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Acknowledgements & References

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八百万の秋の神
 
 [タイトル]
 
 Stage1のタイトル。やおよろずのあきのかみ
 妖怪の山に向かう、その出発点近くの上空。
 
 ・八百万
   「数がきわめて多いこと。ちよろず」
 
 神道の神は非常に数多く、八百万と表現される。
 例えば、古事記にて、天照大御神が天石屋戸に隠れ
 世界は闇と異常に包まれた際に、神々が相談に集まった表現は次のようである。
  是以八百萬神於天安之河原神集
 (こうして、多くの神さまはお困りになって、
  天の安の河原にお集まりになった

 八百万は具体的な数字ではない。
 
 東方求聞史紀では八百万の神に次の解説が付されている。
  何処にでも居て、人間にとても馴染みが深い神である。
  八百万とは『とても多い』という意味であり、
  実際はそれ
(800万) よりも多いと思われる。
 (上のかっこ内は引用者による補足)
 
  まず「八百万の神」でも十分すぎる量なのに、
  「秋の神」になっても八百万なんだっていうネタですよね(笑)。

 (「キャラ☆メル」vol.3、東方風神録インタビューより)
 八百万でカンスト。
 秋の神でも非常に多数。
 そのごく一部が本ステージに登場の秋姉妹。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (八百万)
 「東方求聞史紀 〜Perfect Memento in Strict Sense.」 ZUN著、一迅社
 「キャラ☆メル vol.3」 一迅社
 「近代デジタルライブラリー」> 古事記 / 太安万侶著、柏悦堂、明3、上巻26頁
 「古事記」 梅原猛著、学研M文庫



妖怪の山の麓
 
 [ステージ]
 
 Stage1。ようかいのやまのふもと
 天狗や河童が妖怪社会を形成する妖怪の山。
 謎の 「山の上におわす神様」 を目指して山に入る、その出発点。
 山の麓。
 というか、その上空。



人恋し神様 〜 Romantic Fall
 
 [音楽]
 
 Stage1のテーマ曲。ひとこいしかみさま 〜 ロウマンティク・フォール
  〜 ゲームのテンポを突然落とすメロディアスな部分といい、
    緊張感の感じられない曲調と言い……今までの東方の中で
    1、2を争う1面っぽい曲だと思うのですが如何でしょう? 〜

 (神々の休憩所 より)
 
 ・人恋しい
   「何となく人の姿が見たい、人のそばに行きたい、
    人と話がしたいという気持である。 「秋は―・い季節」」
 ・romantic
   「ロマンチスト、ロマンチックな人、空想家。
    恋愛の、ロマンチックな。空想的な、実際的でない、非現実的な。情熱的な」
 ・fall
   「落下、墜落、撃墜。減少。降雨量。秋【語源:木の葉が“落ちる”季節だから】
    崩壊、破たん、陥落。落下物、落下いん石」
 
 秋は人恋しい季節。
 人恋しい神様は秋の神様。
 
 また、長野県大町の旅館、対山館館主で、登山家、歌人でもあった百瀬慎太郎は、
 「人を想えば山恋し 山を想えば人恋し」 と北アルプスへの思いを詠んだ。
 
 稲作の豊作をもたらす神である田の神
 春秋を中心とする田の神・山の神のサイクルを伴った伝承で
 ほぼ全国的に分布するとされる。
 (田の神は、山梨・長野では作神 (さくがみ) と呼ばれる)
 山の神は春に山から里に降りて田の神となり、
 特に田植え時に盛んに祀られ、稲田の生育を守る。
 秋には稲の刈上げに祀られ、再び山へと戻り、山の神となる。
 
 豊穣と里の祭りに秋を味わいつつ、戻る山を想い、すなわち人恋し
 関連は不明だが。
 
 ちなみに、北アルプスには秋神という地名があり、
 秋神川、秋神ダム、秋神高原などが知られる。
 関連は不明だが、秋神は諏訪湖の西にある。西・秋、ともに五行思想では金行。
 
 Romantic Fall.
 「ロマンチックな秋」
 幻想郷にちなんで、「幻想的な」 とも訳せるか。
 邦題の 「人恋し」 に関連させて、「恋愛の」 でも可か。
 "Fall" は秋または落葉。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (人恋しい)
 「SPACE ALC」 (romantic, fall)
 「【縮刷版】神道事典」 弘文堂 (田の神)
 「早大 岳友会」>「北アルプス開拓の先駆者、百瀬慎太郎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


