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補遺:「永夜考」 / 補遺:「東方竹取考」 / 補遺:「ルナリアン考」

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姫を隠す夜空の珠
 
 [タイトル]
 
 Final (Final A)のタイトル。
 先のステージで顔を見せた永琳を追って、永い廊下へ。
 しかしそれは、姫を秘匿したい永琳の陽動作戦であった。
 
 満月の夜に形成される、月と地上を結ぶ経路。
 月の使者の来訪を阻止したい永琳はこれを遮断することにした。
 それが満月の異変である。
 地上からの経路は偽の不完全な満月に繋ぎ、
 月からの経路は偽の穢れのない地上と繋ぐ。
 経路は遮断され、月からの降臨は阻害されたはずだった。
 これで月の民達は諦めるかと思われたが、
 今度は永夜の異変が起こる。
 月の使者が地上を訪れるのは満月の夜に限られる。
 月と地上を結ぶ経路の問題と、自分達が降りる地上の穢れを少しでも浄化するためだ。
 永夜異変は、満月を長時間持続し、何が何でも地上に至ろうとするような
 月人の強い意思の顕れに思えた。
 夜を永続させて、その間に密室術を突破する気かもしれない。
 それを受け、急遽永遠亭に防衛ラインが敷かれる。
 月の狂気に耐性を具える兎軍を前衛に堅め、
 月の兎である鈴仙を戦闘要員兼封印術の助手とし
 多数のダミーの扉に封印を施してゆく。
 (封印が間に合わなかったのは、当初の防衛計画に無かった為の準備不足によると思われる)
 案の定、何者かが永遠亭に侵攻。
 さらに、鈴仙にまで敵の手が及ぶと永琳は自ら前線に赴き、
 敵の注意を姫から自身に逸らせる陽動作戦に出る。
 姫の側近である永琳に月人が喰い付かない筈はない。
 永琳の計算違いだったのは、
 そもそも全ての仕業(永夜の術&永遠亭殴り込み)は
 良く分からない二人組によるものだったということ。
 とりあえず、被害が周りに及ばないに越したことはないし、
 姫のところに騒々しいのが行かないよりは、と陽動を続けるのだった。
 
 夜空の珠は、単純に考えれば月の事である。
 結界組と輝夜の会話(Final B)でも次の様にある。
 輝夜 「人間に宿るは儚い霊(たま)。
     その人間が住むのは大きな球。
     そして、貴き民が住むのは……、
     後ろに見える狂おしい珠。」

 この会話では 珠=月 である。
 しかし、永夜抄では 珠=月 かと言われれば、必ずしもそうではない。
 幽冥組との会話ではこの様にある。
 幽々子 「珠はね、少しでも欠けると価値は無くなるの。
      それは、永遠に丸のままではいられないからよ。
      でもね、その傷が付いた珠も、転がしているうちにまた珠に戻る。
      そういうことでしょう? 」
 輝夜 「そう、永遠とはそういうこと。
     ワビの世界よ。」

 しかも、Final A のタイトルは「姫を隠す夜空の珠」、
 月が輝夜を隠すというのでは事態に一致していない。
 月と永遠に象徴される珠……。
 そう、ここでの「姫を隠す夜空の珠」とは永琳のことである。
 珠=永琳 について詳しくは、八意永琳の項にて後述。
 
 タイトルと共に以下の字幕が現れる。
 「永い永い廊下。この廊下は何者かが見せる狂像か。
  近すぎる月の記憶は、妖怪には懐かしく、薄い物だった。」

 
 永琳 「まぁ、ここは私が作った偽の通路。
     貴方達が見失うのも無理は無いわ。」
 幽々子 「偽の月に偽の星空。
      ほんと、手の込んだ事をしたものね。」
 永琳 「あら、よく分かったわね。
     あの月が幻影だって。」
 幽々子 「大昔の月よ、あれは。
      月がまだ天上にあった頃の月。
      古臭い、黴の生えた月。
      今の月には兎はいないものねぇ。」
 永琳 「あいにく、今でも兎はいるわ。
     月の民も兎も、月の裏でひっそりと暮らしているよ。
     結界を張ってひっそりと……。
     そう、幻想郷の様にね。
     そしてこの幻影の月は、月の記憶。
     古臭く見えるのはその為よ。」
 やはり真実に近い者とは会話も弾む。
 Final A, B の幽々子と永琳 or 輝夜との会話は
 他の者の会話より真実に近い。
 上記にある様に、欠けた月は、昔の、どこか懐かしい月の記憶を投影した
 映像のような物で、だから薄っぺらく感じる。
 
 ちなみに西行法師の歌に月を詠んだものも数多い。
 百人一首に選ばれた西行法師の歌も月がらみだ。
 歎けとて月やは物を思はするかこちがほなるわが泪かな

 
 
ヴォヤージュ 1969
 
 [音楽]
 
 Final (Final A&B)のテーマ曲。
 旅人
  霊夢たちは、気が付いたら大気圏外に居ただけで、
  別に旅したかったわけではない。〜

 (曲解説より)
 
