「東方儚月抄 〜Silent Sinner in Blue.」
第十七話 『二十七と三分の一の罠』

 
あらすじ

  月面で繰り広げられるスペルカードバトル。
  幻想郷勢はついに真打ちの巫女登場。
  そんなことより、メインは月へと侵入を果たし、
  目的を遂げんとする紫の動向である。


誌上情報

  扉アオリ   単行本中巻 大好評発売中!!
  柱アオリ   闇夜の竹林から出ずるは…。
          暗躍人・紫、ついに捕まる!?
  あらすじ等  あらすじ、人物紹介あり
 


タイムライン

  (月面)
   前話と同日。
 
  (幻想郷)
   前話と同日。
   満月の夜だが、月はやがて欠ける。


セリフ解説

 ・ピー―ッ
 
  儚月抄 CLR 第六話にて謎の場所に居た豊姫とレイセン。
  その位置が幻想郷の竹林内であったことが本話で明らかとなる。
  本シーンは豊姫が開いたゲート(?)であろう。

 

 ・海上の風は水面を変化させる それは海が大気の影響を受けているから
 ・しかし 風は海の表面を荒立てるだけで 海の底は穏やかなまま
 
  一般的な海、ここでは特に、直前で紫たちが目撃した
  嵐の大洋が引き合い。
  強風と低気圧の嵐の影響を海の表面は見事に受け、
  海面を大きく上下させ、大波を生じる。

 

 ・作られた大気 (オピニオン) は海 (マス) の表面に影響を与える
 ・しかし表面は慌ただしくも海の中まで影響を与えることは少ないだろう
 
  賢者の海を解説するに当たって、前述の言葉を言い換えている。
  
  オピニオンは意見、批評。
  マスは集合、全体。
 
  とやかく言う意見でコミュニティにさざ波が起ころうとも
  系の深部あるいは総体は影響を受けないということなどを、
  強風で海上が荒れても、海の深部には
  影響が及んでいないことで例える。
  この後、周辺の影響を受けて面白いように想定通り動く
  面々の揶揄に用いられた。
  紫の意図 (作られたオピニオン) を間接的に受けて
  幻想郷の面々 (マス) の一部 (吸血鬼達) は踊らされたが、
  それは表面に過ぎず、紫は策略の底に位置する、または、
  沸き立つ思考の賢者の海に位置する。

  

 ・この海は内部のほうが活動的なの むしろ表面のほうが穏やかね
 ・大気の影響を受けず 自ら変化を起こそうと 沸き立つ思考が止まらない
 
  一般の月の海とは異なる賢者の海の様相。
  いわゆる 「愚者の海」 とは真逆の様相であり、
  それらを理解している紫による、なぜ賢者の海と呼称されるか
  その由縁の解説である。
 
  海にいったん入ったのは、解説の助けとなるように
  海中の情景を示すため。それ以外の意味は…ないかな。
  月面での潜入活動のために地上の穢れを落とす禊、
  なら前話でやってるし、(嵐の大洋)
  まぁ、そもそも妖怪が禊って。

 

 ・そう ここが月の賢者の住処
 ・ちょうど留守みたい
 
  月の賢者は都から離れた偏屈な所に住んでいた。
  しかも、空間まで弄って。
  
  儚月抄 CLR 第二話などで、「賢者の誰か」 のような
  月の賢者が複数居るような表現も出ているが、
  紫が 「住民税」 を狙い(?)、永琳が狙いを読み、
  豊姫が備えを整えているという点では
  やはりここで言う賢者は永琳のことであろう。
 
  紫がわざわざ留守を確認したのは、藍に対しての単なる芝居か。
  留守確認用のスキマに手袋を掛けて保持することに意味があったのか。

 

 ・どうせ地上の者は月の民に敵わないもの 力では
 
  これまでに何度か出てきた言葉。
  これについては紫・永琳・パチェの見解が一致している。
  
  そして、このセリフの直後、地面に突っ伏し劣勢の霊夢。
  しかし、「力では」 という点が逆転のキーポイントでもあるし、
  紫の月勢力あるいは永琳への挑戦でもある。(知力または能力)

 

