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Acknowledgements & References

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要塞の山
 
 [タイトル]
 
 Stage4のタイトル。ようさいのやま
 妖怪の山、天狗達の社会が誇る防衛体制、
 大瀑布の流れ落ちる水と共に絶え間の無い弾幕の飛沫。
 
 ・要塞
   「外敵を防御・攻撃するために、
    国境・海岸などに築造する堅固な建造物。とりで」
 
 Stage3より引き続いて 「要塞」 である。
 妖怪の山の天狗社会が形作る防衛体系を指しているのであろう。
 これは同時に、妖怪の山要塞の山のシャレにもなっている。
 
 
 ところで、後述する様に、日本神話に登場する猿田彦さるたひこ) は
 天狗の原型とされることがあり、これにちなんで
 文が猿田彦に関連するスペルを使用する。
 また、一方で、猿田彦道祖神とみなされることもある。
 長野県下、安曇野市や松本市は特に道祖神の数の多さで知られる。
 
 ・さえのかみ障の神・塞の神・道祖神
 ・さいのかみ塞の神・道祖神
  「(伊弉諾尊が伊弉冉尊を黄泉の国に訪ね、逃げ戻った時、追いかけてきた
    黄泉醜女をさえぎり止めるために投げた杖から成り出た神)
   邪霊の侵入を防ぐ神。行路の安全を守る神。村境などに置かれ、
   近世にはその形から良縁・出産・夫婦円満の神ともなった。」
 
 イザナギが黄泉の国から逃げ戻った際、
 追っ手を追い払うのに使用した道具や、黄泉の国への入口を塞いだ千引石、
 黄泉から帰って身から離した道具や衣類、黄泉の穢れを祓うための禊
 といった諸段階で種々の神が生まれており、これらの中には
 性質が似通ったり同一視あるいは混同されたりするものがある。
 
 黄泉比良坂を塞いだ千引石は、道反大神 (ちがえしのおおかみ) あるいは
 塞坐黄泉戸大神 (さやりますよみどのおおかみ) と呼ばれる、
 と古事記にある。(日本書紀では泉門塞大神;よみどにさやりますおおかみ
 塞坐黄泉戸大神は、冥界からの邪霊を防ぐと共に、
 死神を冥界に返す神とされる。
 のちには、塞の神道祖神として民間で信仰される様になったとされる。
 
 また、古事記ではイザナギが禊祓した時最初に投げ棄てた杖から、
 日本書紀第四の一書では、千人所引磐石で路を塞いだ後
 来るなと言って投げた杖から、
 同じく第七の一書では、雷よ来るなと言って投げた杖から、
 衝立船戸 (つきたつふなど) 神、または、岐 (ふなど) 神が成っている。
 岐神の本来の名は、来名戸祖神 (くなどさえのかみ) とされ、
 邪気の侵入を防ぐはたらきをする神、いわゆる塞の神道祖神とされる。
 日本書紀神代紀下の第二の一書には、
 岐神が 「郷導くにのみちびき)」 したとあり、
 延喜式所載の祝詞・道饗祭条には、
 八衢比古八衢比売・久那斗 (くなど) という名の神に、
 邪霊の侵入より守ることを祈願するものがある。
 
 一方、古事記には、イザナギが禊祓した時に投げ棄てた袴から
 道俣神 (ちまたのかみ) が生じている。
 これは道、道路の分岐の守り神、道案内の神である。
 日本書紀ではサルタヒコ衢神ちまたのかみ) と記している。
 本居宣長は古事記伝において、
 延喜式にみえる八衢比古八衢比売は、この神と同神であるとしている。
 
 黄泉からの追っ手を塞ぎ留めた岐神塞の神が、
 中国の、旅の安全を祈願する行路の神である道祖に重ね合わせられ、
 そこに猿田彦衢神、さらには地蔵信仰に伴って地蔵菩薩なども
 習合あるいは同一視されていったとされる。
 
 これらを踏まえた上で、
 猿田彦の関連する天狗のステージに 「」 の字があり、
 文のスペルに符、符があるわけである。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (要塞、さえのかみ、さいのかみ)
 「【縮刷版】神道事典」弘文堂 (サルタヒコ、チマタノカミ、フナド、
               ヨミドニサヤリマスオオカミ、境の神、道祖神)
 「古事記」 梅原猛著、学研M文庫刊
 「Wikipedia」 (岐の神道祖神

 「近代デジタルライブラリー(国立国会図書館)」> 古事記日本書紀


猿田彦
(「綱敷天神社」より)


道祖神
(長野県諏訪市にて著者撮影)



九天の滝
 
 [ステージ]
 
 Stage4。きゅうてんのたきくてんの−
 幻想郷随一の大山、妖怪の山が誇る巨大な直滝。
 遥か天空より流れてくるかの様な猛烈な落差の水流背景にしての猛攻。
 
 ・九天
   「1.中国で、天を9方位に分った称。中央を鈞天、東方を蒼天、
     東北方を変天、北方を玄天、西北方を幽天、西方を天(昊天)、
     西南方を朱天、南方を炎天、東南方を陽天という。
    2.きわめて高いところ。天上。
    3.宮中の異称。
    4.9個の天体、すなわち大地を中心として回転する日天・月天・
     水星天・金星天・火星天・木星天・土星天・恒星天・宗動天をいう。」
 
 李白の詩に 「望廬山瀑布」 が知られる。
  日照香爐生紫煙ひはこうろをてらし しえんをしょうず
  遙看瀑布挂前川はるかにみる ばくふのぜんせんにかくるを
  飛流直下三千尺ひりゅうちょっか さんぜんじゃく
  疑是銀河落九天うたごうらくは これぎんがの きゅうてんよりおつるかと
 太陽が香炉峰を照らして紫色の靄がたなびき、
 遙か眺めやると眼前の川に滝が掛かっているかのようである。
 飛ぶように速い流れが真っ直ぐにおちること三千尺、
 天の川が空の一番高い所から落ちてきたのかと疑ったほどだ。
 
 一尺を大雑把に 30cm としても、900m の大瀑布となる。
 実際の廬山の滝は 100m 程度だが、
 本ステージの滝は、幻想的な詩に描写される滝そのものかと
 疑うほどに長い滝である。
 まさに、天上から落ちる滝という名を冠するだけのことはある。
 (霊夢の上昇速度が単にとても遅いだけという可能性もあるが)
 
 九天を 「くてん」 と読めば、「てんぐ」 の音に近いとも言える。
 
 また、天狗は名に 「」 を含むが、
 天狗の語の原点は流星を指した語としての天狗である。
 仏教が広まるにつれて立ち現れてきた天狗は、
 天魔などの仏法の妨げを為す魔物と同一視されたもので、
 仏教世界の欲界六天の頂上、第六天と直結する。
 その後、山岳信仰修験道の要素がより濃く混和され、
 現在も知られる天狗のイメージ構築に向かってゆく。
 これらから、天狗がにもにも関連が強いと考えられる。
 
