「東方儚月抄 〜Silent Sinner in Blue.」
第十四話 『金属の戦い』

 
あらすじ

  月面で繰り広げられるスペルカードバトル。
  幻想郷勢の一番手は時を操るメイド長。
  対する依姫は神々の力を借りつつも連戦しなければならない。
  条件面では優位に立った幻想郷勢だが…?


誌上情報

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  柱アオリ  素晴らしく無駄なゲーム、開演!
         嫌がってたわりにノリノリだ!!
  あらすじ等 あらすじ、人物紹介あり


タイムライン

  (月面)
   前話と同日。


セリフ解説

 ・依姫は豊かの海に現れるであろう敵を迎え撃つ
 ・そこに現れる敵は囮です
 
  永琳の手紙に書かれていた依姫への指示。
  場所も役割 (こちらは今の所だが) もドンピシャリ。
  さすが永琳。天才。
 
  これまで何度か静かの海が登場し、
  アポロの着陸点でもあるし、地上に一番近いという表現もあったし、
  てっきり静かの海が住吉ロケットの着陸予定点だと思ってたけど。
  豊かの海と言っても広いから、
  ロケットが墜落してから霊夢達が漂着し、すっかり意気消沈する間に、
  依姫たちの移動が間に合った、といったところだったのか。
 
  となると、なぜ豊姫が静かの海を張っていたのか、という疑問が生じる。
  豊姫の幸運属性で、何となく海を見ていたらカラスが来たのか、
  永琳が豊姫の役割として、紫の式神対策のために配置させたのか。
  後者ならば、静かの海と 「神隠し」 の因果 (小説三話) を踏まえた上で
  黒幕と疑われる人物が何かしでかすかも、ということか。

 

 ・しかし その囮は貴方の潔白を証明するのに役立つでしょう
 
  前話にあった 「疑われる」 関連。
  ロケットのために霊夢が修行を始め、頻繁に神降ろしをするようになると
  神が召喚されたことを察知出来る月人達が、神降ろしが出来る依姫を疑う。
  霊夢の修行と後の因果を読んでいた永琳。天才。
 
  潔白の証明は、神降ろしが可能な人物が
  依姫以外に実在することを周知させる必要がある。
  衆目の前で霊夢が実演するか、あるいは、
  依姫と霊夢の神降ろしバトルが必須となる。
  住吉三神の例の様に、複数降ろしも可能なので、
  依姫の許容量を越える数の神が二人によって降ろされるか、
  同時降ろしが不可能な相反する神同士が二人によって同時降ろしされるか
  そのどちらかが行われなければならない、かな。
 
  依姫はとにかく霊夢と戦う必要があるので、
  ガチバトルで圧倒しきる訳にもいかなかったし、
  スペルカードルールという依姫にとって全く不利な条件の戦いも
  (自信があったこともあるが)飲むことにしたのであろう。

 

 ・さっき私のことを 手癖が悪いって言ったわよね
 
  大切な事なので二回言いました。

 

 ・火雷神 (ほのいかづちのかみ) よ
 ・七柱の兄弟を従え この地に来たことを後悔させよ!
 
  記紀神話において、黄泉国にいるイザナミの身体に成った
  八種の雷神が八雷神 (やくさのいかづちかみ) である。
  日本書紀では八色雷。
  イザナミの無残な姿に恐れをなし、イザナギは逃げ出すが、
  それに対してイザナミが差し向けた追っ手でもある。
 
  古事記では、イザナミの
  頭に大雷、胸に火雷、腹に黒雷、陰に拆雷、
  左手に若雷、右手に土雷、左足に鳴雷、右足に伏雷が宿っていた。
  日本書紀第五段第九の一書では、
  頭に大雷、胸に火雷、腹に土雷、背に稚雷、
  尻に黒雷、手に山雷、足に野雷、陰に裂雷が宿っていたとされる。
 
  前話の愛宕信仰で触れたが、火と雷には関連があり、
  本話の描写でも火雷を含む八柱の神は
  八筋の雷であり、八筋の火炎である。
  雨はおまけ。
 
  ちなみに、綿津見の娘である豊玉比売、玉依比売の他にも、
  日本神話には別種の玉依比売が見られる。
  その一神が、山城国風土記逸文に表れ
  賀茂御祖神社の祭神である玉依比売である。
  川上から流れてきた丹塗矢を寝床近くにおいたところ
  妊娠し、賀茂別雷命を生んだ。
  夫神は (乙訓坐) 火雷神である。
  本話で、八雷神の中から火雷神が選ばれたのは
  この神話を意識してのものだろうか。
 
  参考
  「【縮刷版】神道事典」 弘文堂 (ヤクサノイカヅチカミ、タマヨリヒメ)

 

 ・ルミネスリコシェ
 
  緋想天で登場の速符 「ルミネスリコシェ」 より。
  咲夜から放たれた一本のナイフが、
  整然と並んだナイフ群に突っ込み、
  ナイフ間でめまぐるしい反射を繰り返す。
  紅魔郷で咲夜が使用したスペルで見られたような
  ランダムに向きを変えるナイフ弾幕を形成する。
 
  luminous 「光を出す、明るい、照明された、聡明な、輝く、光る、明白な」
  ricochet 「跳ね飛び、跳ね返り、(石の)水切り」
 
  Luminous Ricochet.
  「輝く跳弾」
 
  参考
  「SPACE ALC」 (luminous, ricochet)

 

 ・「金山彦命」 よ 私の周りを飛ぶうるさい蠅を砂に返せ!
 
  金山彦命は、イザナミがカグツチを生んで病臥した時
  嘔吐したものから生まれた神。
  日本書紀では金山彦のみが、
  古事記では金山比古と金山比売の二神が生まれている。
  鉱山、金属やそれに関する技工を守護する神とされる。
 
  咲夜のナイフは銀製であるため、
  金属を操る金山彦がこれを砂塵レベルに分解、
  さらには再構築し、咲夜への返し技となった。
  雑多で細かな鉱物である砂も金山彦の管轄内と思われるので、
  依姫のセリフ通りに銀をいったん砂に変えたのか、
  単に砂状に細かくしたのかは不明。
 
  参考
  「【縮刷版】神道事典」 弘文堂 (カナヤマビコ)

 

 ・「私の世界」 へ!
 
  萃夢想・緋想天に登場のスペル 「咲夜の世界」 より。
  自分自身でスペル名を言う時は、さすがに一人称。
  発動時の隙の大きさはゲームで体験しての通りで、
  このためか依姫に発動を読まれ、チェックメイト。

 

 ・移動したい場所までに身体を通せる隙間がある場合のみ
 
  依姫が咲夜の時間操作能力まで読み切っていたかは少し疑問か。
  「あの者は瞬間移動などできない」 としているが、
  時間操作まで読み切ったか、あるいは、
  咲夜の能力を 「条件付き瞬間移動」 と推測するに留まったか。

 

 ・さ さすがですね!
 
  レイセンの瞬間移動 (仮) の真相も不明ですな。

 

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