「東方儚月抄 〜Silent Sinner in
Blue.」
第十九話 『縛られた大地の神』
あらすじ
遂に捕えられた黒幕・八雲紫。
月面での弾幕ごっこの終結。
月の使者の手紙を受けて、永遠亭は和やかさに包まれた。
しかし、すべての終結はもう少しだけ先なのだった。
誌上情報
扉アオリ 単行本中巻 大好評発売中!!
柱アオリ
降参したわりに横柄だなぁ。さすが。
見えたのは一発逆転への光!?
あらすじ等
あらすじ、人物紹介あり
タイムライン
(月面)
前話と同日。
(幻想郷)
前話と同日。
満月の夜だが、月は少し欠けている。
セリフ解説
・フェムトファイバーの組紐
フェムト (femto)
は国際単位系における接頭辞の一つ。
10のマイナス15乗倍であること (千兆分の一)
を示す。
フェムトメートル、フェムト秒など、単位に付ける。
フェムトはデンマーク語で15を意味する femten
に由来する。
15と言えば、東方では完全なる数である。
満月の十五夜、十六進法で一つの位が満たされた状態、
それらの関連からの発想であるが、(根底にあるのは
「すべてがFになる」
か)
東方儚月抄においては月の周期のあたりでそれとなく触れられている。
同じく接頭辞の一つ、10のマイナス9乗倍
(十億分の一)
を示すナノについては、
現実に、炭素が織りなす微細構造体、カーボンナノチューブが知られる。
チューブは筒状、ファイバーは繊維状だが、カーボンナノファイバーと呼ばれるものも実在する。
フェムトファイバーのネーミングはこれにちなむものであろう。
組紐とは、「糸を組み合わせて作った紐」 である。
参考
「広辞苑 第五版」 (フェムト、組紐)
「Wikipedia」
(フェムト、ナノ、カーボンナノチューブ)
「資源環境技術総合研究所」>> NIRE ニュース (1998年12月)
・フェムト わかりやすく言うと 須臾
・須臾とは生き物が認識できない僅かな時のことよ
須臾は
「しばらく、しばらくの間、暫時」 の意。
また、漢字文化圏の数の単位で、千兆分の一
(10のマイナス15乗倍)
を言う。
後者の意味において、フェムトと同義である。
輝夜の能力もそうだが、なぜ短い時間を言うのに
須臾と同様な数の単位で時間に関連する単語、
瞬息
(10のマイナス16乗)、弾指 (10のマイナス17乗)、刹那 (10のマイナス18乗)
を
出さなかったのかと言えば、やはり、前述の 「15」
が大きな要因なのであろう。
参考
「広辞苑 第五版」 (須臾)
「Wikipedia」
(須臾)
・時間とは 認識できない時が無数に積み重なってできています
・時間の最小単位である須臾が認識できないから 時間は連続に見えるけど
本当は短い時が組み合わさってできているの
東方求聞史紀でも言及あり。
「須臾とは、永遠とは反対にもの凄く短い時間の事である。」
「人間が感知出来ない程の一瞬」
である。
ちなみに、量子力学における不確定性原理から、
観測可能な最小の時間はプランク時間
(約5.4×10^-44秒) とされる。
須臾よりも圧倒的に短い。
参考
「Wikipedia」
(プランク時間)
・組紐も1本の紐のようだけど 本当は細い紐が組み合わさっているもの
・認識できない細さの繊維で組まれた組紐は 限りなく連続した物質に見えるでしょう
・そのとき 紐から余計な物がなくなり 最強の硬度を誇る
・さらには余計な穢れもつかなくなるのです
時間における須臾と同様に、
空間におけるフェムトも最小単位から寄り合わさったもの。
フェムトの糸1本1本は知覚できないが、その集合体は連続した物として知覚される。
空間を連続した物質で隙間なく充填した形になり、
綻びを作る余計な広がりも持たず、また、余計な物が入り込む余地も無い。
空間上連続している物理的な性質と、完全なる15を冠するネーミングの魔術により
完全な結界となる。
余計な魔が入り込む隙間も無い、ということ。
間
(ま) を埋めて 魔 (ま)
を払う結界。
・この紐をさらに組み合わせて太い縄にすることで決して腐らない縄ができる
・その縄は遥か昔から 不浄な者の出入りを禁じるために使われてきたのよ
・古くはしめくり縄と呼ばれ 太陽の神 天照大御神が岩戸に隠れたときに
再び岩戸に入れないように縄で縛ったのが始まりだと言う
・そう注連縄 これのお陰で月の都は守られている
「天照大御神逾思竒而 稍自戸出而 臨坐之時
其所隠立之天手力男神 取其御手引出
即布刀玉命
以尻久米繩控度其御後方
白言從此以内不得還入」
(天照大御神はいよいよ不思議に思われて、ちょっと出て、のぞかれたところ、
岩戸のそばに隠れて立っていた天手力男命が天照大御神の手をとって引き出し、
すぐに布刀玉命が注連縄を天照大御神の後ろに引き渡し、そして、
「これから内へは、もう帰ることはできません」と申し上げた。)
紫のセリフにあるように、アマテラスの岩戸隠れに登場する
「尻久米繩」(しりくめなわ)
が注連縄の最初だと言われる。(しめくり縄は誤植)
注連縄は、一般的には、神前、神域、祭場など
神聖、清浄な場所を示すために引き渡し、あるいは張り巡らせる縄である。
参考
「国立国会図書館
近代デジタルライブラリー」 (古事記) 第1冊上 p.29
「古事記」
梅原猛著、学研M文庫
「【縮刷版】 神道事典」 (注連縄)
・土着の神様もその縄で縛ってきたくせに
・注連縄は本当は不浄な物の出入りを禁じるだけの代物ではない
神様を封印する役目も持っている
天津神 VS 国津神
(中央神話VS土着神話)
・例えばダイコク様 つまり大国主から国を略奪した天津神は大国主の反乱を恐れ
二度と出てこられないように神社に封印した
・大国主の神社は出雲にある大社 そこには極めて太い注連縄があるのよ
・それは不浄な者の出入りを禁ずるためだけとしては太すぎる……
大国主が国造りを成し遂げた葦原中つ国に対し、天津神は統治の手を広げた。
建御雷神の前に大国主の子は説得に応じ、または、敗走し、
大国主も命令を受け入れ国土を献上し、その後隠れたとされる。
大国主は出雲大社の主祭神であり、
出雲大社の神楽殿には長さ13メートル、重さ5トンの注連縄が掛かる。
参考
「出雲大社」>境内・建築案内
>神楽殿
・さらにもう一つ 太い注連縄をもった神社があるでしょう?