 九天は単に天の高いところの意の他、天を9つに分割した見方でもある。
 九天は、「天を9方位に分ったもの」 と広辞苑を引用したが、
 単純に9分割するのではないことは記述の通りである。
 中央に鈞天を据え、それを囲む様に八方向に八種の天が展開する。
 天空にこれらの境界線を描こうとするならば、
 まず真上に一つのサークルを描き、
 その円から地平線 (水平線) に向けて
 8本の垂線を描くかたちになるだろうか。
 地上から伸びる8本の道筋が鈞天で出会うベクトルである。
 このような妄想でたちまち 「天の八衢」 もどきが出現する。
 関連は不明。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (九天)
 「Wikipedia」 (廬山天狗
 「詩詞世界」>唐・抒情詩選 >望廬山瀑布
 
 Special Thanks!
 「胡蝶の見果てぬ夢」>文蔵 >過去の御言葉(平成19年11月)、天狗覚書


「廬山瀑布図」
(「森琴石【響泉堂】」より)



フォールオブフォール 〜 秋めく滝
 
 [音楽]
 
 Stage4のテーマ曲。フォールオブフォール 〜 あきめくたき
  4面のテーマです。
  滝というと豪快な大きな滝と神妙な細い滝の二つのイメージがありますが、
  今回は前者の滝をイメージしました。
  いつもいつも東方は暗い感じなので、
  何とかさわやかな感じを出してみましたが如何でしょう?
  秋の滝。滝が一番映えるのは秋だと思います。

 (神々の休憩所 より)
 
 ・fall
   「落下、墜落、撃墜。減少。降雨量、降雪量。秋。崩壊、破たん。落下物」
 ・秋めく 【秋の季語】
   「秋らしくなる」
 
 普段の滝は、木々の緑や岩土に囲まれた景観だが、
 秋の紅葉は暖色系の鮮やかな色合いを添え、美しく互いを引き立て合う。
 
 Fall of Fall.
 「秋の滝」 「滝の秋」
 フォールを絡めて滝を言う場合、
 "waterfall" または "falls" が適当であるが、
 ここでは曲コメントにある通り、秋の滝
 敢えて "falls" の "s" を取って
 の区別をつけ難くしている意図もあるかもしれない。
 それを考慮して訳を、秋の滝、または、滝の秋、とした。
 秋 (aki) と滝 (taki) で音韻を意識しているだろうか。
 
 もしくは、Stage3までより攻撃が激しくなって、
 シューティングの秋、「撃墜の秋」。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (秋めく)
 「SPACE ALC」 (fall, falls, waterfall)

 

 

 

 

 


称名滝と紅葉
(「カメラのキタムラ」店舗ブログより)



犬走 椛
 
 [キャラクター]
 
 Stage4の中ボス。いぬばしりもみじ
 「下っ端哨戒天狗
 妖怪の山で見回りをしている天狗。
 視覚、嗅覚共に優れ、侵入者を瞬時に発見する。
 侵入者を発見すると、まず簡単な攻撃で威嚇し、
 それでも手に余るようだったら大天狗様まで報告に戻る。
 彼女の部隊は普段、滝の裏側で待機している。
 彼女は協調性の高い性格をしていて、忠実に任務をこなす。
 妖怪としては珍しいが、天狗の社会では良くある事である。
 千里先まで見通す程度の能力を持つ白狼天狗。

 (キャラ設定.txt より)
 
 ・犬走り
   「小股にちょこちょこ走ること。
    築地の外壁と溝との間の狭長な空地。
    後世、城郭の牆にその形が残った。」
 ・
   「紅葉。もみじの木。(「樺」の俗字としても用いる)」
 ・哨戒
   「敵の襲撃に備え、見張りをして警戒すること」
 
 天狗の種類も色々と知られ、
 それに基づいて東方求聞史紀においては
 天魔、大天狗、鴉天狗、鼻高天狗、山伏天狗、
 そして、白狼天狗が紹介されている。
 椛の種族である白狼天狗とは、
 松浦静山の 「甲子夜話」 に基づくもので、
 天狗の世界では木葉天狗のことを白狼とよび、
 その地位はかなり低い、とされる。
 
 木葉天狗 (木の葉天狗、木っ葉天狗) は、「諸国里人談」で、
 静岡県の大井川で目撃されたと紹介される天狗である。
 深夜の土手に、翼が六尺ほどののようなものがたくさん現れ、
 川の魚を捕まえていたなどとある。
 「甲子夜話」 では、年を経た木葉天狗になるとされる。
 
 木葉天狗の様に、天狗と言っても水辺に現れる種類もあり、
 同じく水辺の天狗としては、関東地方で言われる川天狗
 四国地方で言われる芝天狗芝天) も挙げられる。
 特に芝天狗は天狗というよりも河童に性質が近いとも言われる。
 
 また、同じく下っ端天狗とされる天狗に、
 の姿、の口を持つとされる狗賓ぐひん) がある。
 修験道・密教の色濃い類の天狗に対し、
 狗賓は山岳信仰の土俗的な神に近いと言われる。
 山の神あるいは天狗の下っ端、使い走りにみなされることもある。
 
 ZUN氏の好きな作家の一人である藤木稟の
 「陰陽師 鬼一法眼」 においては
 天狗の種類の中で数が多くありふれたものとして
 鳶天狗が登場し、下っ端扱いされている。
 天狗に対して猛禽類のイメージで描く例としては、
 鳥山石燕の天狗も挙げられる。
 
 以上を踏まえた上で椛に関して言えば、
 まず白狼天狗木葉天狗) として
 この種の天狗の設定に忠実に 「下っ端」 なのであろう。
 同時に、他の種の下っ端天狗も取り入れられ、
 水辺に出現する木葉天狗川天狗の要素から
 椛の部隊は、普段はの裏側で待機をしているものと思われる。
 また、河童に性質が近い芝天狗の要素から、
 椛が近所の河童と大将棋を嗜む設定が生じているだろうか。
 狗賓の要素は、犬走の苗字と優れた嗅覚に、
 鳶天狗の鳶 (猛禽類) 要素は、撃破後に鳥の姿に変化する点や
 優れた視覚千里眼に活かされているのであろう。
 
 このように、下っ端天狗の種々の要素により構築されたのが
 犬走椛の設定であると考える事が出来る。
 下っ端で使い走りなので、走狗から犬走であろうか。
 ・走狗
   「狩猟などで駆け走って人のためにおいつかわれる狗 (いぬ)。
    転じて、他人の手先となって使役される人を軽蔑していう語。」
 