秋山郷
(「Wikimedia Commons」より)



秋 静葉
 
 [キャラクター]
 
 Stage1の中ボス。あきしずは
 「寂しさと終焉の象徴
 1面ボスの穣子の姉である。
 普段は姉妹で幻想郷の秋を司っている。
 彼女らは余り戦闘は得意ではないが、人間が秋を邪魔しに来たので、
 警告もかねて少々懲らしめてやろうと思った。
 紅葉を司る程度の能力を持つ紅葉の神。

 (キャラ設定.txt より)
 
 「」 の語源のひとつに、
 紅葉などに使われる 「紅 (あか)」が転じて
 「あき」 になったとする説がある。
 
 秋の神の一柱として知られるのが
 古事記に登場する秋山之下氷壮夫 (あきやまのしたひおとこ) である。
 弟の春山之霞壮夫 (はるやまのかすみおとこ) が
 美しい女神と評判の伊豆志袁登売 (いずしおとめ;出石乙女) をモノにできるか
 兄弟で賭けをし、結局、兄は賭けに敗れた。
 弟の成功には、弟が母親に求めて得られた援助、藤の蔦による身繕いの貢献が大きい。
 兄は賭けの代償を払わず、そのことを弟は母親に訴えた。
 それを受け、母親は兄を呪詛し、兄は八年間乾き萎み病み枯れてしまった。
 このエピソードの他、古事記では兄弟が登場すると
 弟が優位に立つケースが目立つ。
 秋姉妹で妹の方がステージボスを務めることに反映されているだろうか。
 また、藤と言えば、洩矢神を下した建御名方命が術に用いたのが藤の蔓である。
 
 秋の神、特に紅葉に密接なのが竜田姫 (たつたひめ) である。紅葉の神ともされる。
 古くから紅葉の名所として親しまれた竜田山に住むとされた女神である。
 奈良県生駒郡斑鳩町の龍田神社は元々龍田比古神・龍田比女神を祀っていたが、
 後に龍田大社の風神を主祭神とし、龍田大明神を配祀している。
 
 秋静葉の名に着目すれば、
 から秋葉神社が想起される。
 全国の秋葉神社の総本社格と言われるのが秋葉山本宮秋葉神社である。
 静岡県浜松市天竜区、赤石山脈の最南端、天竜川の上流に位置する。
 火之迦具土 (ひのかぐつち) 大神を祀り、鎮火・防火の神として信仰される。
 天竜川は諏訪湖を水源として南に下り、太平洋へと注ぐ一級河川で
 本作では、スペルの 「天竜」 に関わっている。
 秋葉山本宮秋葉神社は諏訪湖の南方に位置し、
 南は五行思想において火行、火之迦具土の火。
 また、火行は赤。紅葉の赤。
 落葉で焚き火をすれば芋も焼ける。
 
 秋静葉の名に着目すれば、
 「しずは」 の音から賤機山 (しずはたやま) が想起される。
 静岡市街北部の山で、賤ヶ丘を経て静岡に至る語源でもある。
 別名、浅間山 (せんげんやま)。
 南麓に静岡浅間神社が鎮座する。
 静岡浅間神社は、神部神社、浅間神社、大歳御祖神社、3社の総称である。
 特に大歳御祖神社の主祭神、大歳御祖命はスペルの 「オヲトシ」 に関わっている。
 また、大歳御祖神社の創建は応神天皇の時代と伝えられるが、
 古事記の応神天皇の条に記されるのが先述の秋山之下氷壮夫のエピソードである。
 
 いずれも、関連は不明。
 静岡については別項 (補遺) で改めて触れる。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (賤機山)
 「Wikipedia」 (竜田姫龍田神社秋葉神社静岡浅間神社静岡
 「語源由来事典」 (秋)
 「古事記」 梅原猛著、学研M文庫
 「【縮刷版】神道事典」 弘文堂 (ハルヤマノカスミオトコ)
 「<新装普及版> 神社辞典」 東京堂出版 (秋葉山本宮秋葉神社)

 

 

 


秋葉山本宮秋葉神社
(「秋葉山本宮秋葉神社」より)


大歳御祖神社
(「静岡浅間神社」より)



葉符 「狂いの落葉」
 
 [スペル]
 
