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風神録と静岡県
 

風神録に長野県が密接であることは既に述べたが、
長野県より頻度は低くなるが、同じく本事典各項でよく出会う地域がある。
それが静岡県。

憶測や妄想に過ぎないものも含めるが、以下の関連がある。
 
 秋静葉 → 秋葉山本宮秋葉神社 (浜松市春野町)
 秋静葉 → 賤機山 (静岡市葵区)
 オヲトシ → 大歳御祖神社 (静岡市葵区)
 大鐘婆の火 → 遠江国横須賀 (小笠郡大須賀町)
 流刑人形 → 伊豆国は流刑地の一つ (静岡県東部)
 河城にとり → 河城 (菊川市)
 犬走椛 → 犬走島 (下田市)
 白狼天狗(木の葉天狗)→ 大井川
 葛井の清水 → 遠州サナギの池への通底伝説
            (サナギの池は御前崎市佐倉の桜ヶ池を指すと言われる)
 天竜 → 天竜川
 博麗幻想書譜2006年12月27日 → 河津七滝 (賀茂郡河津町)
 
他はおまけまたは私の見当違いとしても、
少なくとも天竜川は注目される。

 

周囲の山々から 31の河川を通じて水が流入する諏訪湖だが、
諏訪湖からの流出河川は天竜川のみである。
河川法上は、諏訪湖は天竜川水系の一部として扱われる。
また、古来より天竜川またはその流域を通して
上流域の諏訪と下流域の間に文化・物資などの交流があったことは
想像に難くなく、一般的にも神話伝承の伝達経路の一つとして議論される。

天竜川水系には、
上流に甲賀三郎伝説、諏訪明神絵詞、泉小太郎伝説などの竜蛇伝承があり、
下流にも伊那谷の蛇塚や複数の通底伝説、田村麻呂と大蛇の伝説などがある。

竜蛇信仰の結び付きとともに、通底伝説 (抜穴伝説とも) は注目される。
本編でも、葛井の清水は通底伝説関連である。
「本朝俗諺誌」 などでは遠州の鎌田の池への通底が記されるが、
「諏訪明神絵詞」 では葛井の池から遠州のサナキの池に浮き出たとされる。
葛井神社境内の案内板にも通底の先は遠州サナギの池であると明記される。
サナギの池とは御前崎市佐倉の桜ヶ池であるとする説がよく知られるが、
藤森栄一は佐鳴湖 (さなるこ; 浜松市西部、浜名湖の東に位置する) としている。

サナキと言えば、「諏訪明神絵詞」 には、
御神渡りを見ようと夜の氷結した諏訪湖上に寝た行者が
翌朝、遠州のサナキの社に居たとするエピソードもある。
また、遠州の桜ヶ池に通じるとされるのが、
善光寺 (長野市) の阿闍梨池である。
一方で、桜ヶ池・池宮神社には、
秋の稔りに感謝し神に櫃に入れた赤飯を献ずるとして
櫃を桜ヶ池に沈める納櫃祭 (お櫃納め神事) が
遠州七不思議の一つとしても知られている。
このお櫃は数日後に空になって浮いてくるとされるが、
諏訪湖に空櫃が浮くこともあると言われる。

信州と遠州を結ぶ通底伝説は多く分布し、
遠州を中心として諏訪に通じるものが14例、
信州より遠州に通じるものが4例あると大庭祐輔は報告しており、
同時に、記述もれの伝説もまだあると思われる、と述べている。

以上のように、諏訪と静岡は地理的にも文化的にも
我々の視点で特に着目される神話伝承的にも大変密接であると言える。
Stage 2 から Stage 4 にかけて水の流れを遡りつつ
目的地としての湖に至る風神録の構図をとっても
この結び付きは見過ごせ無いところであろう。
従って、他の静岡関連要素も頭から却下できないところかと、
これは個人的な見解。

 

さて、静岡と諏訪の関連をもう一つ。
こちらは神話伝承系を全く忘れて別のアプローチとなる。

諏訪湖は日本の中央である。
これは、日本列島を見た時のおよそ中心であることもそうだが、
さらに注目される点がある。
それは、中央構造線と糸魚川・静岡構造線が交わるポイントである点だ。

中央構造線は日本最大級の断層系で、
九州から関東へ、西南日本を縦断する大断層系である。
九州、四国、紀伊半島を通り、渥美半島から北上し、
天竜川と一部並走するように諏訪湖に至る。
この辺りで糸魚川・静岡構造線と交わるが、
諏訪湖をつくった断層活動により、中央構造線もズレている。
中央構造線はここから少し北上後、東へ向きを変えて
関東山地、関東平野から鹿島灘に抜けているとされる。