 一方、五行の木行木葉天狗に通じ、
 木行の目・色の視覚は千里眼の能力に通じ、
 木行の犬は犬走の姓に通じるだろうか。
 また、実際の諏訪湖の東 (木行) には八ヶ岳の天狗岳が聳える。
 
 犬走りとは、犬が通れる程度の幅しかない通路を言い、
 垣と溝の間や土手の斜面に設けられた細長い平地部分を言う。
 城郭の犬走りとしては、城の石垣と堀の水との間、
 水面に近い高さに狭い通路が見られる。
 侵入の足掛かりになってしまうものだが、
 石垣、土塁の崩落を防ぐためであるという見方がある。
 長野県伊那市の高遠城跡では、
 敵の攻撃が鈍る、あるいは敵の姿が露出する所であり、
 犬走は防御に役立った、としている。
 これは本編で犬走椛が果たした役割に近いと言える。
 椛の報告を受け、侵入者対策に
 適任者 (射命丸文) が充てられたのだから。
 
 は、秋の紅葉。
 紅葉の滝、もみじの滝と称される滝は
 長野県に留まらず全国的に見られるので関連は不明。
 木の葉天狗の 「木の葉」 から 「木の花」 を経てに至る命名ルートか。
 また、長野は戸隠に、鬼女・紅葉 (もみじ) の伝説が知られる。
 諏訪の御柱は樅 (もみ) の大木である。
 いずれも関連不明。
 
 人型、鳥型、ついでに犬の文字を名に持つ犬走椛だが、
 平家物語での天狗についての記述を想起させる。
 「人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、犬にて犬ならず

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (犬走り、椛、哨戒、走狗)
 「日本妖怪大事典」 村上健司編著、角川書店 (木葉天狗、川天狗、芝天)
 「Wikipedia」 (天狗木の葉天狗川天狗シバテン狗賓
         トビ五行思想犬走り紅葉伝説御柱祭
 「陰陽師 鬼一法眼 <二> 朝幕攻防篇」 藤木稟著、光文社文庫
 「長野県伊那市より 高遠城址公園ガイド」>北ゲートと犬走
 「日本の滝データベース」>長野県


木の葉天狗
(「日本妖怪大事典」より)


林十江 「木の葉天狗図」
(「Wikipedia」より)


鳥山石燕 「画図百鬼夜行」より 天狗
(「Wikipedia」より)


被撃破直後の椛 (画像上部)


岸和田城、内堀石垣と犬走り
(「Wikipedia」より)



椛通常弾幕
 
 
 椛の通常弾幕は、交差状に飛来する米弾群と、
 三方に向けて放たれる、渦を描く様に連なった中弾群から成る。
 特に模様として目を引くのが三方向の巴である。
 と言っても、巴の頭が外側、尾が内側であるため
 きっちりと三つ巴を意識したものでもなく、
 三方向に渦を打ち出すことに意味があるのであろう。(あるとすれば)
 
 ・ひょう
  「つむじ風。大風。」
 ・天飆てんぴょう
  「(飆は、つむじ風)空に吹きすさぶ大風。天風」
 ・つむじ風
  「渦のように巻いて吹き上がる風。旋風。」
 
 犬走椛が三方に繰り出すつむじ風、これがすなわち、
 犬の字3つと風の字からなる 「」 につながると思われる。
 
 高橋順子の 「風の名前」 には、
 春のつむじ風の春飆 (しゅんぴょう)、
 夏の熱い強風の炎飆 (えんぴょう)・朱飆 (しゅひょう)、
 涼しい風の涼飆 (りょうひょう)、
 荒れ狂う風の狂飆 (きょうひょう)・勁飆 (けいひょう)・
 驚飆 (きょうひょう)・飆風 (ひょうふう) が紹介されている。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (飆、天飆、つむじ風)
 「風の名前」 高橋順子著、小学館刊



射命丸 文
 
 [キャラクター]
 
 Stage4のボス。しゃめいまるあや
 「里に最も近い天狗
 妖怪の山の新聞記者。
 主に幻想郷の少女達のローカルニュースを新聞にする天狗である。
 風を操る程度の能力を持つ鴉天狗。

 (キャラ設定.txt より)
 
 以前の事典にも記載あり: 東方花映塚



文外観
 
 
 1.服装
 
  ――今回の文のシャツは、
  いつものZUNさんの服装に近いと感じたのですが。
  ZUN あの模様はあえて入れてみたんです。
  前と同じ格好をさせてもよかったんですが、
  かといって変な格好をさせても駄目ですし。
  襟のところから出ているちょっとマフラーっぽい感じのあたりは、
  お洒落な感じでかつ和風にしたかったんですよ。
  和風で、社会派でとこか近代的となるとあんなイメージになるんです。
  洋風のシャツに和風の柄が入っている所がポイントですね。

 (「キャラ☆メル」vol.3、東方風神録インタビューより)
 
 「いつものZUNさんの服装」 とは、
 風神録体験版がリリースされた2007年5月の例大祭などで
 目撃例のある服装を指すものであろう。
 白地のポロシャツや黒地の帽子に、帯状に和風の模様が描かれている。
 
 文 (綾) の意も掛けられているだろうか。
 ・綾
  「物の面に表れたさまざまの線や形の模様。特に、斜めに交差した模様。
   経糸に緯糸を斜めにかけて模様を織り出した絹。斜線模様の織物。」
 
 猿田彦の子孫が太田命である。
 太田命は猿田彦と共に祀られる例は、
 伊勢の猿田彦神社などがある。
 ZUN氏の苗字が太田であることは、
 永夜抄までの作品の購入者には周知のことである。
 また、射命丸文は本作から猿田彦に関するスペルを用いる。

 2.装飾
 
 頭頂部の頭巾はこれまでにも着用していた物。
 修験者のかぶる小さいずきんである、頭襟ときん;頭巾、兜巾とも)。
 山中遍歴の際、瘴気に触れるのを防ぐためという。
 十二因縁にかたどって12の襞を設け、紐で頤に結びとめる。
 頭襟は黒色の布で作るが、文の場合は赤である。
 天狗の赤色を、肌の色ではなくこちらに反映させたものか。
 
 葉団扇高下駄風の靴も、これまでにも着用または所持している物。
 天狗のアイテムである。
 
 今作で付け加えられた物は、頭部の両側に垂れる
 計6つのふさふさな房である。
 修験者が身に付ける結袈裟 (ゆいげさ) に付いている
 6つの梵天に基づく物であろう。
 結袈裟は、細長い3本の帯状の布を緒で
 Y字状に結び連ねた物で、それぞれに2つずつを付ける。
 6つのは、菩薩が修する6種の基本的修行項目、
 布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧の六波羅蜜を表すとされる。
 身に付ける位置に意味は無いが、数に意味があることから、
 それに沿って、デザイン上見えやすい位置に
 文は6つの房を付けているのであろうか。

