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Acknowledgements & References

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神々の疵痕
 
 [タイトル]
 
 Stage2のタイトル。かみがみのきずあと
 妖怪の山に向かう、その途上の暗く深き樹海。
 
 ・疵痕
   「傷のついたあと、傷の治ったあと。被害や損害などを受けた影響。
    心などに受けた痛手のあと」
 
  きっと妖怪の山に住んでいる妖怪たちが厄を流したからですよ。
  イメージ的には3面にあった川の延長、下流ですからね。
  3面はあんなに華やかなのに、その下はすごく暗くなっているんです。

 (「キャラ☆メル」vol.3、東方風神録インタビューより)
 
 妖怪の山から負の側面が流れ着く場所。
 人々から忌み嫌われる厄。
 雛はそれらを神々のもとへ届ける仲介者である。
 
 疵痕は厄災を指すか、厄災により人間が損害を被る事に心が痛んでのものか、
 あるいは、人に知られない暗い場所で厄を一手に引き受ける仕事や
 人間を追い返す所為に心が傷ついてのものだろうか。
 
 雛のスペルにも疵・創はよく現れる。

 
 参考
 「Yahoo!辞書」 (疵痕)
 「キャラ☆メル vol.3」 一迅社



妖怪の樹海
 
 [ステージ]
 
 Stage2。ようかいのじゅかい
 天狗や河童が妖怪社会を形成する妖怪の山。
 謎の 「山の上におわす神様」 を目指して山に入る、その途上。
 妖怪の山まではまだ少しかかる麓。



厄神様の通り道 〜 Dark Road
 
 [音楽]
 
 Stage2のテーマ曲。やくじんさまのとおりみち 〜 ダーク・ロード
  〜 2面のテーマです。1面とは対照的に暗めな曲です。
    良い感じに西洋風とも東洋風とも取れる曲だと思います。
    ボスがゴスロリ風なので、こんな感じの曲になりました。
    少しミステリアスなイントロから、視界が開けるサビへと移行する部分は、
    かなり気持ちが良い物です。 〜

 (神々の休憩所 より)
 
 ・厄神
   「災厄を降すという悪神」
 ・
   「わざわい。災難。よくない巡り合わせ。疱瘡のこと」
 
 災厄をもたらす神として一般的に人々から忌まれるのが厄神である。
 世のあらゆる禍事、災いはマガツヒ神のはたらきによるとされる。
 古事記には、イザナギの禊の際、黄泉国の穢れから成った神として
 八十禍津日 (やそまがつひ) 神と大禍津日神とが知られる。
 また、民間に密接な行事としてはオコト八日、事八日が知られる。
 旧暦12月8日や2月8日にオコトの神の御使いが家々を回り、
 履物などがしまわれていないと帳面に記され、後々厄を貰うことになる。
 (これは一例。地方により名称や内容は異なる)
 2月8日には厄神の他、Stage1でも挙げた山の神 (田の神) など
 様々なモノが去来する。
 大眼、一つ目などと呼ばれるモノは厄神の使いまたは厄神として
 神々の先鞭を務め、人々の居住まいを正す。
 また、神の去来に対する忌籠、百姓仕事の貴重な休日などの
 役割が示唆される行事である。
 
 一方、雛の場合は厄払いで払われた厄を集め、
 自身の周囲にため込んでいる。
 雛の種族も厄神様と明記されている。
 しかし、自らの意思で厄を人々に与えるような厄神とは異なり、
 下手に接近すると雛の周囲の厄が降りかかるという、
 どちらかといえば間接的な厄神である。
 厄神様の辿る道は、暗く重く、迂闊に立ち入れば
 不幸に見舞われがちな禁足地であろう。
 
 曲名は、わらべうた 「とおりゃんせ」 の歌詞に含まれる
 「天神さまの細道」 にちなんだものだろうか。
 雛はご用の無い者どころか何人たりとも通しはしないが。
 
 Dark Road.
 「暗路」
 暗き路。
 明度も気持ちも運気も暗い。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (厄神)
 「Yahoo!辞書」 (厄)
 「【縮刷版】神道事典」 弘文堂 (ヤソマガツヒ)
 「日本妖怪大事典」 村上健司編著、水木しげる画、角川書店 (ミカリ婆)
 「怪異・妖怪伝承データベース」>検索 >(厄神、厄)
 「もっけ 第3巻」 熊倉隆敏著、講談社 (#18 ダイマナコ)



鍵山 雛
 
 [キャラクター]
 