一方、糸魚川・静岡構造線は
新潟と富山の境付近の親不知 (新潟県糸魚川市) から
諏訪湖を通り、安倍川 (静岡市) に至って本州を横断する大断層線である。
安倍川の他に、富士川または大井川とする説もある。
糸魚川・静岡構造線を境に東西で生態系が異なっており、
地質の構造上もこの線で本島が真っ二つになっていることから
東西境界線として扱われる。
西側の西南日本はユーラシアプレートに、
東側の東北日本はオホーツクプレートに乗っているという違いがある。

正確には、糸魚川・静岡構造線の東にはフォッサマグナと呼ばれる
大地溝帯が広がっており、糸魚川・静岡構造線はフォッサマグナの西縁である。
フォッサマグナはラテン語の 「大きな窪み」 に由来する。
フォッサマグナの東側は不明確な部分もあるが、
長野県では県土の半分を占め、県民の 80%がこの上で生活していると言われる。
プレートテクトニクスで言うところのプレートの境界域に相当するとも言われ、
すなわち、オホーツクプレートとユーラシアプレートに挟まれた一帯が
両プレート (+南からのフィリピン海プレート) の押し合いによる造山運動で褶曲し、
堆積物が溜まって岩石となった海底が盛り上がって出来た、
東日本と西日本を繋ぐ接合部として見られる。

東方の話に戻ろう。
キャラ設定.txt で山や火山の成り立ちに地殻変動が言及されていたので
やや踏み込んだ紹介をしたが、
諏訪湖への着目をもう少し広視野にすると、
東と西を繋ぐ線上であり、北と南を繋ぐ線上であり、
要は日本 (ヤマト) の連結を担うという想像も出てくる。
二者が出会うだけでは、対立か共存かは分からないが、
それが 「和」 (日本の伝統または輪) に強意が置かれた本作であり、
「諏訪大戦」 (土着VS中央) も含まれる本作である。
地質学上の東西・南北だけでなく、
神話も加味すれば土着と中央、諏訪視点では内外を繋ぐ、とも解釈できる。

また、糸魚川・静岡構造線に戻れば、
本ページ上段で記した 「静岡要素」 と 「諏訪湖」 と 「厭い川」 とが
一つの線として連なることも見過ごせない。
特に、秋姉妹関連か? として挙げた賤機山と大歳御祖神社の近くに
糸魚川・静岡構造線の安倍川が流れる点も意識すれば、
Stage 1 と本編の中核とエキストラステージとが線で結ばれるととれる。


以上、静岡への注目もあながち見当はずれではないかなと
個人的には思える根拠となる点をつらつらと挙げてみた。
今回、造山運動にも言及したが、
山々の形成にプレートテクトニクスの関連は密接で、
チョモランマをはじめとするヒマラヤ山脈も
インドプレートがユーラシアプレートにぶつかり形成されたものであるし、
キャラ設定にも山の形成について僅かな言及がある。
プレートテクトニクスの作用は生物の視点から見れば
一生かけても気付かないほど微々たる動きだが、
少しの動きでも膨大なエネルギーであり、
エネルギーの解放は一生命の活動スパンでも頻度よく体験できるほど
しばしば断層活動などを通して起る。
諏訪湖や諏訪盆地、天竜川も断層活動の繰り返しで形成されたものである。
そう考えると、今回参考にした草舎人の著書も
やはり関係はあったりするかも?などと
こんなところで補強しつつ、本項を閉じさせて頂く。


参考
「Wikipedia」 (諏訪湖天竜川中央構造線糸魚川静岡構造線フォッサマグナ
「竜神信仰 ―諏訪神のルーツをさぐる」 2006、大庭祐輔著、論創社刊
「天竜川の暮らしと文化 下巻」 1989、磐田市史編さん委員会刊
「海が割れる日 小説 南関東地震」 1998、草舎人著、東京新聞出版局刊
大鹿村中央構造線博物館」> 中央構造線ってなに?
八ヶ岳山麓 『四季徒然』」> 御柱パワーの謎を探る旅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「天竜川流域図」
(国土交通省中部地方整備局浜松河川国道事務所より)

 

 

 


日本列島の大断層
大鹿村中央構造線博物館より)



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