 
 参考
 「キャラ☆メル vol.3」 一迅社
 「広辞苑 第五版」 (綾、頭巾、結袈裟、六波羅蜜)
 「風俗博物館」>日本服飾史資料 >室町時代 >山伏
 「[資料]東方作者神主Zun的資料
 


 

 

 

 


山伏
(「風俗博物館」日本服飾史資料より)



スペカ背景

 1.静止画

 スクロールする背景で少々見分けづらいが、
 黄色のラインが稲光を描いているのが判る。
 画面上方から二方向に、二本の稲妻である。
 その周囲、例えば画面左上部分など、
 丸まったが描かれている。
 画面中央付近や右下などいくつかの雲からは
 しっぽのように曲線も伸びている。
 
 を珠状に丸めて文様化したこれらは
 雲珠文うずもんうんじゅもん) と言う。
 神社や寺の装飾品・仏具・荘厳具に多く使われる。
 神聖あるいは瑞祥。
 
 稲妻は、まず一点目として、風神・雷神の関係がある。
 本作では特に、神奈子らの農耕神としての風神に対して
 天狗の風神要素は突風や嵐といった方に寄っている。
 その荒々しさが、強風をもたらす風神とよく対とされる
 雷神も兼ね備える形で、イメージが文に付与され、
 雷光のグラフィックが選ばれたのであろう。
 
 もう一点は、稲作との関係が考えられる。
 稲が結実する時期に雷が多いことから、
 古代信仰では雷光が稲を実らせるとされていた。
 これが稲妻という語の語源と言われる。
 いかずち) という語の場合は、
 厳し(いかし;荒々しい、立派)+つ(助詞)+ち(霊) が
 語源とされ、恐ろしい神を表していた。
 かみなり) も、神鳴りが語源で、
 雷の発生に神の関与が考えられていた表れである。
 
 本作では風神を核として、全体に稲作が通底するが、
 文に稲妻が当てられたのも稲作要素を見据えてのものだろう。
 該当するのは猿田彦や二百十日である。
 サルタヒコの神名の意が解かれる際、
 早苗や皐月と同様に神稲の意のサ、助詞のル、田の意のタ(ダ) から
 神稲の田とする説がある。(ヒコは男子の美称)

 
 2.スクロール画

 スクロールしている画像はやや複雑である。
 ベースは分銅繋ぎで、物の目方を計る分銅をモチーフとした
 分銅文様を連ねた文様である。
 これらの各マス目に、青海波、紗綾形、亀甲花菱、松皮麻の葉など
 各種文様が散りばめられている豪華な文様だが、
 子細な部分は特に関連が無いと見てここでは掘り下げない。
 
 このスクロールしている画像は全体的に、上述の 「雲に稲妻」 を
 覆っているが、右の図でも見て取れる通り、
 所々から下地の明るい青を見ることが出来る。
 これは、分銅繋ぎの文様が、扇散らしの文様部分だけ
 切り抜かれているためである。
 扇散らしは扇を一面に散らした文様であり、扇面散らしとも言う。
 雷文様で雷神を象徴したのに対し、
 扇文様で風神を象徴したものだろう。
 仰いで風を起こす道具であり、祭儀で使用する呪具、
 あるいは、末広がりでめでたいものとされるのが扇である。
 
 花映塚や緋想天で、文は扇を名に持つスペルやショットを使用する。
 補扇、風神一扇、紅葉扇風、飄妖扇がそうである。

 
 参考
 「語源由来辞典」 (稲妻、いかずち、かみなり)
 「綱敷天神社」>由緒 >御祭神 >猿田彦大神
 「日本・中国の文様事典」 (雷・稲妻、雲、分銅、扇)


「雲に稲妻文様 着付・羽織」
(「日本・中国の文様事典」 より)


分銅繋ぎ
(「日本・中国の文様事典」 より)


扇散らし
(「日本・中国の文様事典」 より)



妖怪の山 〜 Mysterious Mountain
 
 [音楽]
 
 射命丸文のテーマ。ようかいのやま 〜 ミステリアス・マウンテン
  射命丸 文のテーマです。
  同じく文のテーマである風神少女は、
  新聞記者である文のイメージで作りましたが、
  今回は日本古来からいる妖怪『天狗』のイメージを重視しました。
  どことなく古くさく懐かしい感じがすれば貴方も妖怪の一員です。
  ああ、懐かしい感じがする。

 (神々の休憩所 より)
 
 ・mysterious
   「神秘の、はっきりしない、神秘的な、秘密の、不可解な、
    いわくのある、えたいの知れない、謎めいた」
 
 妖怪の山と、山の妖怪・天狗。
 「妖怪の山」 をテーマ曲とする文は 「山の妖怪」。
 道中曲が滝の秋のような秋の滝だったし、
 このような遊び心も含まれているかも。
 
 Mysterious Mountain.
 「不思議な山」 「妖怪の山」
 妖怪が棲息し、独自の社会を築いている不思議な山
 山の妖怪は時に山神とみなされ、神秘の山
 文が専属の自機であった東方文花帖では
 タイトル曲が 「天狗の手帖 〜 Mysterious Note」 であった。
 「妖怪の手帖」 であり、パッケージの紹介文にある様に 「不思議な手帖」。
 これに合わせて、ここでも上記の訳とした。
 
 ZUN氏の好きな作家の一人、菊地秀行の作品に
 「エイリアン妖山記」 がある。
 "Alien-Mysterious Mountain Notes" と英訳される。
 関連は不明。

 
 参考
 「SPACE ALC」 (mysterious)
 「Wikipedia(英)」 (Hideyuki Kikuchi



岐符 「天の八衢」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。あまのやちまたあめの−
 Easy, Normal にて使用。
 文から、下方を除く全方位に白弾丸が多層で放射される。
 弾丸は一定時間後に減速、停止し、一斉に青弾丸に変化する。
 青弾丸は下方に向けて落下する。
 
 ・天の八衢あまのやちまた
   「(「八衢」は数多くの道が分れる所の意)
    高天原と葦原の中つ国との間にあったという辻」
 ・八衢
   「道が八つに分れた所。また、道がいくつにも分れた所。
    迷いやすいたとえにもいう。」
 ・
   「わかれること。わかれみち」
 ・・巷・衢 (ちまた
   「(「道股(ちまた)」の意)
    道の分れる所、わかれみち、つじ。町の中の道路、街路。
    ところ、場所。世間。」
 ・岐の神ちまたのかみ
   「道の分岐点を守って、邪霊の侵入を阻止する神。道祖神。さえのかみ。
    (天孫降臨の時、天の八衢に迎えて先導した)猿田彦神の異称。」
 ・岐の神ふなとのかみ
   「伊弉諾尊が黄泉国から逃げ帰り、禊祓をした時に
    投げ捨てた杖から化生した神。集落の入口などの分岐点にまつられ、
    災禍の侵入を防ぐ神、また道路や旅行の神とされた。
    くなとのかみ。ちまたのかみ。道祖神。」
 