 Stage2のボス。かぎやまひな
 「秘神流し雛
 悲劇の流し雛軍団の長である。
 厄払いで払われた厄を集めては、ため込んでいく。
 その為、彼女の周りには素人目にみても判るぐらいの厄が取り憑いている。
 彼女の近くでは、如何なる人間や妖怪でも不幸に会う。
 ただ、彼女自体は決して不幸にはならない。
 あくまでも周りにため込んでいるだけである。
 そして、厄が再び人間の元に戻らないように見張っている。
 厄をため込む程度の能力を持つ厄神様。

 (キャラ設定.txt より)
 
 の名は流し雛にそのままちなんでいるのであろう。
 流し雛は、現在一般的な雛祭の源流である。
 また、現在も各地に残っている風習でもある。
 雛祭、桃の節句と一般に呼ばれる三月三日の行事は
 もとは中国の上巳 (じょうし) に由来する。
 中国では、この日に水辺に出て飲酒し、不浄を払い、
 招魂の行事が行なわれていたといわれる。
 日本でもはやくから中国より伝えられており、曲水の宴がなされていた。
 平安時代には上巳の祓いとして、陰陽師による祓いと
 人形 (ひとがた) で身体を撫ぜて、これを川に流す行事が行なわれていた。
 人形は禊や祓の際に用いる人間の身代わりであり、
 人を模した形の紙で身体を撫でる、息を吹きかけるなどして
 罪や穢れ、災いを移し、川に流す。
 
 鍵山は辞書に記載は無いが、
 鍵の機能として重要な、ギザギザの部位を指すことがある。
 また、愛媛県鬼北町や埼玉県入間市の地名に鍵山 (上鍵山・下鍵山) がある。
 特に埼玉県は雛人形の生産高日本一である。
 
 秘神は 「ひしん」 と読むか。
 秘められたものを司る神、あるいは
 そのため神話に表立って現れることが少なく秘された神、だろうか。
 女神転生シリーズでは悪魔の族名の一つであり、
 日本の神話伝承からはアメノフトタマ、エビス、カンバリなどが登場する。
 
  忌部氏の祖とされ記紀神話にフトダマとして現れるアメノフトタマは
  天目一箇神と関連が見られ、天目一箇神は暴風・台風との関連も指摘されている。
  大眼、一つ目は厄神 (の使い) であること、
  台風襲来の多い二百十日などは農家にとって厄日であることとも
  結び付けることが出来るだろうか。
  台風は一つ目で、左回りにくるくる回転している。
  また、エビスは蛭子 (ひるこ) に由来する。
  日本神話でイザナギ・イザナミの間に最初に生まれた子、蛭子命は
  不具の子であったため、葦の舟に入れられ流し捨てられたと伝えられる。
  中世以降、恵比須として尊崇されてきた。
  いずれも関連は不明。
 
 諏訪湖から西 (西北西) の岐阜と富山の県境に人形山がある。
 飛騨高地に属し、飛騨山脈の西方である。
 飛騨の語源には、山々の連なりがヒダを想起させるためとする他、
 ヒナ:都から遠い地、いなか) からとする説もある。
 人形山から北方、富山側へ川を下ると、
 白川郷とともに世界遺産に登録されている五箇山に至る。
 五箇山には流刑小屋がある。
 ここからさらに海へ向けて下ると、富山県の砺波に至る。
 砺波には、一種の憑き物である人形ひんな) 神が伝わる。
 関連は不明。
 
 また、鍵山雛の名については次項も参照されたい。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (鄙、えびす)
 「Wikipedia」 (フトダマ天目一箇神ヒルコ
 「【縮刷版】神道事典」 弘文堂 (形代、上巳、フトダマ)
 「G's Laboratry」>悪魔召喚研究室 >真・女神転生 悪魔事典
 「日本妖怪大事典」 角川書店 (人形神)

 Special Thanks!
 「胡蝶の見果てぬ夢」>文蔵 >東方民譚集 >「流竄の人形」「人形送りの夢」
 「Ewig Leere」>Memoire >「鍵山 雛考察」


流し雛
下鴨神社の歳時記より(改変))



スペカ背景・演出
 
 
 1. 雛スペカ背景・回転する画像
 
 雛スペカ背景では3つの渦模様が絶えずぐるぐると回転している。
 雛自身がくるくると回転する他、弾幕においても
 弾幕の描く模様や弾源の巡り方が渦状であることが多い。
 スカートの 「」 の字もぐるぐるした形状に描かれている。
 「キャラ☆メル Vol.3」 の風神録インタビューにて、
 流し雛として 「人形っぽさ」 の表現から
 くるくる回転するようになったとZUN氏は語っている。
 