 静葉のスペル。くるいのらくよう―おちば
 Hard, Lunatic にて使用。
 紅葉を模した赤米弾と黄葉を模した黄米弾が絶えず撒かれる弾幕。
 重力に引かれる落下の様に、全体に紡錘形となるが、
 一部の米弾は画面下中央に向かって内側にカーブしてくる。
 
 ・狂い
   「気がくるうこと。常道をはずれた行いをすること。狂気。
    事物の調子・形などが普通の状態とかわること。
    常軌を逸して、ある物事に熱中すること。」
 ・落葉
   「植物の葉の落ちること。また、その落ちた葉。おちば。
    葉柄のつけ根に離層が生じて離れるが、普通
    この前に葉緑素が分解し、紅葉・黄葉を生ずる。」
 
 多量の紅葉・黄葉を模した弾幕。
 尋常でない量の葉が一度に散り落ちる、狂い落ち
 紅葉の神の手に掛かれば、自然の彩る色調も一変し、
 更には一斉に終焉を迎えさせることも可能か。
 弾幕では、一部の葉が通常の軌道を外れ、
 常軌を逸した奇妙な落ち方をする。
 シルフィホルンの様に風の影響とも考えられるが、
 一部の葉だけが歪な軌道を描くのは風の所為ではなかろう。
 
 夏が終わり、秋を迎え冬が近づくのは
 太陽の高度が次第に低くなり、日照量と気温が低くなることによる。
 木々にとっても、太陽高度の低下は、
 日照時間が短くなることで日照量も低くなることを意味し、
 その上、日光が他の樹木や障害物に遮られる確率が高まる。
 冬には葉や葉緑素が寒冷ダメージを受けてしまうということもある。
 そこで、ある種の樹木は光合成によるエネルギー産生を諦め、
 一時的にエネルギーを費してまで葉緑素を分解する。
 分解産物は冬越しのエネルギーとして幹や根に蓄えられる。
 その際、葉緑素が紫外線ダメージにより変に分解されないように、
 赤系または黄系色素を増産し、光ダメージ (光エネルギーにより発生する活性酸素)を
 軽減する防御機構を特化させる。
 光を凌ぎつつ葉緑素を効率的に分解し、後はお役御免で葉は樹木からパージされる。
 落ちた葉は秋の間または翌年春以降に分解され、栄養が土壌に供給される。
 …という考えもできるが、
 紅葉の生理的意義に関する議論は結論に達していない。
 
 ・倭文 (しず
   「古代の織物の一。穀(かじ)・麻などの緯(よこいと)を青・赤などで染め、
    乱れ模様に織ったもの。あやぬの。しずはた。しずり。しずぬの」
 ・倭文機 (しずはた
   「倭文を織る機。また、それで織った倭文。
    倭文の模様のように心などの乱れるさま」
 静葉の名に掛けて、
 倭文や倭文機の (心) 乱れる様と狂いとが掛かっているだろうか。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (狂い、落葉、倭文、倭文機)
 「Why autumn leaves turn red」 news@nature.com
 「Those Brilliant Fall Outfits May Be Saving Trees」 New York Times
 「Leaves' Fall Colors Have "Dirty" Secret, Study Finds」 National Geographic News

NORMAL


落葉
(「Wikimedia Commons」より)



秋 穣子
 
 [キャラクター]
 
 Stage1のボス。あきみのりこ
 「豊かさと稔りの象徴
 1面中ボスの静葉の妹である。
 普段は姉妹で幻想郷の秋を司っている。
 彼女は毎年、里で行われる収穫祭に特別ゲストとしてお呼ばれされている。
 収穫前に呼ばれないと、豊作は約束できないのだが、
 まぁそんな事はどうでも良いかと、彼女も指摘しない。
 豊穣を司る程度の能力を持つ豊穣の神。

 (キャラ設定.txt より)
 
 「」 の語源のひとつに、
 穀物などの収穫が 「飽き満ちる」 季節から
 「あき」 になったとする説がある。
 
 食物神・穀物神として知られる神は多い。
 スサノオの子の宇迦之御魂 (うかのみたま) 神や大年 (おおとし) 神、
 イザナギ・イザナミの子の大宜都比売 (おおげつひめ) 神、
 大年神の子の御年 (みとし) 神、イザナミの子の豊宇気比売 (とようけひめ) 神
 などなど。
 イザナミから生まれた神、または、
 山の神である大山津見 (おおやまつみ) 神の子孫が多い。
 