 ・地獄の鬼とかさぁ
 
  そして、地霊殿へ。
 
  時系列的には、儚月抄、緋想天、地霊殿の順。

 

 ・(禍々しい大入袋)
 
  大入袋
  「興行場などで興行成績のよかった時、
   従業員に慰労と祝いとを兼ねて配る金一封の袋。
   表に朱で「大入」と書く。

 
  博麗神社の大入袋は積年の金銭欲が厄災化していた?
  大禍津日入りの袋。
 
    参考
    「広辞苑 第五版」

 

 ・大禍津日 (オオマガツミ
 
  古事記にて、黄泉から戻ったイザナギが禊をした際、
  最初に顕現したのが八十禍津日(やそまがつひ)、
  次に大禍津日 (おおまがつひ) の二柱のわざわいの神である。
  黄泉の国の穢によって成った神。
  八十は禍の多さを、大は禍の甚だしさを表す。
  世のあらゆる禍事、災いはマガツヒのはたらきによって起こるとされる。
 
  霊夢は量 (八十) より質 (大) を選んだ。
  量は弾幕でフォロー出来るし。
  その穢れはあまりにも強力で、依姫の剣も一閃で穢れに犯された。
  
    参考
    「【縮刷版】 神道事典」 (ヤソマガツヒ)

 

 ・まるで倒して然るべき妖怪みたいだ! 霊夢が
 
  弱点を突く事は、依姫がレミリアを一撃必殺したことで前例あり。
 
  災禍・災厄・穢れの神は月人にとって極めてえんがちょな神であろう。
  したがって、月人の価値観として、お姫様たる依姫が
  能力的には可能だとしても、マガツヒを使ってテロとか
  全くありえないことだと想像できる。
  となると、神降ろしをおそらく感知できる月人たちには
  この時点で依姫の潔白は明白となったか。
  (永琳の予見通り)

 

 ・手袋
 
  覗きスキマに掛けた手袋のその後は不明。
  ツッカエになってスキマが閉じきらないとかもアリか。
 
  また、もう一方の手袋は式神 (鴉) となって
  月面上の何処かへ飛んでいった。
 
  行き先は都か (侵入目的)、豊かの海か (偵察目的)。
  幽々子用の案内が無難な線か (さながら神武東征を先導した八咫烏のように)。

 

 ・いけない!満月が閉じてしまう
 
  賢者の海から異空間を開いたと思った紫だったが、
  豊姫が賢者の海から幻想郷の竹林をつなげていたため、
  まんまと幻想郷へ強制送還されてしまった。
  紫の意図は通常のスキマだったが、
  実質、地上と満月をつなぐルートとなっていたため、
  満月終了で消滅。
  満月終了は儚月抄 CLR 第五話で紫自身が解説した
  賢者のトラップ発動によるもの。
  約27と3分の1日の周期の月の巡りを
  少しだけ加速させ、満月の期間を侵入者の想定より短縮する。

 

 ・月の公転周期
 
  月の公転周期は約27日と8時間ほどであり、28日には満たない。
  約27日と8時間の周期で、月が天球上に描く道筋、白道を巡る。
  白道に定められた二十八宿は、月の宿る位置である。
  一方、月が公転する間に地球も公転するため、
  月が軌道をきっちり一周しても、月と地球と太陽の位置関係は少しずれる。
  そんな関係から、月の満ち欠けの周期は公転周期と異なり、
  29日と12時間ほどである。
 
  紫が最初にトラップにかかった約千年前以前は
  月の公転は完全なる28日、
  満ち欠けは満月が完全なる15に合致した30日の巡りであった。
 
  28が完全というのは完全数にちなむ。
  完全数とは、その数自身を除く約数の総和がその数自身と等しい数である。
  最小が6、次が28、その次は496 (495年の波紋にも記述した) である。
  完全数の6は、神が世界を創造した日数、28は月の公転周期と符合することが
  昔から神秘視されていた。
  15が完全なのは、すべてがFになる、より。
  こちらは小説版 第五話の解説を参照。
 
    参考
    「月の本」 林完次、角川書店
    「Wikipedia」 (28完全数

 

 ・師匠
 
  豊姫の師に当たるのは永琳。トラップを仕掛けたのも永琳と確定。

 

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