・あそこの神社 本当の祭神は諏訪の土着神だけど…
建前の祭神は建御名方神
・大国主の息子にして 最後まで抵抗した武神
建御雷神に勝負を挑むも歯が立たず敗走し、
諏訪の地で殺されかけるに及んで降参した神が建御名方神。
諏訪の地から出ないという誓約でその地に封印されている。
一方、諏訪神話では、土着の洩矢神に対して侵略戦争を仕掛け
勝利したのが建御名方神である。
中央神話とは異なるエピソードに基づいて諏訪大社に祀られている。
神奈子と諏訪子は後者の関係だが、
勝利を手にしたものの地元の信仰がうまく吸い上げられなかった神奈子は
洩矢神と別の新たな神を融合させ、内的には守矢、外的には建御名方と
使い分けた建前の神様を作り上げて信仰をコントロールした。
諏訪神話を中央神話も踏まえた上で、独自解釈を交えて構築し直したのが
風神録に見られる東方風の諏訪神話であり、ここで語られるのもその一端である。
「キャラ☆メル
Vol.3」 における風神録インタビューにも仄めかされている。
「諏訪の中では諏訪にいた神様が建御名方神にやられたという全く正反対の話に
なっているんですよ。建御名方神は逃げ込んだんじゃなくて諏訪を征服したという
話になるので、ものすごく色々なところが矛盾していてどれが正しいとは言えない
のですが、色んな事を加味していくと面白い話が書けると思いました。『風神録』
ではそういう解釈も面白くできたらいいな、と挑戦しています。
(中略)
でも僕はどちらかといえば建御名方神の方が蛇の形だと思っているんですよ、
イメージではね。ちょっとややこしいんですが、ゲーム中では神奈子にしてます
けれど本当は建御名方神をイメージしています。神奈子自体は八坂刀売神という
神様からのイメージです。諏訪大社の下社の方に祭られている神様で、建御名方
神の妻に当たる設定なんですがあまりというか全く神話に出てこなくて、実情が
ほとんどわからないものだから八坂刀売神についての情報を調べることができ
なかったんですよ。神社に行ってみても全然手がかりが無くて、なのに何故か
下社にはすごく大きな注連縄があったりと本当に謎だらけなんです。あと、大きい
注連縄は有名ですけど、その周りに注連縄をとぐろ状に巻いたやつが置いてある
んですね。
色々と不思議で仕方が無くて、もうその辺から推測すると色々なことが見えてくる
と言いますか、言い方はあれですけど妄想していった結果に神奈子と蛇が結び
つきました。」
諏訪大社
下社秋宮の神楽殿には重さ1トンの注連縄が掛かる。
その注連縄の両脇には、とぐろ状に巻きあげた縄が置かれている。
参考
「信濃國一之宮 諏訪大社」>秋宮
・忍び込んだ形跡があった不浄な者はすべて捕まえた
紫の三段構えの作戦のトリはいまだ悟られず健在。
計画が順調であることに紫は北曾笑む。
そういえば、紫の三段作戦は、
一段目=紅い悪魔、二段目=紫、三段目=ギャストリ(青)幽々子で
色もうまく構成されている。
二段目があっさり降参することは、
スミヨシロケットの二段目があっさり切り離されたことが伏線だった。
ということを今更補足しておく。
・アレが恐れていた月の使者なのかねぇ なんとも頼りない
第一話の 「使者が来る」 伏線回収。
脱走の罪もあるから、「罪人」 でもある。
・それより地上の神様 (ダイコク様)
のほうがずっと頼りになるじゃない
お師匠様の薬よりもずっとよい薬を作るし
東方文花帖事典の借符 「大穴牟遅様の薬」
参照。
・あの娘たち (綿月姉妹)
がうまくやってくれたようね
犯人は捕まえて竹林に放置したみたい…
手紙にいつどのように加筆したかは不明。
うまくやってくれた、ということで、
ここまでは永琳が想定した通りにうまく事が動き、処理されたようだ。
・(手袋)
紫が賢者の住処を窺うために開けたスキマと、そこに掛けられた手袋。
地上と月を結んだわけではないので、トラップ作動後も通路は絶たれず残っていた。
しかし、手袋の指先側は、賢者の海にいた紫から見て向こう側の空間に、
腕側は賢者の海の側の空間にあったはず。
すると、幽々子たちは紫の通ったルートとは異なるルートにいることになる。
どこをどう通って来たのであろうか?