 天の八衢とは、日本神話の天孫降臨の段にて記述される、
 高天原と葦原中国との間にあるとされる辻である。
 古事記では以下のように記述される。
  爾日子番能邇邇藝命将天降之時。
  居天之八衢而。上光高天原下
  光葦原中國之神於是有。

  (そこで、邇邇芸命が天降りしようとするときに、
   道が八方に分れる所に来ると、上の方は高天の原を照らし、
   下の方は葦原中国を照らす神がいたのである。

  (中略)
  答白僕者國神名猿田毘古神也。
  所以出居者。聞天神御子天降坐故。
  仕奉御前而。參向之侍。
  (その神は、「わたしは国つ神で、猿田彦神という名です。
   ここにいるのは、天照大御神のご子孫が天降りなさると聞きましたので、
   道案内をいたそうと思って、お迎えに参りましたわけです」と答えた。

 天の八衢猿田彦が最初に現れた所であり、
 多分岐点に立っていたこと、先導・道案内を務めたことから
 猿田彦の神として見られることがある。
 このあたりについては 「要塞の山」 の項にも記した。
 
 日本書紀では猿田彦の容貌についてよく記されている。
  其の鼻の長さ七咫、背 (そびら) の長さ七尺余り。当に七尋と言ふべし。
  且た口尻 (くちわき) 明り耀 () れり。眼は八咫鏡の如くして、
  てりかがやけること赤酸漿に似れり。

 光を伴うことは古事記の記述と同等であるが、
 ここでは、鼻が異様に長く、非常に長身であった姿も見て取れる。
 「咫」 は手のひらの下端から中指の先端までの長さ、あるいは、
 親指と中指とを開いた長さ、とされる。
 「尺」 は30センチ程度。
 「尋」 は両手を左右にひろげた時の両手先の間の距離を言う。
 この長い鼻から、猿田彦はしばしば
 長い鼻をした天狗の原型であると言われる。
 
 天狗の原型を猿田彦に求めれば、
 道案内、先導の役割も付随してくるため、
 本作でも主人公を目的地への行き先案内を果たすし、
 後に東方緋想天や東方儚月抄でも 「導きの専門家」 と表現される。
 加えて、天狗の原型としては猿田彦の他、
 伎楽 (ぎがく) に用いられた治道面や迦楼羅面の影響も指摘されている。
 伎楽は日本書紀にも紹介される伝統演劇であり、
 寺院楽として地位を高めたもので、現在でも獅子舞などに痕跡をとどめる。
 山の精とされた天狗が修験道と結び付き、
 山伏の姿、鼻の高い面である治道面、鳥の姿の迦楼羅面が
 影響して天狗のイメージが形成されたと考えられている。
 この治道面もまた、伎楽のパレードを 「先導」 した者の面というわけで、
 道案内、先導の役割に結び付く。
 また、鴉天狗である文の鴉要素に注目しても、
 日本神話で神武天皇の先導役を担った八咫烏から
 道案内、先導の役割が強調されるに至る。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (天の八衢、八衢、岐、岐の神)
 「Wikipedia」 (伎楽
 「神魔精妖名辞典」 (天狗)
 「古事記」 梅原猛著、学研M文庫
 「近代デジタルライブラリー(国立国会図書館)」> 古事記日本書紀
 
 Special Thanks!
 「胡蝶の見果てぬ夢」>文蔵 >東方民譚集 >天狗覚書

NORMAL

 

 

 

 

 

 


天の八衢に立つ猿田彦
(「椿大神社」より)


猿田彦之面
(「立鉾鹿島神社」より)


伎楽面
(「広辞苑 第五版」より)



岐符 「サルタクロス」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。
 Hard, Lunatic にて使用。
 天の八衢の上位版。
 白弾丸がより勢いよく放射され、これらは画面左右端と
上端で反射する。
 画面端での反射から一定時間後に紫弾丸へと変化し降下してくる。
 
 ・猿田彦さるたひこ
   「(古くはサルダビコ)日本神話で、瓊瓊杵尊降臨の際、
    先頭に立って道案内し、のち伊勢国五十鈴川上に鎮座したという神。
    容貌魁偉で鼻長7咫、身長7尺余と伝える。俳優・衢の神ともいう。
    中世に至り、庚申の日にこの神を祀り、また、道祖神と結びつけた。」
 ・cross
   「十字形。十字路、交差点。横断。十字架。試練、苦難。」
 
 Saruta Cross.
 「猿田の辻」
 猿田彦が立っていた天の八衢
 猿田彦の名を据えて固有名詞化したようなものだろうか。
 「」 は男子の美称なので、この場合の省略に問題は無い。
 
 Saluter Cross.
 「迎え人の辻」
 猿田彦天の八衢にて、ニニギ一行を迎えた。
 この様子は英語で "greet"(迎える、挨拶する) と表現される。
 "Greet" よりも礼儀正しい形の同義語が "salute"(サルート) である。
 天孫を出迎える者 (saluter)  としての猿田彦 (Saruta) の
 シャレも込めて、猿田彦が立っていた (cross) を
 英語で表した物だろうか。
 
 実際の猿田の地名は栃木県足利市猿田町や千葉県銚子市猿田町、
 埼玉県日高市猿田、茨城県鹿嶋市猿田、茨城県桜川市猿田など多数ある。
 これらの近くには 「猿田交差点」 が実在するかもしれない。
 実際、「猿田交差点」 で検索すると
 埼玉県日高市猿田の交差点がヒットする。
 この近くには高麗川 (こまがわ) が流れる。
 かつて高句麗からの亡命者を受け入れた高麗郡に由来する河川名だが、
 埼玉県在住暦のあるZUN氏がこれを意味深に組み入れているかは不明。


 参考
 「広辞苑 第五版」 (猿田彦、彦)
 「SPACE ALC」 (cross, greet, salute)
 「Wikipedia(英)」 (Sarutahiko
 「Wikipedia」 (高麗川

HARD



風神 「風神木の葉隠れ」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。ふうじんこのはがくれ
 Easy, Normal にて使用。
 文から多量に放たれた二色の緑米弾がしばらく旋回を続けた後、
 ややばらけつつ飛び去る。
 