 ・みのり (実り、稔り)
   「草木が実を結ぶこと。成果」
 ・
   [音]ネンジン、[訓]みのるとし
   意味:穀物がみのる。穀物が一回成熟する期間。とし。
 ・
   [音]ジョウ <ジャウ>、[訓]みのるゆたか
   意味:穀物の実りがゆたかである。多く盛んである。
   解字:「禾」(=いね)+音符「襄」(=ふくらむ)。稲の実がふくらむ意。
 
 穣の字が用いられる語は、辞書を引いても 「穣穣」 「豊穣」 がある程度である。
 みのり、みのる、ゆたか、ジョウ、の音で人名に用いられる。
 また、アサヒビール社のビール 「穣三昧(みのりざんまい)」や
 米焼酎 「大地の穣(みのり)」などが知られる。
 一方、穣 (じょう) は10の28乗を示す。非常に多い、八百万。
 
 1997年から2002年にかけて長野−新潟間を中心に運行された列車に
 特急 「みのり」 があった。
 農業名盛んな地域を結ぶのに相応しい名称として命名され、
 列車のヘッドマークには長野特産のリンゴが描かれた。
 現在、「みのり」 の車体は快速 「くびき野」 として
 新井−新潟間で運行されている。
 (くびきは旧地名の頸城から。
  互いに張り合って勝負を争う意の 「軛(くびき)を争う」とは関係無い)
 関連は不明。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (みのり、稔、穣、軛)
 「Wikipedia」 (くびき野 (列車)
 「語源由来辞典」 (秋)
 「【縮刷版】 神道事典」 (ウカノミタマ、オオトシ、オオゲツヒメ、トヨウケヒメ)
 「999E ARR.」>>特急 みのり

 

 

 

 

 

 

 


特急「みのり」のヘッドマーク
(「999E ARR.」より)



秋姉妹・スペカ背景
 

 1.静止画

 秋姉妹のスペカ背景は姉妹で共通しており、
 生い茂る秋草の上にトンボが飛び交っている。
 
 秋草文様は、秋の七草 (萩・薄・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗) や
 竜胆・菊など、秋の野に自生する草花をいろいろと取り混ぜ文様にしたもの。
 秋姉妹の背景の場合は、ススキ) や
 忍草しのぶぐさ) から成る秋草文様である。
 の情景というだけでなく、細かく見ていくと、
 ススキの語源とされる説の一つに、すくすくと生い立つの意がある。
 こちらは豊穣に通ずるか。
 また、忍草はシダ類の一種だが、
 慕い思う原因となるものを意味する語でもある。
 こちらは人恋し神様の方にリンクだろうか。
 
 一方、秋草以外には、胴の細いトンボが5匹描かれている。
 古くはトンボの事を秋津あきづあきつ) と呼んだ事に由来するだろうか。
 秋、よく実った田の上空を多くの赤蜻蛉が飛び交う光景は
 日本人に馴染みの深いものである。
 日本書紀では、国土を一望した神武天皇がその形状をトンボに例えており、
 日本の別称の中に、秋津島がある。
 大倭豊秋津島 (古事記)、大日本豊秋津州 (日本書紀) が
 日本神話に見える日本を指しての呼称である。
 他にも、豊葦原千秋長五百秋之水穂国 (古事記) や
 豊葦原千五百秋瑞穂国 (日本書紀) の呼称があり、
 秋と豊穣に密接な関連がうかがえる。
 
 トンボについては、その語源に数説あり、
 飛ぶ棒や飛ぶ羽から転じたとする説の他、
 トンボの形状を稲穂に見立てた、飛ぶ穂から、というものがある。
 稲穂とトンボの取り合わせは上述の様に自然なペアだが、
 トンボもまた豊穣にリンクすると言えることに加え、
 オヲトシ (穂落とし) にも関連付けができそうである。

 
 2.スクロール画

 秋姉妹スペカ背景は二枚の画像が重ねられている。
 上のレイヤーとなっている、蜻蛉と秋草文様は
 文様の描かれた部分が透過するように処理されており、
 下のレイヤーでスクロールする画像を垣間見ることが出来る。
 