 運命の輪、ホイールオブフォーチュンの表す幸運と不運の回転、
 厄の発生と回収、神々への引渡しという繰り返される循環、
 流し雛の川の流れに翻弄される様、などが
 ぐるぐるの元として考えられる。
 
 また、ここに台風・大風・暴風も意識されているだろうか。
 二百十日は射命丸文のスペルだが、
 二百十日、二百十日などの、天候による厄難が多いとする日を
 特に農家などで 「厄日」 と言う。
 台風襲来と厄。

 2. 雛スペカ背景・静止画像
 
 雛スペカ背景の静止画像の方に着目すると、
 画面下部には波が、画面中央やや上方には耳が異常に長い動物が描かれる。
 画面左右端にもおそらく同じ動物の一部が描かれている図であろう。
 
 これは 「波兎蒔絵旅櫛笥なみうさぎまきえたびくしげ)」 に用いられた文様である。
 荒ぶる波間を兎が跳ぶデザインは江戸初期に流行したもので、
 謡曲 「竹生島」 の一節に由来する。
  月海上に浮かんでは兎も波を走るか おもしろの島の景色や
 
 波間を跳ぶ兎ということで因幡の素兎が想起され、
 洩矢諏訪子の鳥獣戯画との関連もまた想像されるが、
 直接的な兎のイメージはあまり関わらない。
 そもそも波兎蒔絵文様は、海 (湖) に映り波間に煌めく多数の月光を、
 海上をいきいきと跳ね回る兎の群れに例えたものである。
 もちろん、月と兎や因幡の素兎も背景に見え隠れするが、
 意味合いは月光の煌めく風雅な景色である。
 
 カギヤマヒナに隠された月要素である。
 その心は…
 ポリネシアの月の女神・ヒナ
 あるいは、ハワイ語で月を意味するマヒナ、であろう。
 また、好運を言うツキもあるだろうか。

 3. 道中演出
 
 雛はStage2を通して画面中に出演している割合が高い。
 これはご存知の通り、道中での威嚇攻撃によるものである。
 妖怪の樹海に侵入し、妖怪の山を目指す自機に対し、
 警告の意味を込めて雛は自身を取り巻く厄から
 次々に雑魚敵を発生させる。
 一般に毛玉と呼称される雑魚敵は、
 特に前半は全方位弾を打ち出す。
 このあたりは花火を想起させる。
 花火と言えば、江戸の花火屋の屋号に由来する掛け声、
 「玉屋ー!」 「鍵屋ー!」 である。
 本演出は、カギヤマヒナに隠された花火要素、
 カギヤ、であろうか。
 
 ちなみに、諏訪湖は諏訪湖祭湖上花火大会で有名である。
 使用される花火の数は日本第2位であり、
 東日本として、また湖上での花火大会として見れば最大である。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (厄日)
 「Wikipedia」 (花火
 「月の本」 林完次著、角川書店 (月の神々)
 「artscape」>Museum Goods Report // 東京国立博物館_今月(05年08月)のおすすめ
 「YELLOW DOG STUDIO」>Shop identity > 03 > Concept

 

 


波兎蒔絵旅櫛笥
(「YELLOW DOG STUDIO」より)

 



雛外観
 
 
 1. 厄
 
  〜 スカートの模様もよく見と「厄」の字になっているんですよ。
    ただのグルグルに見えますけど、
    「厄」の字をぐるぐるに描いただけなんです。 〜

  (「キャラ☆メル」Vol.3、風神録インタビューより)
 がぐるぐるなデザインにされているのは
 前項の 「スペル背景・演出」 にて述べた様な回転関連と想像される。

 2. フラクタル
 
 一方、スカートには 「厄」 のぐるぐるの他にも模様がある。
 スカートのフリルに見られるものと同じ形が、
 スカートの赤と暗褐色の二色を分かち、
 赤い側に模様が突出したり、暗褐色側に模様が突出したりしている。
 この模様は、フラクタル図形の一つの
 コッホ曲線を元にしたデザインであろうか。
 フラクタルとは、自己相似性を特徴とする図形、構造を言う。
 図形のどの部分をとってみても全体に相似な部分から成っており、
 その図形の一部分を拡大しても同じ図形が現れてくる。
 さらにその一部分を拡大してもまた同じ、という具合に
 延々部分拡大を続けても相似な図形が無限に現れる。
 コッホ曲線はフラクタルの一例で、
 線分を三等分する2点を頂点とする正三角形を作図し、
 さらにそのそれぞれの線分について同様の作図を無限に繰り返して
 得られる図形の名称である。
 幸運と不運の間で回転する運命の輪、
 発生と回収を延々繰り返す厄の巡り、
 その無限の連環を暗示する模様なのだろうか。