 ・木の葉隠れ
   「木の葉の陰に隠れること」
 
 忍術などで有名な木の葉隠れ
 文の操る風に巻かれて踊る木の葉に、
 文の姿が隠れて見え難くなる。
 または、自機の視界が木の葉に遮られ、
 文も何も木の葉以外見えなくなる。
 風神少女の木の葉隠れ。
 
 また、木の葉隠れは忍術用語というわけではなく、
 後撰和歌集や新古今和歌集などにも登場する単語である。
 関係はしないが、一例を挙げる。
 「数ならぬわが深山辺のほととぎす 木の葉隠れの声は聞こゆや」(後撰・夏)
 「いまよりは木の葉隠れもなけれども 時雨に残る村雲の月」(新古今・冬)
 単に木の葉の陰に隠れて見えないことに情緒も込められる。
 
 さて、天狗が隠れると言えば、天狗の隠れ蓑を忘れてはならない。
 隠れ蓑とは、それを着ると身を隠すことができるという蓑であり、
 転じて、真相を隠す手段である。
 「オプティカルカモフラージュ」 の項でも触れたが、
 透明マント、遮蔽装置などと同様、
 光学迷彩機能を誇る蓑が天狗の隠れ蓑である。
 しかし、蓑とは、茅や菅などの茎葉を編んで作った雨具である。
 樹木の葉ではない。
 加えて、にとりの様に迷彩効果が発動していないことから
 単に木の葉の陰に隠れているだけの可能性がある。
 
 天狗が隠れる木の葉と言う場合、
 ウコギ科の常緑小高木、カクレミノ隠れ蓑) が考えられる。
 山地に自生、高さ約6メートル、葉は卵形で厚く光沢がある。
 若い葉は深く3〜5つに裂けており、テングノウチワの別名もある。
 
 隠れ蓑の名を持つ木の葉に
 姿を紛れ込ませる風使いの少女。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (木の葉隠れ、隠れ蓑、蓑)
 「Yahoo!辞書」 (木の葉隠れ)
 「Wikipedia」 (カクレミノ

NORMAL



(「Wikipedia」より)


カクレミノ
(「Wikipedia」より)



風神 「天狗颪」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。てんぐおろし
 Hard にて使用。
 風神木の葉隠れの上位版。
 緑米弾と青緑米弾が飛び交う。
 
 ・
   「山地から吹きおろす風」
 ・天狗風
   「にわかに空中から吹きおろしてくる旋風」
 
 天狗風という語が辞書に記載されている。
 つむじ風、あるいは突然のつむじ風を言う。
 山で聞こえる快音に天狗の太鼓、天狗倒し、天狗笑いなどが知られ、
 山で遭遇する謎の砂礫に天狗の礫が知られる様に、
 主に山地で遭遇する怪現象によく天狗の名が用いられる。
 天狗風も、空中から吹きおろすことが語意に明記され、
 山地やその近傍で出会う現象のニュアンスが含まれそうである。
 実際、高橋順子著 「風の名前」 では、
 「にわかに高みから吹き下ろす不気味な旋風のこと」 と解説される。
 天狗がその葉団扇で巻き起こしたかと感じられるような
 突然過ぎて戸惑う位の不思議なつむじ風。
 
 とは、山地から吹きおろす風で、
 地方を代表する山の名を冠して呼ばれる事が多い。
 赤城颪、浅間颪、愛宕颪(嵯峨颪)、伊吹颪、北山颪、蔵王颪、鈴鹿颪、
 筑波颪、那須颪、男体颪、榛名颪(伊香保風)、比叡颪(叡山颪)、比良颪、
 富士颪(富士川颪)、摩耶颪、三国颪、六甲颪などが知られる。
 また、地形や気象を冠しても言う。
 山颪、谷颪、川颪、島颪、雪嶺颪、しまき颪、深山颪、雪颪、北颪など。
 
 ここでは、特定の山の名を冠しているのはなく、
 天狗が (山地から) 吹き下ろす風の意で 「天狗颪」 なのであろう。
 天狗風に、吹き下ろす意味合いがこもっているため、
 天狗颪天狗風と同義とも言えよう。
 
 上位版の、二百十日から農家への厄を意識すれば、
 山から吹き下ろして時に冷害をもたらす
 東北地方の 「やませ(山背風、山瀬風)」 も想起されるか。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (颪、天狗風)
 「風の名前」 高橋順子著、小学館刊

HARD



風神 「二百十日」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。にひゃくとおか
 Lunatic にて使用。
 天狗颪の上位版。
 緑米弾と青米弾が飛び交う。
 
 ・二百十日
   「立春から数えて210日目。9月1日ころ。ちょうど中稲の開花期で、
    台風襲来の時期にあたるから、農家では厄日として警戒する」
 
 二百十日は、立春から数えて210日目。
 立春は冬至と春分のほぼ中間で、春の初め。
 旧暦では立春の前後に元日が置かれる。
 二百十日台風襲来の特異日として、
 陰暦8月1日の八朔、二百二十日と共に、
 暴風雨に見舞われることの多い 「三厄日」 として
 特に農家で警戒される。
 風害から農作物を守るため、風神に風を鎮めることを祈る
 風祭、風祈祷、風日待ちなどが催されるのも二百十日前後である。
 
 大規模な風害をもたらす、台風クラスの渦巻く暴風。
 約束された豊穣を吹き散らす天狗の魔風。
 強風の鎮静や作物の豊かな実りを祈念して
 人は風神を祀り風祭などを行うが、その風神が祈りを無碍にする。
 この時、「東方風神録」 の項に触れた様に、
 文 (天狗) を指す風神と神奈子 (風雨の神、農業神) を指す風神とは
 異なるものなのであろうことに注意を払わなければならない。
 風祭系統の祈願の中にも、
 悪魔払いにも似た風の神送りを行うところもあり、
 大風や台風の忌避だけでなく、
 風邪に通じる悪霊や疫神を追い払う意味もある。
 東北地方では雨風祭と称して、男女二体の人形を村境まで送って
 焼き捨てる習慣があるとされる。
 
 ゲルニカの楽曲や夏目漱石の作品に同名のものがある。
 関連は不明。
 
 また、以下はこじつけ。
 旧暦の一ヶ月は30日、一年は360日。
 210日は七ヶ月分。
 旧暦の七月と言えば、月である。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (二百十日、三厄日、風祭)
 「【縮刷版】神道事典」 弘文堂 (風神、風祭)
 「Wikipedia」 (立春

LUNATIC



「幻想風靡」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。げんそうふうび
 Normal, Hard にて使用。
 回避特化型弾幕。
 高速過ぎて赤レーザーにしか見えなくなった文が
 画面上部を左右に行き交いながら緑米弾を振り撒いてゆく。
 緑米弾は下方に降り注ぐ。
 