 ・voyage …「船旅、航海、空(宇宙)の旅、人生航路、旅路」
 
 Voyage 1969.
 「1969年 宇宙の旅」
 "voyage" はフランス語で「ヴォヤージュ」と発音する。
 英語でもスペルは同じだが、発音は「ヴォイジ」。
 「旅人」の意味では "voyager" 、宇宙探査機ボイジャーが近いが、
 ボイジャーは1号の打ち上げが1977年。
 ここでは1969年に人類初の月面有人着陸を果たしたアポロ11号。
 1969年7月16日にケープカナベラルのケネディ宇宙センターから打ち上げられる。
 1969年7月20日、月着陸船イーグルが静かの海に着陸。
 1969年7月24日、地球に帰還。
 船長はニール・アームストロング。
 「これは一人の人間には小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」という
 有名な言葉を月面に降り立つ際に述べている。
 ちなみに、アポロ11号のクルーが月面で船外活動中、
 異星人を目撃したとする都市伝説がある。
 鈴仙 「月に来た人間を狂わせた催眠術。
     あの人間は弱かったわ。」

 【改訂用の備忘録】
 ちなみに、ケープカナベラルのカナベラルはスペイン語の 「藤」 に由来する。
 藤、富士、不死。本作に関係の深いキーワードである。
 (1963年〜1973年の間は一時的にケープ・ケネディという名称だったが)

 
 
八意 永琳
 
 [キャラクター]
 
 Final (Final A)のボス。やごころ えいりん
 「月の頭脳」
 いつしか月に住むようになった天才家系の月人。
 月の民、つまり宇宙人。
 非常に長寿で、レミリアの紅い歴史も近似でゼロと言えるほど生きているらしい。
 月の姫である輝夜よりも圧倒的に力を持つが、常に力を輝夜以下に抑えている。
 あらゆる薬を作る程度の能力。天才。
 
 とにかくその歴史は永い。
 他の項にも書いているが、ここでも纏めると、
 その昔、月にて輝夜の勅命?で蓬莱の薬を創製する。
 禁に触れたとして、主犯格の輝夜は地上に堕とされ、
 共犯の自分は無罪であったことがずっと心苦しかった。
 昔と言っても、輝夜が地上に現れたのが千数百年前。
 輝夜の地上での刑期が終わり、永琳も月の使者として迎えにあがる(降る?)。
 輝夜に対する申し訳なさで一杯の永琳は、輝夜の命令に忠実に応え、
 月への帰路、使者を皆殺しにし、輝夜と共に遁走する。
 何らかの封印術か結界術を施しながら地上に隠れ住んだと思われる。
 何時しか人里離れ妖怪も巣食うその地は
 幻想郷として大結界に閉じられた世界となり、
 長い年月に従って千年も昔のことは忘れ去り、平和に暮らしていた。
 そこへ月の兎が月から逃れて舞い込み、三人でやはり平和に暮らす。
 数十年後には月の使者が地上に降臨することを知り、
 正確には鈴仙を連れに来るのだが、見捨てるわけにもいかず姫も隠さねばならない。
 永琳は地上の密室術を処方し、有害事象の律速段階を阻害することにした。
 
 「八意」は、日本神話に登場する神・オモイカネに基づくと思われる。
 思金神、思兼神、あるいは、八意思兼神八意思金神などと表記される。
 オモイカネは常世(不老不死の楽園みたいなもの)の神とする記述もある。
 多くの人々が持つ思慮を一人で兼ね備える神の意で、
 思想、思考、知恵を神格化した神と考えられている。
 「八意」の意味としてはいろいろ言われており、
 神格への尊称、「意」を開くこと・多くの意見、立場を変えて思いを巡らす、などの意とされる。
 オモイカネは、アマテラスの岩戸隠れの際に、
 八百万の神に知恵を授けている、いわば神々の参謀。
 岩戸隠れの際には多数の神の能力を把握して作戦立案し、
 筋書き通りにアマテラスを岩戸から出させることに成功する。
 造化の三神の一、タカミムスビの子とされている。(慧音の「ファーストピラミッド」参照)
 
 美しい玉、玉などが触れ合って美しい音を立てるさま、美しい詩文を例えたもの、
 といった意味を「」は持つ。琳琅りんろう)と同義。
 すなわち、先の項に述べた「姫を隠す夜空の珠」とは永琳の「」の字から
 永琳が輝夜を隠している事を示しており、まさにFinal A のタイトルである。
 また、同じく「姫を隠す夜空の珠」の項に記したように、珠は永遠であり、
 永遠に美しい珠の意味の名が永琳なのだ。

 【改訂用の備忘録】
 永琳のスペル背景については、東方雑考の 「永琳スペカ背景他」 を参照。
 永琳の通常背景については、胡蝶の見果てぬ夢様の造家寮を参照。
 
 世界各地に月の神は神話の数だけ思い描かれていると言っても過言ではないが、
 中でも興味深いものを挙げると、エジプト神話のトトは
 月の神であり知識の神でもある。
 バルト神話の月の神のメーネスは星座のガウンを纏っている。
 