 3. 髪型
 
 雛の髪型は、後ろ髪を肩の上から身体の前に流し、
 胸元で束ねた特徴的なものである。
 
 これは欧州の諺、幸運の神またはチャンスの神には前髪しかない、に
 ちなむだろうか。
 幸運が巡って来たと思っても、その一瞬を逃すと
 あっという間に過ぎ去ってしまう。
 追いかけようとしても後ろ髪がないので捕まえるのは困難である。
 だから、幸運が巡ってきた時は逃さずに掴み取らなければならない。
 ということである。
 
 この前髪のみで後ろ髪は無いという特徴は、
 ギリシア神話の好機の神カイロスのものである。
 カイロスは足に翼を持つ俊足の美少年で、
 輝かしい姿で近づいてくるが、あっという間に駆け去ってしまう。
 後ろ髪が無いので、過ぎ去った後に捕まえることは出来ない。
 
 この好機の神カイロスの特徴が幸運の女神テュケと混同され、
 幸運の神には前髪しかない、という
 女神には酷な誤った特徴が付けられることになったと言われる。
 ギリシア神話のテュケはローマ神話のフォルトゥナに当たる。
 フォルトゥナと雛の他の関連については、
 悪霊「ミスフォーチュンズホイール」 参照。
 
 雛の場合は後ろ髪を身体の前で結っている。
 これは、カイロスとテュケの混同を踏まえた上で、
 前髪しか無い設定はカイロスに戻しつつも、
 ツキを逃さず捕まえるという点では
 「髪」 が前にある方が良いと考え、デザインされたもの
 と妄想することもできる。

 4. リボン
 
 雛は赤いリボンを身に付けている。
 頭頂部に結ばれた形状や頭の両側に殊更長く流れるリボンは
 贈り物のラッピングに使われるリボン装飾を思い起こさせる。
 流し雛としての 「人形」 の要素から
 「物」 としての装飾が凝らされているとも言えるか。
 また、リボンの一部には赤い文字が施され、
 呪符めいた印象も受ける。
 「厄」 を運ぶ雛の禍々しい一面を強調するもの、
 というわけではなく、おそらくは、
 厄災を封じる物 (または象徴) としてのリボンなのであろう。
 雛の髪の色は、スカートの厄のぐるぐる模様の色と同じである。
 厄が他に漏れない様に、というため込まれた厄の封印の見立てか、
 神々に厄を送り届けることの見立てか。
 スカートの厄の字に3つのバツ印が施されていることからも、
 厄を封ずる意味合いなのであろう。(3は聖数)
 左手にもリボンを巻いているが、
 こちらはインド・イスラム圏で
 左手が不浄の手とされることに基づくだろうか。

 
 参考
 「キャラ☆メル vol.3」 一迅社
 「
Wikipedia」 (コッホ曲線フラクタル左利き
 「テオポリス」>Catalogue of Gods >テュケ
  同上 >Theopolitan Museum >ブイヨン、ピエール《子供と運命の女神》

 

 


コッホ曲線
(「Wikipedia」 より)

 

 

 

 


「The Boy and Fortune」 より、
運命の女神フォルトゥナ
(「テオポリス」 より)



運命のダークサイド
 
 [音楽]
 
 鍵山雛のテーマ。うんめいのダークサイド
  〜 鍵山 雛のテーマです。
    ゴスロリ風と言う事で、もっと痛い感じにしようかと思ったのですが、
    自分の好みとゲーム全体の事を考えていたら
    こんな感じに落ち着いてしまいました。
    ま、2面のボスだしね。少しくらい頭が弱そうな方が……。 〜
 (神々の休憩所 より)
 
 ・dark side
   「暗黒面、邪悪な側面、影の側面」
 
 運命の Dark Side.
 「運命の負の側面」
 悪運。逆運。衰運。頽運。薄運。非運。否運。悲運。微運。不運。厄運。

 
 参考
 「SPACE ALC」 (dark side)
 「Yahoo!辞書」 (運:後方一致検索)



厄符 「バッドフォーチュン」
 
 [スペル]
 