 ・風靡
   「風が草木をなびかすように、その時代の大勢の人々を
    なびき従わせること。また、なびき従うこと。」
 
 風が吹きつけ、草葉はそれぞれ同じ向きに押され、
 一斉に傾くあるいは倒れ伏す。
 そのように、大勢の人々を靡き従わせることが風靡である。
 天狗の起こす強烈な風が幻想郷中を席巻し、
 大多数を風で圧倒するか。
 
 または、幻想郷最速の風神少女が巻き起こす風聞は
 幻想郷全体のトレンドとなるか、とか。
 幻想郷を風靡する文々。新聞の幻想。
 
 風靡の靡には美 (華美) の意もある。
 視覚では感じられない風の美と
 目にも留まらない文の動きが掛かっているかも、いないかも。
 
 一方、文はスピードに乗ると赤いレーザーと化すが、
 赤くて速いと言えば、アニメ・機動戦士ガンダムの
 シャア・アズナブルを思い出す。
 ファンにとっては、赤と言えばシャア専用を意味し、
 通常の3倍の速度という意味も伴う。
 シャアの二つ名は、赤い彗星である。
 天狗関連で彗星と言えば、
 原初の 「天狗」 という語は流星に関連しており、
 比較的明るい流れ星の通った後にしばらく残る流星痕を
 中国で古くは天狗と称したし、また、
 日本においての最初の天狗の語が見られる日本書紀では
 怪音を立てて飛ぶ火球を、あれは流星ではなく
 天狗アマツキツネ) であると言及している。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (風靡、靡)
 「Wikipedia」 (天狗

NORMAL



「無双風神」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。むそうふうじん
 Lunatic にて使用。
 幻想風靡の上位版。
 
 ・無双
   「ならぶもののないこと、二つとないこと、無比。
    (夢想とも書く)器具類の作り方が巧妙・自在であること、その器具、
    衣服を裏返しても着られるように表と裏を同じ布で同じ体裁に作ること。
    相撲の手の一、内無双・外無双のこと。」
 
 幻想郷最速を誇る風神少女の機動力には並ぶ者無く、
 まさしく無双である。
 
 霊夢愛用のスペル、「夢想封印」 と掛けているのであろう。
 非常に強力な風、神懸かった速さだが、そのネーミングからは
 最強クラスであることに加えて 「手加減」 のセリフが思い出される。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (無双)

LUNATIC



塞符 「山神渡御」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。さんじんとぎょやまがみ−やまつみ−
 Easy, Normal にて使用。
 青米弾を多WAYで連射しつつ、
 砲塔の半数は時計回り、半数は反時計回りに巡らせる。
 また、文からは多量の小弾が放射される。
 小弾の放射間隔は時間経過に従って短くなる。
 
 ・山神さんじん
   「山に鎮座する神。やまのかみ」
 ・山神やまがみ
   「山を守る神。山をつかさどる神」
 ・山神 やまつみ
   「山の霊。山の神」
 ・渡御
   「天皇・三后または神輿のお出かけになること。おでまし。出御」
 ・神渡し
   「(出雲大社に渡る神々を送る意)旧暦10月に吹く西風。神立風」
 
 山の精と修験道が結び付いて、山伏の姿をした
 山の妖怪としての天狗のイメージが形成された。
 天狗は山の怪異であり、時に神聖視されて山の神とされることもあるが、
 山の神がイコール天狗というわけではない。
 山に宿る神の総称が山の神であり、民間信仰では農耕の守護神で、
 春秋に田の神・山の神が交替するという、一つの霊格が二面性を持つ。
 山の仕事に従事する山民が信仰する山の神は、山の守護神である。
 
 「塞の神」 (サエの神;要塞の山の項参照) のの符名と
 塞の神と天狗の関係、そして山神および渡御の語意から判断すると、
 ここでの山神は天狗のことではないと考えられる。
 霊山に宿りし神、山神のお出かけに際し、
 山の精である天狗が先導を務める、と見立てることで、
 上位版の 「天孫降臨」 にもすんなり結び付く。
 
 山神の渡御とは、春の田に降りることか、神無月に出雲へ向かうことか。
 後者であれば、スペル名に隠れる風の名 「神渡し」 が利いてくる。
 神無月に出雲大社へ出掛ける神々を送り出す風の意。
 その往来には必ず風を伴うという。
 山に棲む天狗が風を吹かせて導きを務める、
 天狗の各要素をスマートに詰め込んだスペルとも考えられる。
 
 ちなみに、神々のホスト国である出雲は
 神様が集う場所であり、ご当地の神様が留守にならないため
 出雲では神無月ではなく神在月と言うそうだが、
 信州・諏訪もまた神在月と言うそうである。
 建御名方神には諏訪から出ない誓約があるから、または、
 龍神 (蛇神) である諏訪明神があまりに長大な身体のため
 諏訪に尾を残しながらにして出雲に顔を出せるから、と言われる。
 妖怪の山に突如居座った新顔の神様は、
 紅葉の季節になっても出掛けようとせず、
 導き手の天狗とも折り合いがつかず、
 天狗達にしてみれば、さぞかし怪しい神様だったのであろう。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (山神、渡御、神渡し)
 「【縮刷版】神道事典」 弘文堂 (山の神)
 「風の名前」 高橋順子著、小学館刊 (神渡し)
 「建御名方の杜」>2007年10月6日

NORMAL



塞符 「天孫降臨」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。てんそんこうりん
 Hard にて使用。
 山神渡御の上位版。
 青米弾が青鱗弾に変化。
 
 ・天孫
   「天つ神の子孫。特に、天照大神の孫、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)。」
 ・降臨
   「神仏などのあまくだること。貴人の来訪すること。光臨。光来。」
 ・天孫光臨
   「記紀の神話で、瓊瓊杵尊が高皇産霊尊・天照大神の命を受けて
    高天原から日向国の高千穂に天降ったこと。」
 
 タケミカヅチによる葦原中国の平定 (国譲り) の後、
 葦原中国を治めるために、アマテラスの孫にあたるニニギが
 高天原より降ったことを天孫降臨と言う。
 天孫降臨に際しては、猿田彦天の八衢で天孫一行を待ち、
 天孫降臨の先導を務めた。
 天孫にはアメノコヤネ、フトダマ、アメノウズメ、イシコリドメ、タマノヤの
 五柱の職業集団の長と、三種の神器、そして、
 オモイカネ、タヂカラオ、アメノイワトワケが随伴した。
 
 前項で触れた様に、塞符
 猿田彦または天狗の先導系スペルと考えられる。
 そして、導きの対象は山神から天孫となり、神格は格段に増す。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (天孫、降臨、天孫降臨)
 「古事記」 梅原猛著、学研M文庫
 「Wikipedia」 (天孫降臨

HARD



塞符 「天上天下の照國」
 
 [スペル]
 
