「東方儚月抄 〜Cage in Lunatic Runagate.」
第七話 『半身半義』

 
あらすじ

  西行寺幽々子に仕える庭師、魂魄妖夢。
  周囲の事態や主人によく振り回される彼女は、
  今回の事態に際し、自ら考え行動するよう努めようとしていた。
  妖夢の視点で、八雲藍の来訪から月に至るまでを振り返る。


誌上情報

  表紙アオリ ZUN連載ノベル
  扉アオリ   未熟な少女剣士は 剣の道も人の道も、未だ成らず……
  紹介記事  キャラクター紹介 (妖夢、幽々子、咲夜、パチェ、霧之助(誤植))

  付録DVD  東方地霊殿 神主ZUNインタビュー(前編)


パラグラフ編成

  1)(今回は妖夢視点)
    波について。
  2)月の海の上の妖夢。彼岸と月の海について。
  3)夏の冥界の回想。
    幽々子と妖夢、白玉楼を訪れた藍との会話…「吸血鬼の監視」
    さらに回想の幽々子と妖夢の会話…「質問と恥」
  4)紅魔館に侵入し、ロケットの調査。
  5)パチュリーとの会話…「ロケットの動力」
  6)博麗神社へ続く道にて尾行。
    咲夜との会話…「ロケットの経緯と進捗」
  7)香霖堂にて咲夜の購入物の調査。
    霖之助との会話…「ロケット、アポロ計画」
  8)中秋の名月の白玉楼。
    ソユーズ計画について。
  9)団子づくり
    幽々子との会話…「中秋の名月、団子」
  10)幽々子との会話…「雨月」
  11)月見酒の用意。
  12)二か月前の藍の訪問について。監視結果について。
  13)そして、月に至る。月の海について。
  14)月に来られた事は少しだけ嬉しく、幽々子に感謝する妖夢。
  15)しかし、まさか、あんなことになるとはそのとき思いもしなかった…。
 
 
  補足
 
   月に至った妖夢が、儚月抄の事態を
   「今年の夏から周りで起きている事」 と表現している。
   ロケット打ち上げは冬だが、年内の様子。
 
   また、「ここ半年くらい」 ともある。
   中秋の名月の二月前が妖夢にとっての事の発端であり、
   SSB 第一話に当たる。
   そこからおおよそ半年が月に至った時であろう。
   新暦で見ると余裕で年を越してしまうので、旧暦で考えるのが妥当か?
   例月祭が例月となるために、あるいは、満月が月に一度は当たり前となるために。

   本話の時系列は、
   月に至った時点 (SSB 第十六話)
   藍の来訪の回想 (SSB 第四話)
   紅魔館侵入の回想 (SSB 第三話の後、第四話の前)
   咲夜を尾行した回想 (SSB 第三話の後、第四話の前)
   香霖堂訪問の回想 (SSB 第四話の直前)
   白玉楼での中秋の名月の回想 (SSB 第四話)
   そして、回想終わり。月のシーンへ戻る。

 

 
解説と雑学

 ・半身半義
 
  半信半疑
    「なかば信じ、なかば疑うこと
  半身
    「全身の半分。上半身。
  義
    「道理。条理。物事の理にかなったこと。人間の行うべきすじみち。
     利害をすてて条理にしたがい、人道・公共のためにつくすこと。
     意味。わけ。言葉の内容。他人と名義上、親子・兄弟など肉親としての縁を結ぶこと。
     人体の一部の代用とするもの。キリスト教で、神の正しさ。また人の、神の前の正しさ。

  (いずれも広辞苑より)

  半信半疑の半人半霊妖夢(半身)は、
  周囲の言動や事態が判ったようで(半義)、判らないようで…。

 

 ・水が海岸に押し寄せている様に見えるが、
  実際の水の流れと波の方向は無関係であるという。
 
  波とは、振動の伝播による波動のことである。
  例えば、水面に落下した小石が作る波紋の波。
  小石との接触により発生したある一点の水の上下振動が
  隣接する点の水に伝わってゆく現象。
  このとき、水は同じ位置で上下動を繰り返すだけで、
  特に流れは生じない。
  地面が振動して伝わる波の地震波、空気の分子が振動して伝わる波の音波、
  場を介する電界や磁界の変動が電磁波である。
 
