「東方儚月抄 〜Silent Sinner in Blue.」
第十話 『幻想ケープカナベラル』

 
あらすじ

  完成披露、命名式も滞りなく終った冬のある日。
  三日月の下の幻想郷はロケットを送り出す地となった。
  慌しい発射準備を経て、月ロケットはいよいよ地上を離れる。


誌上情報

  単行本情報 「東方儚月抄 〜 Silent Sinner in Blue.」上巻、4月9日(水)発売
  あらすじ等  あらすじならびに人物相関図アリ。
  扉アオリ  単行本(コミックス)が4月9日に発売決定! 詳しくはマンガの後で!!
  柱アオリ  ロケット発射準備も大詰め。
         和気藹々、脇合い合い。


タイムライン

  (紅魔館)
   三日月の夜。
   図書館では慌しく打ち上げ準備が進み、
   レミリアがロケットに登場するとすぐさま打ち上げシーケンスに移行した。
 
  (永遠亭)
   同日夜。
   一同が窓越しに夜空を翔ける光の筋、月ロケットを見上げていた。


セリフ解説

 ・(幻想ケープカナベラル)
 
  ケープカナベラル (Cape Canaveral) はアメリカはフロリダ州の砂洲、
  あるいはそこに隣接する小都市やそこにある宇宙ロケットセンターを指す。
 
  アポロ11号をはじめ、人類を月へと送ったロケットは現在までのところ全て、
  ケープカナベラルのケネディ宇宙センターから打ち上げられた。
  (正確には、1963〜73年の間はケープケネディと呼ばれていた)
 
  東方夢時空のカナ・アナベラル、
  秋霜玉のカナベラルの夢幻少女、
  夢違科学世紀のヴォヤージュ 1969 (1969, from Cape Canaveral) なども
  このケープカナベラルにちなむ。

  参考
  「Wikipedia」 (ケープカナベラル

 

 ・ロケットは赤道の近くで打ち上げたほうが
  エネルギーが少なくて済むんだそうですから
 
  一般に、宇宙ロケットは赤道に近い低緯度で
  東向きに打ち上げられる。
  そうすることでロケットの速度に自転速度が少し足しになる。
  目的の速度に達するのに、自転を利用するとしないのとでは
  エネルギーの消費が少しだけ違うのだ。
  アメリカのフロリダや日本の種子島も、国土で赤道に近い地方が選ばれている。
  もちろん、用地や輸送、気候などの観点も含めて総合的に選ばれる。

  参考
  「Wikipedia」 (自転

 

 ・霊夢 (ロケットエンジン) にトラブルが起こったら
  魔理沙 (あんた) が代わりになるかもしれないから
  スパークって
 
  魔理沙の搭乗許可が降りた理由。(どこまでかは冗談。たぶん)
 
  永夜抄、紅魔組 Good Ending や書籍文花帖 咲夜記事も参照。
 
  東方未プレイの読者には意味不明。
  マスタースパークも披露してないし。

 

 ・地上から月までどのくらい遠いと思ってるんだよ
 
  月と地球の間は約38万km。
  地球9周半分の距離。

  参考
  「Wikipedia」 (

 

 ・昼になったら月は見えなくなるじゃないの
  夜のうちに月に辿り着かないとおかしくない?
 
  天動説とか。地上は平たくて坤軸の大鬼が支えているとか。
  きっと霊夢にとって魔理沙のスペルはちんぷんかんぷんだったに違いない。
  オーレリーズソーラーシステムなど。

 

 ・だいたい往復で半月から一月くらいかかるそうです
 ・なんだって? 半月も?
 
  飛び立つまでに比べれb (略

 

 ・食料は大丈夫なのかな…
 
  いや、他にももろもろ…

 

 ・最終的に月に着くときには3階の部分だけになります
 
  律儀に三段ロケットの術式。
  途中、段階的に下層から切り離してゆく。

 

 ・最終的にここに全員入るのか?
 
  第三層。
  ベッドルーム。

 

 ・(3匹のメイド)
 
  霊夢、魔理沙、咲夜、レミリアに加え、メイド3匹。
  以上7名がロケットに搭乗。
  メイドを連れて行くのは 「念のため」(咲夜談)。
  「なんの役に立つんだか」(霊夢談)
 
  神棚 (SSB 第六話参照) の祭器具を手に取り不思議がるメイドたち。
  手に持っているのは右から順に、榊、瓶子、平瓮 (供物皿、白皿)。
  神棚には、手前中央に2つの平瓮 (お塩とお米) と水玉 (お水) を、
  その両側に瓶子 (お酒)、さらに外側に榊をお供えする。
  (この他にも祀り方や供物が様々ある)

  参考
  「岩花神棚店」> 祀り方

 

 ・私のための赤絨毯ってわけ?
 
  図書館入り口をくぐってロケットへと続く赤い道に
  独自の解釈を付与してご満悦の紅い主人。
 
  レッドカーペットはアメリカ映画の祭典であるアカデミー賞の、
  会場への通路の装飾で有名。
  セレブリティ専用。

  参考
  「Wikipedia」 (アカデミー賞#授賞式

 

 ・内側から圧力で開かないようにしないとね
 
  宇宙空間でも船内は常圧だが、船外はゼロ気圧。
  圧力差が壁全体にかかりるため、施錠が甘いと扉が開く。
  気密が保たれていなければ空気が漏れ散逸されるし、
  外壁等の強度不足の場合は破損から気密が破れる。
  ここでは、鎖と南京錠でロケット全体を雁字搦めにし
  扉や窓が開かない様に対処した。
  気密性については問題にされていない。

 

 ・(二拝二拍手一拝)
 
  現在一般的な神前における参拝作法。
  風神録の諏訪子スペルで東方プレイヤーにはお馴染み。

 

 ・アーメン
 
  キリスト教で祈りの終わりに唱える語。
  「かくあらせたまえ」 (=So be it!) という意。

  参考
  「ジーニアス英和辞典」 大修館書店

 

 ・さあね 私は宗教には興味はないから
 
  十字架無効。
  神社境内にも堂々と出没。
  でも、拝殿に向かって参拝する様は想像出来ない。(風神録エンディング参照)

 

 ・お賽銭は 神社でするもんじゃないのか?
 