 文のスペル。てんじょうてんげのしょうこく
 Lunatic にて使用。
 天孫降臨の上位版。
 青鱗弾が黄鱗弾に、小弾が黄米弾に変化。
 
 ・天上天下
   「天上の世界と地上の世界。天地の間。宇宙の間」
 
 照國は辞書記載なし。
 国を照らす、あるいは、照り映える国、の意であろう。
 古事記では、高千穂の峰に天降った天孫が
 大地を見渡して次の様に述べている。
  此地者向韓國。
  眞來通笠沙之御前而。
  朝日之直刺國。夕日之日照國也。
  故此地甚吉地詔而。

  (この地は、朝鮮に向かっていて、
   笠沙の岬にも道がまっすぐ通っている便利な所だ。
   そして、朝日や夕日がよく照り映える国だ。
   だから、ここはたいへんよいところだ。

 
 天上と天下を照らすと言えば、やはり猿田彦である。
 古事記の猿田彦登場シーンを今一度以下に挙げる。
  爾日子番能邇邇藝命将天降之時。
  居天之八衢而。上光高天原下
  光葦原中國之神於是有

  (そこで、邇邇芸命が天降りしようとするときに、
   道が八方に分れる所に来ると、上の方は高天の原を照らし、
   下の方は葦原中国を照らす神がいたのである。

 天上の高天原と、天下の葦原中国を
 天の八衢より照らした神こそが猿田彦である。
 
 猿田彦が天地を照らす神であったことや
 アマテラスを祀る伊勢の地に鎮まったこと、
 伊勢神宮内宮近くの猿田彦神社などから、
 猿田彦に太陽神としての性質が指摘されることがある。
 一方で、神話においてはアマテラスと猿田彦は
 近いところで記述されながらも直接的に関係はしない。
 一点の共通項としてよく言及されるのは、
 アメノウズメとの関係である。
 
 ウズメは、アマテラスの岩戸隠れの際には、
 岩戸の前で神がかりし、太陽神を呼び出すことに成功した。
 また、天孫降臨の際には、高天原の神々も怖気づいた、
 輝きを放つ謎の神に単身近づいて折衝し、
 猿田彦という正体を顕かにした。
 その後、猿田彦とウズメはニニギの先導役として行動を共にし、
 役目を終えた猿田彦をウズメが伊勢の鎮座地まで送っている。
 そして、猿田彦にちなんで猿女君の名を負った。
 件の猿田彦神社に境内社として祀られる他、
 男女一対の道祖神 (「要塞の山」の項参照) について、
 それが猿田彦とウズメであるとみなされることがある。
 以上から、巫女あるいは芸能の神とされるアメノウズメに、
 塞の神先導役としての性質を見出すことも出来る。

  
  岩戸より現れるアマテラス (「Wikipedia」より)
 
 すなわち、本スペルは、
 猿田彦自身の太陽神としての性質に加え、
 太陽神・アマテラスを岩戸から外へ導いた (誘い出した)
 太陽神・猿田彦を明らかにし、伊勢へ導いたウズメの性質があり、
 したがって、符と位置づけられる。
 これにより、太陽神を先導するという意味で
 「天孫降臨」 の天孫よりもランクが上と捉える事が出来る。
 
 また、本スペルでウズメを要素に持ち出すと、
 ウズメの巫女としての要素が、
 難易度 Lunatic で本スペルの直前に使用される、
 「無双風神」 の博麗の巫女要素 (夢想封印) に
 関わってくるのも面白い点である。
 
 ちなみに、天孫降臨の地とされる高千穂峰は
 宮崎・鹿児島の県境に位置する。そして、
 鹿児島県で最も多い参拝者を誇る神社が照国てるくに 神社である。
 死後、照国大明神の神号が授与された島津斉彬 (1809-1858) を
 主祭神として祀る神社で、文久3年 (1863年) の創建である。
 国旗としての日章旗を提案した人物が島津斉彬であるとされる。
 日章旗は言わずと知れた、太陽である。
 ひょっとしたら、これらの要素も関連するだろうか。
 「東方文花帖」での Music Room 名、「文久の調べ」 との関連は偶然か。

 
 参考
 「Yahoo!辞書」 (天上天下)
 「Wikipedia」 (猿田彦神社道祖神照国神社島津斉彬日本の国旗
 「【縮刷版】神道事典」 弘文堂 (アメノウズメ)
 「古事記」 梅原猛著、学研M文庫
 「近代デジタルライブラリー(国立国会図書館)」>古事記
 「謎のサルタヒコ」>猿田彦大神フォーラム >"謎のサルタヒコ"

LUNATIC

 

 

 

 

 

 

 


猿田彦と天宇受売命
(「椿大神社」より)


双体道祖神
(「長野県山形村」より)



あやややや
 
 [会話]
 
 Stage4の会話。
  文 「あやややや
     侵入者の報告で来てみれば まさか貴方とは……」

 
 ・あや
   「驚き、または感動した時に発する声。ああ。あら。あなや。」
 
 感嘆詞としての 「あや」 の強化版、「あやや」 を更に強化。
 「あやや」 と言えば、近年は松浦亜弥のことだが、
 往年の名作を愛する人は、鳥山明の 「Dr.スランプ アラレちゃん」 や
 竹本泉の 「あおいちゃんパニック!」 を想起するようだ。
 特に竹本泉ネタは東方Project のいわゆる 「旧作」 で
 頻繁かつ大胆に使用されていたことで知られる。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (あや)



ガンガン行く勇者
 
 [会話]
 
 魔理沙使用時のStage4の会話。
  魔理沙 「聞いたぜ、山の上に変な神様が住み始めたんだって?
        私はそいつを倒しに来た勇者だ
        ガンガン行く勇者だぜ」

 
 RPG 「ドラゴンクエスト」 シリーズにて、
 味方キャラがオートで戦闘する際に、
 いくつかある作戦の1つを挙げ、その行動パターンを規定する。
 戦闘において敵に対し、体力・魔力を顧みず、
 持てる最大火力の攻撃・呪文・特技を見舞う作戦が、
 「ガンガンいこうぜ」 である。
 戦闘の作戦指示はプレイヤーの分身たる主人公が
 行なっていることになっている。
 作品によっては主人公が勇者とは限らない上に、
 他のキャラクターも就ける職業としての勇者もあるが、
 職業勇者とは別に、世界を救う救世主だとか
 悪の魔王に挑む勇気ある者としての称号が勇者であり、
 それが主人公=プレイヤーである。



 タイトル / 自機 / Stage1 / Stage2 / Stage3 / Stage4 / Stage5 / Stage6 / ED / Extra

補遺1・風神録と長野 / 補遺2・風神録と静岡 / 補遺3・風神録と五行 / 補遺4・風神録と魔除

Acknowledgements & References

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