  海などで見られる波は、主として風によって引き起こされる波浪である。
  実際の水の流れと波の伝わる方向が無関係であることは、
  例えば、川面に生じる波の例を挙げることができる。
  海でも、潮の流れと波の方向は必ずしも一致しない。
  波打ち際あたりはさすがに上下以外に横方向にも水は動かざるをえないが。

 

 ・その窓から覗く内装は、レースのカーテンに三日月型のテーブル
 
  三段ロケットとした後、動力が判明する前、
  この時点で内装も出来上がっていた模様。

 

 ・図書館の中央にある三日月型のテーブル
 
  三日月はパチュリーの趣味か。
  帽子のアクセサリーともども。
  セレナの三日月。(仮)

 

 ・へぇ、なんで貴方がロケットの事を知っているの?
 
  咲夜は妖夢が図書館に居た事を知っているが…
  時系列も、妖夢がパチュリーのセリフを想起している事から
  図書館のシーンの後であるはずだし。
  単に惚けたか、妖夢の訪問は記憶に残らないくらい些細だったか。

 

 ・咲夜は神社の方へ消えてしまった。
  夜道は怖いので深追いは避ける事にした。
 
  SSB 第四話でも実際に神社に向かっているが、
  それと同様に、何度も神社を訪問していたのであろうか。(しかも夜更けに)
  または、SSB 第四話内で時系列が非統一なのであろうか。
 
  妖夢の怖がり設定は、永夜抄(Extra)準拠。

 

 ・この様な店でも顧客のプライベートは守らないといけないのでね
 
  プライベートは形容詞。
  名詞のプライバシーが正解。

 

 ・無機質な鉄の箱、ガラスの輪、緑色の薄い板
 
  鉄は無機質だが…
  鉄の箱は、ソフトまたは電力の都合で役に立たないコンピュータを指すか。
  何らかの電化製品でも良いけど。
  香霖堂であったコンピュータの話からの連想。
  
 
  ガラスの輪は、丸形の蛍光灯だろうか。
  三月精ELND単行本収録の話からの連想。
 
  緑色の薄い板は、Suica (スイカ) のカードか。
  萃夢想における幽々子の対萃香勝ちゼリフより。
  「そういえば……、最近拾った緑の薄い板切れに
   貴方の名前が書いてあったわ。アレは貴方のかしら?

 
    参考
    「東方Wiki」>東方香霖堂
    「東方萃夢想Wiki」>勝ちセリフ

 

 ・ソユーズ計画

  アメリカのアポロに対し、
  ロシア(当時はソ連)の有人月旅行計画がソユーズ計画である。
  ソユーズ(ロシア語発音はサユース)は、英語のユニオン(union)にあたる。
  三段構成の11A511型ロケット(A-2ロケット)により打ち上げられるモジュールが
  ソユーズであり、三段ロケットのさらに上に搭載される。
  ソユーズ自体も3つのモジュール、
  軌道上で主に利用する軌道船、地球に帰還する唯一の部分の帰還船、
  ロケットエンジンや燃料・酸素・水・機械類が占める機械船から成る。
  
  三段構成の、月に至るためのロケットとは一味違い、
  ソユーズは幻想郷勢ユニオンによる三段攻勢を象徴するか。
  一致団結はしていないが…。
  どこが象徴かというと、二段目だけが自力帰還する点が。
 
    参考
    「Wikipedia」(ソユーズ

 

 ・幽々子様は何か判っている様に見えるが、
  実際はただその時の気分で行動を決めているだけなのだ。
 
  幽々子の言動が常時理解不能である妖夢は、
  主人の考えをこのように判断し、既に思考停止に陥っているようだ。
  この直後、監視の結果を知らせた後の幽々子の命令から
  理解が絶望的と悟り、完全に思考停止した妖夢であった。

 

 ・幽々子様は目を丸くして聞いていた。
 
  妖夢の自発的な監視活動に驚いた、というわけではないであろう。
  藍の依頼を勝手にそのまま実行しただけだし、
  夜道を怖がる妖夢が夜中に外出していたわけだし。
  ここは、紫が吸血鬼に意図的に実行させたロケットの様子から
  紫の真意、作戦の全容を悟ったことを表しているだろうか。

 

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