 下の画像に描かれているのは、花唐草と呼ばれる文様である。
 唐草文様であれば、一般には風呂敷の柄としてよく見かける
 蔓性の植物として知られているが、
 その植物が唐草である。
 常に成長するような無限の発展性を秘めた唐草は、
 もとは遠くギリシアやローマの類似の植物文様からきたとも言われ、
 やがては梅や菊など蔓を持たない花までも巻き込んで発展した。
 花唐草もその一種で、想像上の花を付けた繊細な唐草が描かれる。
 実在しない、幻想の植物、幻想の花、と言える。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (忍草)
 「Wikipedia」 (トンボ#文化日本#別称・外国語呼称唐草模様
 「語源由来辞典」 (ススキ、トンボ)
 「日本・中国の文様事典」 (秋草、蜻蛉、唐草)
 


「薄に虫文蒔絵硯箱」
(「日本・中国の文様事典」 より)


「花唐草七曜卍花クルス文螺鈿箱」
(「日本・中国の文様事典」 より)



稲田姫様に叱られるから
 
 [音楽]
 
 秋穣子のテーマ。いなだひめさまにしかられるから
  〜 道中に比べるとテンポの良い曲です。
    収穫祭というイメージと、未熟で能天気な神様のイメージを入れてみました。
    こんな緊張感のない曲でゲームが出来るのは東方だからこそ、
    普通はこんな軽い曲でボス戦ってのは難しいもんです。
    短いループですが、ボス戦自体も短いしね。 〜

 (神々の休憩所 より)
 
 稲田姫はクシナダヒメのこと。
 クシナダヒメは記紀神話に登場し、古事記では櫛名田比売、
 日本書紀では奇稲田姫と表記される。
 稲田の女神または巫女と解釈される。
 テナヅチ・アシナヅチ (ともにオオヤマツミの子) の8人の娘の一人。
 8人の娘たちは毎年一人ずつヤマタノオロチに食われており、
 スサノオが出雲に降り立った時はいよいよ
 最後の娘、クシナダヒメが食われてしまう年であった。
 スサノオはクシナダヒメを妻として貰い受けることでヤマタノオロチ退治を請け負った。
 ヤマタノオロチ退治後、スサノオは出雲に宮を定め、クシナダヒメを妻とした。
 「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」 は
 その結婚の時の歌であり、和歌の起源と尊ばれる。
 スサノオとクシナダヒメとの間には、オオクニヌシの祖となる
 ヤシマシヌミが生まれた。
 
 稲田姫に叱られるとはどのような理由だろうか。
 例えば新潟では田の神様の日には田に入らないなどの禁忌も知られるが、
 人に対する禁忌で、豊穣神に対する禁忌というわけではない。
 特に、田植えに関する禁忌に対して刈入れに関する禁忌はほとんどない。
 豊穣神が叱られるとすれば、やはり
 稔りが不十分であることや稔りが遅れることが考えられるだろうか。
 田の神は、地方の伝承により様々ながら
 2月3月頃に田に下り、10月〜12月頃に山に戻る (天に上る) とされる。
 収穫の祭日が早い時期に固定されている所で
 稔りが田の神の去る日に遅れるケースもあるかもしれないが、
 豊作か不作かに寄与する部分の方が豊穣神の働きとして大きいと思われる。
 もちろん、冷夏や日照不足、旱魃、強風など
 豊穣神が防ぎきれない部分もあるが、
 「収穫前に呼ばれないと、豊作は約束できない」 ってことで
 極端に言えば一個神の気持ち一つで豊作・不作を左右することの無い様に、
 という点でお叱りがあるのかもしれない。

 
 参考
 「Wikipedia」 (クシナダヒメ田の神
 「【縮刷版】神道事典」 (古典の神)
 「怪異・妖怪伝承データベース」 (田の神)
 「心の幻」>迷信の世界 >禁忌(其の九)

 

 

 

 

 


稲田
(「Wikimedia Commons」より)



秋符 「オータムスカイ」
 
 [スペル]
 
 穣子のスペル。
 Easy, Normal にて使用。
 穣子から放射された青米弾が刻々変化する。
 空を思わせる青米弾が、青と赤の二色に分裂し秋色を含む。
 更に一段分裂し、自機に向けて降り注ぐ。
 
 ・autumn
   「秋、紅葉、秋色。人生の秋、衰え始める時期、初老期」
 ・autumn sky
   「秋空」
 ・秋空
   「秋の、さわやかに澄みきった空」
 ・秋の空
   「秋の晴れて高く見える空。秋天。
    (曇ったり晴れたり定めないことから)心の変わりやすいことのたとえ」
 
