「東方儚月抄 〜Cage in Lunatic Runagate.」
最終話 『二つの望郷』 前編

 
あらすじ

  捕われの身として月の都に残された地上の巫女、博麗霊夢。
  依姫の嫌疑払拭の為、街頭で神降ろしの踊りをさせられ、
  あるいは、綿月邸にて晩酌とともに地上の話をさせられる日々を送る。
  しかし、月世界に残った地上の者は霊夢だけではなかった。


誌上情報

  表紙アオリ ZUN連載ノベル
  扉アオリ  月の都に取り残されて 霊夢はひとり、何を想うのか――。
  紹介記事  東方星蓮船 (自機3人の紹介+1〜3面ボスのネタバレ)
 
  東方プロジェクト最新情報 霧雨魔理沙立体化企画進行中!!

  付録DVD  東方地霊殿 ZUN地霊殿キャラを多いに語る(後編)
  (※誤字は掲載誌上のものです)


パラグラフ編成

  1)(今回は客観)
    月の都の往来。
  2)玉兎同士の会話…「人だかりと、綿月様の見せたい物」
    綿月家について。
  3)謀反の噂と不思議な事。
  4)綿月家が疑われる理由と、綿月姉妹と八意様。
  5)依姫と霊夢の会話…「神を降ろして廻ること」
  6)綿月邸。
    月の都の環境について。
  7)食卓。
  8)綿月姉妹と霊夢の会話…「霊夢を残した理由、今回の事態の経緯、
                    地上と月、その間の移動方法」
  9)ロケットの完成と不審点について。
  10)引き続き、三人の会話…「八雲紫」
    窓の外に亡霊の姿。
    妖夢と幽々子の会話…「霊夢、豪勢な料理」
  11)妖夢と幽々子の会話…「霊夢、他の連中」
  12)月の都と亡霊と穢れ、そして八雲紫について。
 
 
  補足
 
   本話は月面バトルに依姫が勝利し、
   レミリア達を地上に強制送還した後の
   同日、あるいは翌日であろう。
 
   また、本話では客観視点で今回の事態への
   八雲紫の関与が示されている。
   表の月の旗の消失と神々の召喚が
   月の都転覆陰謀の噂発生に結び付いた。
   いずれも八雲紫の直接または霊夢を介した間接的な所作だが、
   これらをもとに第一話付近の時系列を考えると、
 
   (1) 旗消失 → 玉兎確認 → 噂の発生* → 情報発信 → 鈴仙受信
      → 永琳、旗確認 → 例月祭 → レイセン、神社に出現
   (2) 紫、霊夢に稽古 → 月で神々召喚感知 → 噂の発生*
      → レイセン、脱兎 → レイセン、神社に出現(数日を要する)
 
   例月祭とレイセンが地上に現れた日は同日同夜である。
   月の羽衣による移動が数日を要する以上、
   紫による稽古は漫画版の同じ第一話に描かれるが別日と言える。
   (紫が不正神降ろしを行なえるという新事実が出てこない限りは)

 

 
解説と雑学

 ・二つの望郷
 
  一つは前編、すなわち本話。
  「ああもう、何で私だけ月の都に残ってなきゃいけないのよ。
  「でさぁ、私はいつまで月の都に残っていればいいの?
  月の都に捕われの、霊夢の望郷。

 

 ・その者とは月の賢者とも呼ばれた八意様である。
 
  客観視点と見せ掛けて、「八意様」 と、月サイドの視点。
  パラグラフ限定での玉兎視点なのか、
  語り部が定まり切っていないだけなのか、その他か、不明。

 

 ・その八意様が月の都を裏切り、地上にお隠れになってしまったのである。
 
  「裏切り」 は、単に月よりも地上を選んだことを指すか、
  それとも、永夜抄設定テキストの使者殺害を指すか。

 

 ・月の都では殺生は余り好まれないから
  貴方を気軽に罰する訳に行かないのです。
 
  つまり、(気軽に)罰する=殺生!?
  さらりと流れたセリフがちょっと恐ろしい。
  永夜抄設定テキストの輝夜処刑や永琳ジェノサイドなど、
  月人が時折自然に表す彼女らの価値観といったところか。

 

 ・テーブルには上品な料理が並んでいた。
 ・霊夢は見たこともないような見事な料理を前にして、
  機嫌が良くなっているようだ。
 ・味は見た目ほどではないようだ。
 
  月の都はそもそも食材が限られていると思われるが、
  殺生、穢れを嫌っていることもあり、
  そんな月の都の料理とは、おそらく精進料理に近いものであろう。
  一方、豪勢な見た目であるとも描写があることから、
  単なる精進料理と言うよりも、中国の
  「もどき料理」、「素食」 を念頭に置いてのものであろうか。
  と言っても、月の都のお酒と同様に、
  穢れが無いゆえにどこか寂しさも付きまとう、
  それが見た目ほどではないと評される味なのであろう。
 
    参考
    「Wikipedia」 (台湾素食精進料理禁葷食

 

 ・それから一年以上も月を目指すロケットを作成していたらしい。
 
  永夜抄エンディング、東方香霖堂、東方文花帖参照。

 

 ・貴方達のロケットは空間を移動する方法と距離を縮める方法の
  両方を使っていましたね
 
  漫画版のパチュリー解説で既に言及あり。
  天蓋に映った月を追尾して飛び、満月の夜に月の扉をくぐる。
  地上の大気圏内かつ幻想郷の結界内の飛行、ということでもあるか。
 
  一方で、月の兎の羽衣は地上人のロケットと同様の
  空間移動に分類されているが、表の月の反射鏡をいじるくらいだから
  やはり宇宙空間でも生命活動を維持できるのであろうか?

 

 ・月の民にとっては地上は監獄のような所。
  月の都の一部と考えていますから。
 
  一方で、幻想郷の面々は、夜空に浮かぶ月に
  月の都や月人、玉兎を思い描く。
  どちらも結界に閉じられた系であり、非常識のつながりで
  幻想の性質を共有する同質世界とも言えようか。
  月の都が地上を自分たちの一部と考える様に、
  幻想郷が月を幻想の結界内にみなして考えるといったインタラクション。
  結果、霊夢は幻想郷の結界外に出たわけではない。

 

 ・ある妖怪――八雲紫が導いていたのである。
 
  第一次月面戦争時の主犯、八雲紫。
  月人の強力無比な能力と賢者のトラップにより惨敗を喫した
  地上の妖怪たちであったが、転んでもただでは起きない紫は
  亡霊と月の都の、浄土という共通性による相性に気付いていた。
  
  亡霊・西行寺幽々子は月面戦争を 「見ていた」。
  実際に現場に居たことが確定したおり、
  見ていた、とした紫の表現も事実に適合していたわけだが、
  ひょっとしたら、地上の妖怪たちがコテンパンにされているところも
  ただ 「見ていた」 という皮肉もあったりするかもしれない。
  亡霊の特性が月人に知られていないわけだから。

 

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