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卯酉東海道

 初回: 2006.06.09
 最終更新: 2009.06.21 (八幡神について加筆と修正)

 

卯酉東海道 〜 Retrospective 53 minutes.

 ぼうゆうとうかいどう 〜 レトロスペクティヴ・53・ミニッツ。
 
 ・卯酉
   「東と西。東西」
 ・東海道
   「五街道の一。江戸日本橋から西方沿海の諸国を経て京都に上る街道」
 (「広辞苑 第五版」 より)
 
 十二支を方角に割り当てて、北は子、東は卯、南は午、西は酉。
 南北の線を子午線、東西の線を卯酉線という。
 卯酉東海道は、近未来の酉京都と卯東京を繋ぐ直線経路の新東海道線。
 現在の東海道新幹線の上位版。
 
 Retrospective 53 minutes.
 「回顧的53分」
 歌川広重の 「東海道五十三次」 に因んで、53分。
 収録曲にレトロスペクティブ京都がある。

 

 

ジャケットイラスト

 2つの富士が重なっている。
 1つは、歌川広重の 「東海道五十三次 由井」 に描かれる富士山。
 1つは、葛飾北斎の 「富嶽三十六景 凱風快晴」 に描かれる富士山。
 透けている方の富士が北斎の赤富士。
 妹紅のスペル名にも用いられた富士である。
 
 ブックレット中ではホクサイから狂気が感じられる。
 狂気の富士の方を指差す蓮子と、手をかざすメリー。

 

目次

 

ヒロシゲ36号 〜 Neo Super-Express

 ヒロシゲ36ごう 〜 ネオ・スーパーエクスプレス。
 
 歌川広重と富士 (不二) 三十六景。
 これらにちなんで、ヒロシゲと36を有するタイトル。
 
 Neo Super-Express.
 「新新幹線」
 Super Express は新幹線なので。

 

 

53ミニッツの青い海
 Blue Sea for 53 minutes

 53ミニッツのあおいうみ。
 ブルー・シー・フォー・53・ミニッツ。

 
 東海道五十三次。
 海に臨む街道、東海道を歩む。
 海の青。また、五行で東と青は直結している。
 
 Blue Sea for 53 minutes.
 「53分間の青い海」
 
 〜カレイドスクリーンの 『偽物の』 景色〜
 カレイドスクリーンはカレイドスコープ (万華鏡) より。
 千変万化のスクリーン。
 「トンネルに映像が流れる」 という表現が為される。
 トンネル全てに常時映像を映すとエネルギー効率が悪いと考えられるため、
 列車に応じてトンネル壁を部分的に点灯してゆき、
 列車から見れば映写機と同様の視覚原理、といったところか。
 等速直線運動であれば容易な制御も可能と思われる。
 
 〜神亀の遷都〜
 神亀は、724〜8年の元号として実際に用いられた。
 白亀の出現の瑞祥を受けて改元したらしい。

 

 

竹取飛翔 〜 Lunatic Princess

 たけとりひしょう 〜 ルナティック・プリンセス。
 東方永夜抄での蓬莱山輝夜のテーマ曲。
 東方永夜抄事典の 「竹取飛翔」 参照。
 
 〜夜は夜で空に浮かぶのは偽物の満月〜
 偽物 (映像) の満月の話題が永夜抄に通ずる。
 
 〜太古の兎が薬を搗いている姿〜
 こちらは月の兎。
 日本では月の兎は餅を搗くと言われるが、
 古代中国では不老不死の薬を搗いているとされた。
 
 〜一分一泊ね。その調子なら三週間で老衰だわ〜
 53分間で53の宿場を駆け抜ける。
 1分で1泊の計算とすると、
 1時間は60分なので60泊。
 1日は1440分なので1440泊。約4年に相当。
 1週間は10080分なので10080泊。約27年半。
 3週間で約83年に相当する。
 大学生の年齢を足せば、メリーの発言は妥当。
 (2004年で日本女性の平均寿命は86歳)
 
 要素を纏めて挙げれば、
 (偽物の)満月、不老不死の薬、月の兎、旅(ヴォヤージュ)、永遠と須臾、
 と永夜抄づくし。

 

 

彼岸帰航 〜 Riverside View

 ひがんきこう 〜 リバーサイド・ビュー。
 東方花映塚での小野塚小町のテーマ曲。
 東方花映塚事典の 「彼岸帰航」 参照。
 
 〜お盆が冥界からご先祖様が帰ってくるでしょう?
  だからお返しに彼岸には、こっちから挨拶に行くの〜

 盆と彼岸の話。
 Bon Retour と Higan Retour。
 東方花映塚事典の 「花映塚」 参照。

 

 

青木ヶ原の伝説
 Forbidden Forest

 あおきがはらのでんせつ。
 フォービドゥン・フォレスト。

 
 Forbidden Forest.
 「禁断の森」
 緊張が走るメリー。
 霊峰富士のせいと二人は納得するが、実は樹海のせい。
 富士山の麓、青木ヶ原の樹海。
 東方永夜抄事典の 「蓬莱の樹海」 参照。
 