 雛のスペル。
 Easy, Normal にて使用。
 雛から厄が放たれる。
 厄は雛の周囲を旋回した後、角度を緩やかに変え飛び去って行く。
 その経路上には赤棘弾が射角を変えつつ設置されてゆく。
 赤棘弾はしばらく後に厄の経路外側に向けて動き始める。
 
 ・bad
   「悪い、ひどい。苦手で。体の具合が悪い。不良な、偽の。」
 ・fortune
   「富、財産。(幸)運。運勢、運命」
 ・bad fortune
   「不運」
 ・
   「わざわい。災難。よくない巡り合わせ。疱瘡のこと」
 
 Bad Fortune.
 「厄」
 直訳で 「不運」 だが、意訳。
 運命のダークサイド。
 悪い巡り合わせ。
 すなわち、厄。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (厄)
 「SPACE ALC」 (bad, fortune, bad fortune)

NORMAL



厄符 「厄神様のバイオリズム」
 
 [スペル]
 雛のスペル。やくじんさまのバイオリズム
 Hard, Lunatic にて使用。
 バッドフォーチュンの上位版。
 設置される赤棘弾が多WAYの弾塊となる。
 
 ・厄神
   「災厄を降すという悪神」
 ・バイオリズム
   「生体に見られる諸種の機能や行動の周期性。1日周期・1年周期および
    その中間のものなどがある。睡眠と覚醒とは、約1日を周期とする
    バイオリズムの典型。」
 
 バイオリズムとは、もともとはドイツの医師、ヴィルヘルム・フリースが提唱した、
 身体、感情、知性における周期的パターン変化の概念である。
 生誕の日を基準とし、三成分は同じ振幅かつ異なる周期の正弦波として
 グラフ上に描かれる。(それぞれ23、28、33日の周期)
 統計学的に有意なデータや科学的な証明は伴っておらず、疑似科学である。
 
 近年では、単に体調の波であるとか月経周期の隠語的表現、
 あるいは生命活動において認められる周期性を言う。
 しかし、一昔前ほどポピュラーではなく、
 また、特に1日周期のリズムの場合は概日リズム、サーカディアンリズムと呼ぶ。
 
 厄神様の Biorhythm.
 「厄神様の生物周期」
 厄神様の来訪や、人々が被る厄災の周期性を言うだろうか。
 バイオリズムという表現から、厄神様を人間的に見たり
 人間の身体・成長の特定のタイミングで降りかかる厄を指したりのニュアンスか。
 
 まず、厄神に注目すると、
 「厄神様の通り道」 で述べた
コトの神やその使いが挙げられる。
 地方により性質や伝承は異なるが、
 農事暦に合わせて、旧暦の12月8日及び2月8日という特定の日に
 1年周期で来訪する厄神である。
 
 次に、に着目すると、
 特定のタイミングで訪れる厄災として、厄年がよく知られている。
 数え年で男性は25、42、61歳、女性は19、33、37歳が厄年とされる。
 この前後を含めた特定期間には凶事や災難に見舞われやすく、
 十分な警戒を要し、厄除けも行なった方が良いなどとする風習である。
 人間の一生という一つの時間枠の中で、定まった時期に訪れる厄とも言えよう。
 
 ロクサン (六三、六算) もまた、周期を伴う厄神と考えることができるだろうか。
 ロクサンという神は人間の体に毎年場所を変えて宿り、
 その場所が病み易くなるとされるモノである。
 年齢を9で割った余りがロクサンの宿る部位であり、
 九 (割り切れたとき) は頭、五七肩にて二六脇、三一足に四腹、八股と言う。
 この厄に気付かないとあちこちが悪くなるとされる。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (厄神、バイオリズム)
 「Wikipedia」 (バイオリズム厄年
 「怪異・妖怪伝承データベース」>検索 >(ロクサン、六三)
 「もっけ 第5巻」 熊倉隆敏著、講談社 (#27 ロクサン)

HARD


バイオリズムチャート
(「Wikipedia」より)



疵符 「ブロークンアミュレット」
 
 [スペル]
 
 雛のスペル。
 Easy, Normal にて使用。
 雛の周囲に放たれた厄が弾源となり、赤棘弾を撒く。
 赤棘弾は軌道や速度差で雛を中心とした模様を描き出し、
 やがてそれぞれの方向へと散開する。
 