  それも、一般的には二拝二拍手一拝の前にするものである。
 
  ところで、窓の鎧戸が一つ開いてますよ。

 

 ・やれやれ地上の妖怪たちは進歩しないのねぇ
 
  輝夜、月ロケットの昇るを見て。
  第一次の月面戦争騒動を踏まえての言。
  輝夜が当時の騒動を地上から見たか月で見たかは不明。
  事後に知った (幻想郷縁起や他者情報で) 可能性もあるか。

 

 ・千社札
 
  月ロケット上部のお札群。
 
  千社札
  神社仏閣に参拝し、自分の生地、氏名、年月などを書いて社殿などに張りつける紙札。
  室町時代から順路に従って数多くの神社仏閣に巡拝し、祈願する風習が起こった。
  江戸時代注記には流行神信仰とあいまって数多くの神社仏閣に巡拝する
  千社詣が流行し、これに伴って千社札が普及した。
  参拝者は社の扉、柱、天井などに札を一枚一枚貼って歩いたが、
  できるだけ高い所に貼りつけるのを自慢する風もあった。
  やがて信仰とは離れた趣味の分野となった。

  (神道事典より、抜粋・改変など)
 
  参考
  「神道事典 【縮刷版】」 弘文堂

 

 ・月の羽衣の切れ端
 
  永琳が SSB 第八話 にてロケットに施した細工。
  無闇に貼られた千社札に上手く紛れて誰にも気付かれていない。
  「あの布が月まで導いてくれるわ
 
  永琳の表現からすると、
  私の、月の羽衣 = ルナセイル仮説は忘れた方が良さそう。
  月光を受けるとトラクタービームでも発射するとか、
  軌道計算をいちいち気にしなくても月と地上の間なら
  楽々行き来できるような機構が備わっているのかな。
  永琳表現は何かの比喩かもしれないけど、
  不測の事態が起こっても月まで辿り着ける、という言い草から、
  直接的に捉えるのがしっくりくるだろうか。
  不測の事態が起こらなかったら詳細は不明のままとなるが。

 

 ・私は月の都を守りたいだけ
  月の都を侵略しようとしている本当の犯人を見つけ出したいだけ
 
  永琳の動機。
  このへんは以前より変化なし。
  第二話より表現が少し直接的になっている程度かな。

 

 ・(三日月)
 
  永琳は会話後唐突に背後の丸窓へ振り向き、
  右手の親指と人差し指で円をつくり、その穴を通して月を見つめる。
  余分な光が遮られ、永琳の瞳に三日月の姿が宿る。
  輝夜はその様子に気付きつつしばらく様子を伺う。
 
  ロケットの位置を確認したものか。
  依姫の剣マークを意識してのものか。
  依姫の剣マークは刃が湾曲しており、三日月刀を想起させる。

  参考
  「Wikipedia」 (シミター

 

 ・誰が黒幕かなんてわかりきったことじゃないの
 
  月を目指す吸血鬼を煽動し、住吉三神の知識を与えた黒幕。
  それが誰かは永琳も見当がついている。
  しかし、住所不定。
  侵略の黒幕と、永琳達をスケープゴートにした犯人は一致するかは不明。

 

 ・ただ 吸血鬼のロケットが動き始めた今
  私にできることは綿月姉妹 (あの娘たち) が頑張ってくれるのを願うことだけなのよね
 
  空間を弄る永琳も月への到達は困難か。
  または、行けるけど事態を考えると行くわけにはいかないか。

 

 ・地上の妖怪 (あいつら) も進歩してないねぇ
  一度失敗してるというのに また失敗しに出かけるなんて愚かとしか思えない
  わたしゃ賢い月の御仁についてよかったよ
 
  不安げな鈴仙を前に突如語り始めたてゐ。
  丸窓の下に移動し、月光の下で地上の妖怪を蔑み、月の側を讃える。
 
  一度めの失敗は第一次月面戦争こと幻想月面戦争騒動。
  それを踏まえ、今回も同様の行動を起こしている地上の妖怪を
  進歩がないと批判している。
  永琳達について良かった、というのは現在のことを指すか、
  第一次月面戦争の頃からついていたとすれば、昔のことを指すか。
 
  兎神ともされる因幡の素兎はそこいらの地上の妖怪とは一線を画しますよ、
  というアピールと、永琳達を持ち上げる発言を兼ねているか。
  または、地上の妖怪は本当に大したことないと揶揄することで、
  不安げな鈴仙へのフォローを意図しただけか。
 
  大穴は、てゐが大昔から月夜見側に属するスパイで、
  賢い月の御仁とは月夜見を指しているケース。
  この場合、てゐは月の兎の祖であり、通信も自在で兎の噂を意図的にコントロールし
  偽りの情報を鈴仙に間接的に(または直接?:鈴仙の通信相手は不明だし)掴ませる事ができる。
  地上の兎の姿は逃亡兎(現レイセン)と同様に変装。
  紫の第一話での「宇宙人が動き始めた」は
  永琳の手紙執筆ではなくてゐの神社偵察を、
  幽々子の言う「スパイ」はてゐを指す、とか。
  因幡の素兎神話で兎が海を渡るのも月から地上へ渡る行動に当てはまるとか。

 

 

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