 〜富士が世界遺産に認定された時に、休火山から死火山になった〜
 富士山は現在、活火山に定義されているが、
 これは過去1万年以内に噴火した火山や活動中の火山が
 そう定義されることに基づく。
 以前は休火山や死火山の分類が用いられてきたが、
 現在はほとんど用いられない。
 また、富士山は現在、世界遺産の日本政府暫定リストに登録されている。

 

 

お宇佐さまの素い幡
 Most Famous Hero

 おうささまのしろいはた。
 モースト・フェイマス・ヒーロー。

 東方花映塚での因幡てゐのテーマ曲。
 東方花映塚事典の 「お宇佐さまの素い幡」 参照。
 
 〜最初は京都と東京だけじゃなくて、鎌倉にも駅を作る予定だった〜
 〜三つの都を繋いで名前も繋都 (けいと) 新幹線にしたかった〜
 〜暖かそうな新幹線ね〜

 鎌倉の話題。
 三つの都は、鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府からか。
 三つの都を繋いで繋都。
 暖かそうなのは毛糸。
 
 〜八幡様が好きな誰か〜
 八幡の話題。
 鶴岡八幡宮(鎌倉)、石清水八幡宮(京都;三大八幡)、富岡八幡宮(東京)と
 「三つの都」 に有名な八幡様があるとも言える。
 八幡神社の総本社は大分県宇佐市の宇佐八幡宮。
 お宇佐さまの…。
 八幡様が好きで、嘘情報を吹き込むような誰かとは、
 やはり本曲が花映塚でテーマ曲とされた因幡てゐへのリンクか。
 
 ・most famous
   「最も有名な人」
 ・hero
   「(神話で超人間的な力を持つ)半神。(勇敢な行為をした)英雄、豪傑。
    (ある分野で業績を残した)偉人、名士。男性の主人公。」
 (「SPACE ALC」 より)
 
 Most Famous Hero.
 「最も有名な英雄」
 八幡神のことであろうか。
 八幡神は、古くは、宇佐神宮のある宇佐地方一円にいた
 大神氏あるいは宇佐氏の氏神であったと考えられている。
 農耕神、海の神、あるいは鍛冶の神とされるが、応神天皇ともされる。
 また、僧形の八幡神坐像もいくつか知られる。
 「半神」 という視点での hero の語にそぐうか。
 屋敷神を含めると稲荷社に首位を譲るが、
 八幡神はその数の多さで第二位にランクされ、
 八百万の神の中で最も広く信仰されている神の一つである。
 そういった面で、「最も有名」 であると言える。
 
 〜そういえば、『お蔵入り』 の蔵って、何の蔵なのか知ってる?〜
 「お蔵入り」 の蔵は、江戸幕府の米蔵である。
 ・御蔵
   「蔵米として支給する米を収納・保管した江戸幕府の倉庫。
    (御蔵に入れる意から) 企画した興行や演目が中止になること。
    使わずにしまっておくこと。 「―にする」 「―入りになる」」
 (「広辞苑 第五版」 より)

 

 

月まで届け不死の煙
 Elixir of Life

 つきまでとどけふしのけむり。
 イリクサー・オブ・ライフ。
 東方永夜抄での藤原妹紅のテーマ曲。
 東方永夜抄事典の 「月まで届け、不死の煙」 参照。
 
 〜この富士は、広重と言うよりは北斎かなぁ〜
 富士の話題
 富士の映像に北斎の富士を感じるメリー。
 「デザインド・バイ・ウタガワ・ヒロシゲ」 なので、
 歌川広重に基づく映像のはずである。
 メリーは表紙の様に北斎の狂気を幻視したのだろうか。
 
 〜スケールだって、オートマチックビデオリターゲッティングの
  処理された様な感じがするわ。〜

 Automatic Video Retargeting 処理、自動映像再標的化処理
 といったところだろうか。
 写真や映像のサイズ変更のデジタル処理において、
 人物などの特定の標的を色やコントラストの不連続から検出し、
 標的以外にはサイズ変更に伴った縮小を施し、
 標的自体はリサイズの前後で大きさに変化を持たせないような方式があり、
 これが 「リターゲティング」 と呼ばれる。
 この場合、風景をカレイドスクリーンという大画面で映すのに際して
 画質や細部の修正、縦横比の調整などが行われたと考えられるが、
 その際に、富士にリターゲッティング処理を施し、背景の縮小処理から
 切り分けたことでインパクトを与えるスケールにしたのであろう。
 
 〜『富士 (不二) 三十六景』〜
 富士三十六景&不二三十六景はともに歌川広重の作と言われる。
 
 挿絵は葛飾北斎の赤富士こと 「凱風快晴」。
 妹紅のスペル、フジヤマヴォルケイノ。
 
 Elixir of Life.
 「生命の霊薬」
 不老不死の薬。

 

 