 ・broken
   「壊れた、損傷している。衰弱した。半端の」
 ・amulet
   「お守り、魔よけ」
 ・きず
   「(身体の)きず。欠点。過失」
 
 お守りは一般に、錦などの美麗な布製の袋に入れられた守札である。
 神霊またはその超自然力を示す象徴物などを木、金属片などに記したもの。
 神社などで発行され、主として
 病難除、家内安全、安産、雷除、虫除、交通安全、
 商売繁盛、水難除、厄除などの御神徳、御加護を受けるとされる。
 身につけたり、持ち物に提げるなどして心身を守る。
 お守りは持ち主の日常生活における罪穢れや
 引き受けていると表現されることもある。
 そのため、一年経ったお守りは神社に返し、
 その際に清らかな新しいお守りを受けるよう言われたりする。
 
 粗末に扱ったのでなければ、お守りが壊れた場合は
 お守りが大きな厄災を防いでくれたものと一般的に解釈される。
 壊れたお守りは、一年間罪穢れを受け続けたお守り同様、
 携行して得られる守護効果は弱い物とみなされる。
 
 Broken Amulet.
 「壊れたお守り」 「壊されたお守り」
 単語からはどちらとも解釈可能である。
 上位版が 「壊されたお守り」 であるため、
 本スペルは両方または 「壊れたお守り」 の意か。
 
 お守りのガードを打ち破るほどの厄攻撃、というよりは、以下の意味合いか。
 壊れたお守りを使い続けることがお守りを粗末に扱っていることになり、
 霊威の衰えたその疵に厄や魔が入り込むため、所有者は災厄に見舞われる。
 その、厄。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (疵)
 「SPACE ALC」 (broken, amulet)
 「Wikipedia」 (お守り
 「【縮刷版】 神道事典」 弘文堂 (神札・守札)

NORMAL


開運厄除お守り
築土神社のお守りより)



疵痕 「壊されたお守り」
 
 [スペル]
 
 雛のスペル。こわされたおまもり
 Hard, Lunatic にて使用。
 ブロークンアミュレットの上位版。
 
 ・疵痕
   「傷のついたあと、傷の治ったあと。被害や損害などを受けた影響。
    心などに受けた痛手のあと」
 
 壊れた、ではなく、壊された
 前者は不注意やアクシデント、ないしは自然な破壊のニュアンスである一方、
 後者は他者、他要因の強い関与により破壊に至ったニュアンスである。
 お守りを破壊するほど強烈な他者の呪詛を想像すると
 非常に高威力に思えるが、「壊されたお守り」 と、
 「
お守り」 に主眼が置かれているため、
 強烈な呪詛などは本スペルの表現するところではないと考えられる。
 ブロークン (壊れた) アミュレットのに巣食った
 さらに厄や罪穢れを呼び込み、増長し、
 不自然で異常な、「壊された」 の表現が相応しい程の破壊に至った
 といった状況が想像される、といったところか。
 その、厄。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (疵痕)

HARD



悪霊 「ミスフォーチュンズホイール」
 
 [スペル]
 
 雛のスペル。
 Easy, Normal にて使用。
 雛から弾源厄が二度に分けて放たれる。
 弾源厄は弧を描いて飛び去りつつ、紫棘弾を設置して行く。
 厄は第一陣が左旋回の軌道をとり、設置する弾は弧の内向きである。
 第二陣は右旋回、弾は弧の外向きである。
 
 ・misfortune
   「不運、逆境、災難」
 ・wheel
   「車輪、輪。ハンドル。回転花火。回転、輪転、旋回。
    運命の紡ぎ車。変化、変転、転変」
 ・wheel of fortune
   「運命の女神の紡ぎ車。(抽選などの)ルーレット盤。(人生の)転変」
 ・悪霊あくりょう
   「たたりをする死霊。もののけ。怨霊。あくろう。あくれい」
 
 ホイール・オブ・フォーチュンはタロットカードの一枚として
 または、運命の女神フォルトゥナの回す輪としてよく知られる。
 ローマ神話の運命の女神であるフォルトゥナ (Fortuna) は
 英語の "fortune" の語源とされ、
 タロットの運命の輪もフォルトゥナがモデルとされている。
 
 運命の輪は幸運を示すとは限らず、
 むしろ幸運と不運が不規則かつ交互に訪れる変化を表す。
 "spin the wheel of fortune" は 「運試しをする」 の意である。
 車輪の上下はしばしば幸運と不運に結び付けられ、
 "at the top of Fortune's wheel" は 「幸運の絶頂に」 の意となる。
 (この文の様に、「フォーチュンズホイール」 の言い回しもなされるようだ)
 