 Autumn Sky.
 「秋の空」
 秋の空は、移動性低気圧と台風の到来に伴い、
 ころころと変化する。
 その変化しやすい様子を表す弾幕。
 
 秋晴れの空は高く、澄みきっている。
 空が高いと感じるのは、視程の良さと雲の高さによる。
 湿気の多い夏の空や黄砂などが飛来する春の空に比べよく澄んでいる。
 また、夏の積雲や積乱雲が低いことに比べて
 秋はそれらの雲が発生しにくく、より高空の高積雲や巻積雲が見える。
 冬の雲も日本海側からの冷たい空気により形成されるので低い。
 の語源の一つに、
 空の色が 「清明(あきらか)」 な時期から
 「あき」 となったとする説がある。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (秋空、秋の空)
 「SPACE ALC」 (autumn, autumn sky)
 「語源由来辞典」 (秋)

NORMAL



秋符 「秋の空と乙女の心」
 
 [スペル]
 穣子のスペル。あきのそらとおとめのこころ
 Hard, Lunatic にて使用。
 オータムスカイの上位版。
 オータムスカイの強化に加えて
 黄中玉の自機照準を中心とした放射が追加される。
 
 ・女心と秋の空
   「変わりやすいことのたとえ。古くは「男心と秋の空」」
 
 秋の空の変わりやすいことは前項参照。
 同じく変わりやすいとされる女心 (特に、女性が男性を思う心を言う) の追加。
 自機狙い中玉が乙女の心か。
 自機を含めて多方向に飛ばされる。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (女心)

HARD



豊符 「オヲトシハーベスター」
 
 [スペル]
 
 穣子のスペル。
 Easy, Normal にて使用。
 収穫期の稲葉を模した細身の黄色レーザーブレードが
 穣子直近周囲から多源放散され、赤米弾がばら蒔かれる。
 
 ・harvester
   「刈取り機、収穫者」
 
 オヲトシ大年神のオオトシ (オホトシ) を示すものと思われる。
 古事記では大年神、延喜式では大歳神と記す。
 オオヤマツミの娘である神大市比売 (かむおおいちひめ) とスサノオとの子。
 兄弟神の宇迦之御魂神や御子の御年神とともに穀物守護の神とされる。
 ・おおとし大歳・大年) オホ・・
   「大みそか。また、大みそかの夜。豊作」
 
 トシとは穀物や稲、稲が稔ることを意味する。
 「秋穣子」 の項にも広辞苑を引いたが、の訓に 「みのる」 と 「とし」 がある。
 稲がトシと呼ばれるようになった由来は、
 収穫までの期間が早く過ぎるため 「疾し」「敏し」から、
 稲を表す 「田寄(たよし)」から、
 富を表す 「と」 と食物を表す 「し」 の収穫の意味から、など諸説ある。
 いずれにせよ、稲や穀物の 「とし」 から
 穀物の収穫サイクルを意味する時間の単位を 「年」 と言うようになったとされる。
 
 漢字の年は 「禾(=いね)」+音符 「人」 から、
 漢字の歳は 「戉(=まさかり)」+「歩(=あゆみ)」から成り立つとされる。
 後者は、刃物で作物を刈り取ってから次に刈り取るまでの時のめぐりの意となる。
 
 しかし、大歳神オヲトシと表記するのは一般的ではない。
 ア行のオとワ行のヲで、アワ、五穀の一、イネ科の粟とのシャレか。
 また、オオトシは 「穂落とし」 から収穫の意とする考えがあるが、
 これを取り入れて、「落 () とし」 の意を込めているのだろうか。
 
 大歳 Harvester.
 「大歳の収穫神」
 上記のうち、「穂落とし」 と、漢字としての 「歳」 を取り入れれば、
 大歳神は穀物神の中でも収穫の意味合いが色濃い神とも解釈できる。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (大歳、稔、年、歳)
 「SPACE ALC」 (harvester)
 「Wikipedia」 (年神
 「語源由来辞典」 (年)

NORMAL



豊作 「穀物神の約束」
 
 [スペル]
 
 穣子のスペル。こくもつしんのやくそく
 Hard, Lunatic にて使用。
 オヲトシハーベスターの上位版。
 レーザーブレードがレーザー照射に変化。
 
 ・約束
   「くくりたばねること。ある物事について将来にわたって取りきめること。
    契約。約定。種々のとりきめ。規定。」
 ・豊作
   「五穀のよくみのること。作物のできのよいこと。万作」
 
