神事にて検分され、 道筋の方向や形からその年の吉凶が占われている。 御神渡りの様子は御渡帳に何百年にも亘って記録され保存されてきている。 厳冬の真夜中に神様が湖を通った道筋は、冬季かつ気候条件に限定的。 月明かりに冷たく儚く照らされて存在し、太陽や春の陽気に儚く消える幻の道。 といった意味合いで「儚道」か。 弾幕の御神渡りは特に一瞬で消失する。 クロスという点に着目すれば、多くの場合は一の御渡りと佐久の御渡りの交差であるが、 佐久の御渡りだけ命名法則が異なる点が気に掛かることだろう。 これは佐久の御渡りの東岸方面に鎮座する先宮神社に由来する。 先宮神社の由緒・由来は古い資料が無いことと口碑由来ということから 正確性の判断は難しいとされるが、社名については先宮よりも以前に 鷺宮、鵲宮の名称があり、その他に佐久新海、佐久ノ新海、佐久新海明神、 佐久新開明神、さき志んかい、真海社、新海宮社などもあったそうな。 諏訪湖から八ヶ岳を越えて東に佐久市や南佐久郡があり、 佐久には新海三社神社、南佐久郡には新海神社などがある。 建御名方の御子神が主祭神のこれら神社との関係や、 ミシャグジの当て字の中に見られる御佐久地神や佐久神との関連も 非常に興味深いところだが、そちら方面はとりあえず措いておく。 ひとまず、佐久(佐久新海)の御渡りはどうやら先宮神社と関連している模様。 先宮神社は高光姫命を祭神として祀る神社だが、 特徴的なのは神社境内の参道と外界の間の小さな川に橋が架かっていない点である。 伝承では、建御名方神の諏訪侵攻の折、高光姫命をトップとするその地域の原住民が 建御名方神に反抗したものの最終的に服従し、高光姫命は先宮神社の社地から 出ることを許されなかったため、今もって境内前の小川に橋を架けないのだとされる。 古事記ではタケミカヅチにコテンパンにされて諏訪に逃げ、 諏訪から出ないことを誓い命乞いしたタケミナカタを想起させるストーリーである。 運命またはストーリーの筋道の交差。 タケミナカタは敗走して来たのではなく諏訪に侵攻し治めた諏訪明神であり、 局地に幽閉されたのはタケミナカタではなく高光姫命であった。 諏訪の明神が歩むルートに交差するのは、 一夜限りの散歩を楽しむ高光姫の儚い名残だろうか、 ミシャグジさま同様に作られた神威に幻想化した不明確な神か。
参考 「広辞苑 第五版」 (御神渡り) 「諏訪大社」:諏訪大社発行のしおり 「諏訪市博物館」>諏訪湖の御神渡り 「先宮神社」>諏訪と大和、御祭神 「古代であそぼ」>>先宮神社 「佐久の柵に桜咲く」>2006年1月10日「新海神社は延喜式内社ではなかったが・・・」
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土着神
「御射軍神さま」
[スペル] 諏訪子のスペル。みしゃぐじさま。 謎の神にして忘れられた神のミシャグジさま。 諏訪の祭政体において重要な神であったが、中央の干渉により古代の輪郭は隠れ、 山々の向こうに届いたエコーは、ミシャグジさまの名の転訛と種々の当て字を生んだ。 御社宮司、御左口神、赤口神、御作神、守宮神、御射軍神、佐久神、石神、尺神などなど。 諏訪地方に点在するミシャグジの社は御社宮司社、御射宮司社などの表記が主である。 東方風神録でのスペルではミシャグジさまだったが、 東方非想天則では「赤口」と、別の当て字のミシャグジさまが持ち出されてきた。 後者では蛇のような姿で描かれており、蛙のミシャグジさまの別の一面 あるいは諏訪子が統括するミシャグジさま達のそれぞれ異なる神様といったところか。 本スペルでも別の当て字、別の様相のミシャグジさまである。 諏訪明神は軍神として武士の信仰が厚く、 武家社会に転向してゆく鎌倉時代から武の神、戦の神として崇敬を集めた。 旧御射山遺跡も腕を競い合う武士達で賑わった時代である。 血のケガレを忌避せず、狩猟や呪術といった血なまぐさい祭政様式が 武士の気質や貴族社会でそれまで鬱積したコンプレックスに適合したのだろうか。 諏訪の神様で見れば、力自慢ではあったが天津神にのされた建御名方サイドの神奈子より 御射軍神の性質を発揮する諏訪子の方が軍神らしいという解釈だろうか。
参考 「広辞苑 第五版」 (諏訪神社、諏訪八幡) 「諏訪市博物館
常設展示ガイドブック」 「神奈備にようこそ」>>ミシャグチ神、御社宮司社、御射山社、社宮社の一覧
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更新履歴
2010年 4月8日 初回更新 5月9日 オンバシラに藤森栄一説を、ジェイドにキツネ石解説を追加。 12月9日 TXTからHTMLに変更
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