レトロスペクティブ京都
 Retrospective Kyoto

 レトロスペクティブきょうと。
 レトロスペクティヴ・キョート。

 東方文花帖での撮影テーマ曲のひとつ。
 東方文花帖事典の 「レトロスペクティブ京都」 参照。
 
 〜葉っぱもなく、茎と赤い花弁だけの奇妙な花〜
 ストーリー中はちょうど彼岸の時期でもあり、
 彼岸花のことであろう。
 東方花映塚事典の 「再思の道」 参照。
 
 東京の話題。
 回顧的に京都
 前を見るプロスペクティブに対し、後ろを見やるレトロスペクティブ。
 現時点から時間の流れに逆らう様に過去を顧みる。
 あるいは、京都を逆から読んで東京。
 
 ・町奴 (まちやっこ)
   「江戸初期の市中の侠客。旗本奴に対し、浪人や口入れ人などの
    町人がなった。おとこだて。下町奴。」
 ・旗本奴 (はたもとやっこ)
   「江戸前期、旗本の不平の徒で男伊達の行いをしたもの。
    大小神祇組・白柄組・六法組などがあり、江戸市中を横行。」
 ・火消し
   「消防を職務とする人。江戸には官民による消防組織として、
    定火消・大名火消・町火消があった。」
 (「広辞苑 第五版」 より)

 

 

ラクトガール 〜 少女密室
 Locked Girl

 ラクトガール 〜 しょうじょみっしつ。
 ラクト・ガール。

 東方紅魔郷でのパチュリー・ノーレッジのテーマ曲。
 東方紅魔郷辞典の 「ラクトガール」 参照。
 
 引き続き東京と京都の話題
 集約と閉塞に満ち足りる密室都市
 
 〜食のテーマパーク〜
 フードテーマパークとも呼ばれる。
 東京都には以下のフードテーマパークが知られる。
 麺達七人衆 品達ラーメン、ラーメン国技館、ラーメンスクエア、
 池袋餃子スタジアム、台場小香港、立川中華街、アイスクリームシティ、
 東京デザート共和国、自由が丘スイーツフォレスト、品達どんぶり五人衆。
 (「Wikipedia」(フードテーマパーク) より)

 〜闘食会と呼ばれた死をも恐れない食の大会〜
 江戸時代にあったとされるフードバトル。
 死をも恐れないというのは誇張ではなく、実際死人が出ていたそうな。
 「いつの頃からか、闘食会ということを始めしものなり、其の社中の人、
  闘食の後、ことごとく悶絶せり。死に至るもの、はなはだ多し。
  社中の人、みな夭逝せり」
 (「謎ジパング 誰も知らない日本史」 明石散人著、より)

 

 

千年幻想郷 〜 History of the Moon

 せんねんげんそうきょう 〜 ヒストリー・オブ・ザ・ムーン。
 東方永夜抄での八意永琳のテーマ曲。
 東方永夜抄事典の 「千年幻想郷」 参照。
 
 永夜抄本編で、いにしえの力の著作権を話題にした永琳。
 エンディングクレジットの話題。

 

 

最も澄みわたる空と海

 もっともすみわたるそらとうみ。
 
 タイトルは、最澄と空海。
 
 〜夢と現は区別出来ない様に、人間と胡蝶と区別出来ない様に〜
 夢と現の呪、胡蝶の夢。
 東方萃夢想事典の 「胡蝶夢の舞」 参照。
 
 〜ヴァーチャルとリアルは決して区別出来ない〜
 外界からの情報を五感で受容し、シグナルを細胞の膜電位の変化で伝達、
 中枢でその情報が処理され、時には感傷や記憶や経験のバイアスを経て
 心に響く。
 心または魂が人間の本質と解すれば、
 身体は外界の情報受容のためのインターフェイスに過ぎない。
 情報伝達の受容体機構がリアルの刺激もヴァーチャルの刺激も
 同様に電気信号で伝達を行なうため、両者を区別出来るような性質ではない。
 リアルとヴァーチャルを区別しているのは、
 ヴァーチャルの刺激の源を囲むリアルの刺激を検出して
 そう判断しているに過ぎない。
 リアルに近い精緻なヴァーチャルの刺激に周囲を囲まれれば、
 両者の区別は困難となる。
 超精巧な映像がカレイドスクリーンに流れれば、
 車窓の景色はリアルであるかヴァーチャルであるかの区別は
 予備知識の無い者には困難となるであろう。
 
 〜身は華と与に落ちぬれども、心は香と将に飛ぶ。〜
 空海の言葉。
 「性霊集」 より、身與華落心将香飛。
 身体は花の様に地に落ちてしまうが、心は香りの様に漂い飛んでゆく。
 
 これらは全てあとがきにリンク。

 

 

あとがき

 夢と現、ヴァーチャルとリアル、
 心は体を捨て、現実の外に飛び出す事が出来る、という
 「旅に出たい」ZUN氏。
 ストレートに捉えるならば、
 旅に出たいZUN氏の心が現実を離れ、幻想の世界(創造世界)で
 秘封倶楽部の二人と共に旅をしたと思われる。
 
 表紙イラストの角度と、富士の手前あたりで海岸が左手に見える
 としていたことから、語り手が座ったのはメリーと同じく
 進行方向とは反対向きであろう。

 

 

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