 Misfortunes' Wheel.
 「厄災の巡り」
 スペル名が運命の輪と掛けられているのは明白だが、
 意味合いとしてはこちらの方がしっくりくるだろうか。
 厄の発生と回収の繰り返し、
 また、厄年や厄神の来訪のような周期的な巡り。
 あるいは、時には雛の周囲から厄が洩れてのリターンとか
 雛が意図的に厄を放つことなどもあるだろうか。
 人に仇なす厄。悪霊
 
 Miss Fortune's Wheel.
 「ミス・運命の輪」
 雛は厄を回収する。
 不運が除かれ、人は相対的に幸運に恵まれる。
 このことから、雛は運命の女神とも解釈できるだろう。
 「雛」 は 「小さい、愛らしい」 意があり、
 運命の神の綺麗どころ、または代表格。
 ミス・運命の輪。
 回るし。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (悪霊、雛)
 「SPACE ALC」 (misfortune, wheel, fortune wheel)
 「Wikipedia」 (運命の輪フォルトゥーナ
 「Wikipedia(英)」 (The Wheel of Fortune, Wheel of Fortune (Tarot card)

NORMAL


The Wheel of Fortune
(「Wikipedia」より)



悲運 「大鐘婆の火」
 
 [スペル]
 
 雛のスペル。おおがねばばのひ
 Hard, Lunatic にて使用。
 ミスフォーチュンズホイールの上位版。
 紫棘弾が火焔弾に変化。
 
 ・悲運
   「悲しい運命。不幸な運命」
 
 大鐘婆の火は、遠州横須賀 (現、静岡県掛川市横須賀) あたりで言う怪火。
 
 大鐘という大富豪の一家は子孫が絶え、最後に残った老婆も亡くなった。
 老婆の死後、親族が祭祀を継ぐ者も決めずに勝手に遺産を処分してしまった。
 以降、五月雨の降る夜には青いと化した老婆の霊が田畑を飛び、
 「これも家の畑だ」「これも家の田だ」 と言いながら
 宝珠寺の墓へと飛び去るようになったとされる。
 
 一方、別の伝承では、
 大鐘という富豪の老婆が供養のために田地を寺に喜捨したが、
 何代目か後の住職が田地を質に入れてしまった。
 そのため、雨が降る夜には青いと化した老婆の怨霊が
 その田地の上を飛ぶのだと言う。
 
 雨のそぼ降る冥い夜にかつての栄華の形見に舞う口惜しやの人魂。
 富豪という運命の輪の頂点からの、運命の暗転。
 無下にされる老婆の遺志。まさに悲運。
 厄災の巡りに遭ってしまった老婆はしかしながら、
 人に害を及ぼすこともなく、悲しく漂う。
 辛さや悲しさを晴らさず、しかしそうすることで
 厄災が他者に向かって再び巡り始めるのを留めようとするようである。
 ――なんて想像もできるだろうか。
 
 ミスフォーチュンズホイールとも関連して、
 大金持ちの運命が急転して火の車、なんてシャレではない。……と思う。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (悲運)
 「もののけが集うホームページ」>もののけの紹介 >大鐘婆の火
 「怪異・妖怪伝承データベース」>検索 >(大鐘)
 
 Special Thanks!
 「胡蝶の見果てぬ夢」>文蔵 >東方民譚集 >「流竄の人形」

HARD



創符 「ペインフロー」
 
 [スペル]
 
 雛のスペル。
 Easy, Normal にて使用。
 雛周辺に複数の弾源があり、これらは砲塔を巡らせつつ
 赤棘弾または紫棘弾を多WAYで連射する。
 発動直後は弾源の調子が揃っているため
 線状に並んだ棘弾が飛来するが、
 次第に弾源の位置がブレ始め、弾幕の奔流は大きく影響を受ける。
 また、雛の周囲を厄が巡る。
 これらは自機が異常接近した時のみ青粗弾をばら撒く。
 
 ・pain
   「痛み、痛覚。苦痛、苦労、苦悩。不快なこと・もの」
 ・flow
   「流れ、流入。流量。月経血。(潮の)満ち。(言葉など)よどみない流れ」
 ・flaw
   「欠陥、不備、不具合。割れ目、傷、ひび。欠点、弱点」
 ・
   「刀できずつくこと。きず。物事をはじめること」
 
 Pain Flow.
 「痛流」 「厄の流れ」
 苦痛不快をもたらす罪穢れやが通り流れる。
 厄災を一手に引き受け、河の流れに乗る流し雛。
 その頃、流された雛は過酷な環境でつき、
 また、厄を水に流して平穏な日常に戻った人々に忘れ去られて
 心がつくのかもしれない。そんな痛み
 痛みとともに流されてゆく人形。
 あるいは、不快なもの、すなわち厄を纏いながらの流れ。
 