 人間が穀物神に祈願し、それに穀物神が応えるという約束が予めなされる。
 それに基づいての豊作。ということがスペル名から考えられる。
 また、刈入れた稲をくくり束ねることとのシャレもあるだろうか。
 
 初春の御田植祭 (田遊び) は全国の神社で執り行われる神事である。
 また、律令国家の恒例祭祀の一つに祈年祭 (きねんさいとしごいのまつり)、
 その年一年の豊穣が祈請される。
 それに穀物神が応えての 「豊作」。
 ちなみに、豊穣に感謝しての収穫祭としては、
 祈年祭に対置される新嘗祭 (にいなめさい) が宮中や全国神社で行われる。
 
 穣子が里にお呼ばれされているのも収穫祭の方だが、
 初春の祈年祭の頃は冬のせいでまだ暗いのか、秋でないためか、
 そちらにはお呼ばれされていないっぽい。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (豊作、約束)
 「【縮刷版】神道事典」 (祈年祭、新嘗祭、田遊び)

HARD



笑止千万、不届き千万
 
 [会話]
 
 霊夢ストーリー、Stage1の会話。しょうしせんばん、ふとどきせんばん
  霊夢 「あれ? 何だか美味しそうな匂いが……」
  穣子 「巫女の癖に神様を食べようだなんて
       笑止千万、不届き千万!」
 
 ・笑止千万
   「はなはだ気の毒なこと。また、たいそう笑うべきこと」
 ・不届き
   「道または法律にそむく行いをすること「―千万」」
 ・千万せんばん
   「数量のきわめて多いこと。状態のさまざまなさま。
    (名詞の下に付いて)程度の甚だしいこと、この上もないこと」
 ・千万 (せんまん
   「万の千倍。非常に大きい数」
 ・千万 (ちよろず
   「せんまん。限りなく多いこと」
 
 千万せんばん)と千万ちよろず)のシャレ。
 程度の甚だしいことと八百万の神の八百万とのシャレであろう。
 八百万は約千万。
 数が多い意味ではやおよろずとちよろずはイコールである。
 万葉集の第167番歌には以下の表現がある。
 「天地の 初めの時 ひさかたの 天の河原に 八百万 千万神の 神集ひ 集ひいまして

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (笑止千万、不届き、千万)
 「UVa Library Etext Center: Japanese Text Initiative」 (万葉集)



生焼き芋
 
 [会話]
 
 霊夢ストーリー、Stage1の会話。なまやきいも
  霊夢 「誰が食べるって言ったのよ
       でも、美味しそうな匂いは貴方の匂い?」
  穣子 「神様たる者、身に纏う香りも気を付けないと
       あ、ちなみに私は豊穣の神ね」
  霊夢 「うーん、生焼き芋の香り」
  穣子 「収穫したてのお芋は私の香水
       巫女に食べられてたまるもんですか!」

 
  あれはテキストを他の人に見てもらったら
  (中略)生の焼き芋というものがそもそも存在しないだろうって。
  バグじゃなくてそれはネタなんです、ギャグなんですって返しました(笑)。
  生の焼き芋っていうのは生の芋ですよね。

 (「キャラ☆メル」vol.3、東方風神録インタビューより)
 生焼き芋とは生の芋。
 穣子も 「収穫したてのお芋」 と言っている。
 
 一方、戦闘後は 「こんな所で芋焼いてる場合じゃないわ」 とあり、
 静葉の撃破が落葉焚き、それに続く穣子の撃破が焼き芋、という例えか。
 
 また、長野県北信地方の郷土料理に 「いもなます」 がある。
 千切りにしたジャガイモを炒めつつ酢を入れ、
 さらに砂糖と少量の塩で味を整えつつ、
 汁がなくなり芋が透き通るまで炒めて出来上がり。
 「なます」 と言えば普通は生の魚介や生肉、野菜を酢などであえた料理である。
 「なます」 と言いつつ火を通す 「いもなます」 を踏まえての
 「生焼き芋」 のギャグであろうか。
 まぁ、「炒めなます」 で火を通すなますは一般的ですが。

 
 参考
 「キャラ☆メル vol.3」 一迅社
 「Wikipedia」 (いもなます



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Acknowledgements & References

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