 Pain Flaw.
 「苦痛の創傷」
 流されながら岩や木々に衝突し、負う創傷。
 または、「壊されたお守り」 の様に厄の影響で発生する疵。
 
 疵、疵痕、創、のように頻出する 「きず」 と流し雛とが
 「フロー」 のシャレで結び付く。
 本スペルにおいても、両フローの意味を重ね持つと思われる。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (創)
 「SPACE ALC」 (pain, flow, flaw)

NORMAL



創符 「流刑人形」
 
 [スペル]
 
 雛のスペル。りゅうけいにんぎょうるけい――
 Hard, Lunatic にて使用。
 ペインフローの上位版。
 雛周囲を巡る厄より青粗弾が撒かれる。
 
 ・流刑
   「旧刑法で、重罪に対する主刑の一。島など遠隔地の監獄に拘禁した。
    徒刑と異なり、重労働を伴わない。有期と無期とがある。
    流(る)に同じ」
 ・
   「刑として辺地にながすこと。律の五刑の一。近・中・遠の3等級に分れ、
    近流では越前・安芸など、中流では信濃・伊予など、遠流では伊豆・佐渡
    ・隠岐・土佐などに配して、各国司に監視させた。期間は赦のあるまで
    無期限。江戸時代には遠島の制があった。流刑。流罪」
 
 流刑については上記、広辞苑よりの引用を参照。
 流罪と同義である。
 は、「法にふれ罰せられる行為。あやまち。悪い点」 といった意味の他、
 「刑罰」 の意もあり、後者に含まれるのが流罪や死罪といった語の 「」 である。
 
 神道での 「」 は、規範や秩序を犯す行為を指し、また、
 病や災禍など、危険・不浄なものとして忌避すべき自然的凶事も含む。
 基本的に、禊 (みそぎ) 祓 (はらえ) により解消・除去される。
 人は罪穢れを流し雛へと移し、これを流す。
 
 刑罰として流される流罪に、
 罪を流す流し雛を掛けているだろうか。
 
 厄を受ける役を受け、罪も穢れも無い無垢なる雛が流される。
 人の住む地から遠く寂しく彼方へ、厄や穢れとともに。
 雛人形にとってはさながら流刑
 流刑の人形。
 心に鋭いが走る。
 
 ちなみに、信濃は流刑地の一つ。
 忠臣蔵で有名な吉良上野介の跡継ぎ、吉良義周は
 赤穂浪士らの討ち入りの対応不届きのため信濃国諏訪藩に流罪となった。
 吉良義周の墓は、諏訪大社上社本宮に隣接する法華寺にある。

 
 参考
 「広辞苑 第五版」 (流刑、流、流罪)
 「Wikipedia」 (流罪吉良義周
 「【縮刷版】 神道事典」 弘文堂 (罪)

HARD



産医師異国に向こう……御社に蟲さんざん
 
 [会話]
 
 魔理沙ストーリー、Stage2の会話。
 さんいしいこくにむこう……みやしろにむしさんざん
  魔理沙 「こうやって闘いながら進むと山は遠いんだな
        山に辿り着く前に円周率を暗唱出来そうだ」
   雛   「あらあらまだ居たの?」
  魔理沙 「産医師異国に向こう……
        ……御社に蟲さんざん
   雛   「何の呪文よ」
 
 円周率の暗記法としての語呂合わせの一つ。
 
 産医師異国に向こう 産後薬なく 産婦みやしろに 虫散々闇に鳴く
   3.14159265    358979    3238462    643383279

 (薬を厄とするものもある。みやしろには御社または宮城が当てられる)
 
 男性の厄年の一つ、42歳が 「死に」 に通じる様に、
 女性の厄年の一つ、33歳は 「散々」 に通じると言われる。
 「虫散々闇に鳴く」 の場合はマイナスの意味での 「散々」 ではないが、
 魔理沙は 「蟲さんざん」 までしか思い出せず、
 「神社が蟲だらけ」 とマイナスの意味の 「散々」 となっている。
 蟲の大量発生に見舞われる厄災。

 
 参考
 「Wikipedia」 (円周率#π の暗唱厄年



 タイトル / 自機 / Stage1 / Stage2 / Stage3 / Stage4 / Stage5 / Stage6 / ED / Extra

補遺1・風神録と長野 / 補遺2・風神録と静岡 / 補遺3・風神録と五行 / 補遺4・風神録と魔除

Acknowledgements & References

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