 永琳の服に北斗七星が描かれており、中国神話の北斗星君や南斗星君を想起させる。
 北斗星君は死を、南斗星君は寿命を司る。
 また、五行思想で北には黒色が、南には赤色が対応するが、
 永琳服の配色にもこの二色が使われている。
 
 赤と黒を明と暗に見れば、帽子にその二色の陰陽で両儀、
 服は上半身二色と下半身二色の四分割で四象、
 スカートの裾に描かれる八卦、と、中国の宇宙観・宇宙創成の流れが
 意識されたものとも考えられる。

 弓矢は、月にちなむものか。
 上弦・下弦の月あるいは弓張り月。
 月神・アルテミスは狩猟の神でもあり、弓矢を所持した姿で描かれる。
 ちょっと上に南斗星君の話題があるが、南斗の六星は射手座に当たる。
 一方、日本神話においては、オモイカネの親に当たる高木神が
 天若日子に渡した弓矢が天のかく矢と天のはじ弓である。
 裏切りと悪用を受けて高木神が矢を投げ返し、天若日子は射殺された。
 かく矢の音はカグヤに似る。
 
 (2006年6月26日の拍手メッセージに感謝>北斗、南斗)

 
 
千年幻想郷 〜 History of the Moon.
 
 [音楽]
 
 永琳のテーマ曲。
 月の都の歴史
  月の裏側にある月の都。
  出来たての幻想郷なんか比じゃないほど古い歴史を持っている。
  その都は、今は少々……。〜

 (曲解説より)
 
 「千年」は、文字通り地球の公転1000回分の時間を指す他に、
 転じて単に長い年月を意味するだけのこともある。
 また、ラテン語では千=mille 、年=annus であり、
 これを語源に英語の millennium ミレニアムがあるとされる。
 ミレニアムは、元々はキリスト教の「千年王国」を意味し、
 これまでの世界が終わりを遂げて、キリストが新たな千年間を支配する
 至福千年期が訪れるとするものだったが、
 100年間を表す century と同じ様に1000年間の意味でも使われる。
 
 永琳 「あいにく、今でも兎はいるわ。
     月の民も兎も、月の裏でひっそりと暮らしているよ。
     結界を張ってひっそりと……。
     そう、幻想郷の様にね。
     そしてこの幻影の月は、月の記憶。
     古臭く見えるのはその為よ。」

 欠けた月は、永琳の作り出した月の幻影にして、大昔の月の記憶。
 映し出された昔の月は、妖怪には懐かしく、薄っぺらなものだった。
 千年前の懐かしい光に照らし出される幻想郷 =千年幻想郷か。
 
 あるいは、千年間の張り子の月の代が終わり、
 狂気の真の満月による新たな千年支配を意味するミレニアムだろうか。
 この仮説を時系列で追えば、
  古からの真の月の代 →竹取物語 →輝夜の逃走
  輝夜の逃走後、何時しか月からの追っ手もかからなくなる。
  この頃に月の民が結界を張ってひっそりと暮らすようになったのだろうか。
  真の月は地上からの認識から隠され、偽の月が夜空を巡る様になる。
  (この偽の月の輝きも、経年劣化でもあったのだろうか、
   永琳が偽の月の昔の記憶を映し出すと、妖怪はそれを懐かしいと感じた。)
  アポロ計画で人類が偽の月に降り立つ。
  真の月は人を狂わせるため、人間が月面に到るなど不可能だが、偽の月ならOK。
  人間の不審な動きを察した月の民は鈴仙を偽の月に派遣し、鈴仙は催眠術を行使する。
  後に人間と月人の間で戦争が勃発、鈴仙は仲間を見捨てて地上へ逃げる。
  さらに数十年後、人間と月人の関係は悪化、全面戦争が近くなる。
  鈴仙への通信 →輝夜秘匿計画&永遠亭防衛線
  月人は地上へ至るルートとして、真の月の結界は解かずに
  偽の月と地上をつなぐものと永琳は予想し、偽の月を穢れなき地上へとつなぎ、
  穢い地上・幻想郷へは偽の月の昔の記憶をつないだ。
  輝夜には真の月の光降り注ぐ空間をあてがっただけだろうか。
  Final B を突破すると全ての術が破れ、真の月の光が幻想郷に降り注ぐ様になった。
 妄想を多量に盛り込んだけど、これで偽の月が千年とその代替わりで
 「千年王国」っぽい代替わり仮説にできたかな。
 
 とはいえ、「千年幻想郷」は、
 単に、月の都、いわば月の幻想郷が千年の歴史を持つこと、とも言えそう。

 
 
天丸 「壺中の天地」
 
 [スペル]
 
 永琳のスペルの一つ。こちゅうのてんち
 使い魔達が自機周囲をぐるりと取り囲み、包囲の外側には埋め尽くさんばかりの粒弾、
 内側に向けては小弾が少量撒かれる。
 
 〜ちょっとした楽園。
  実は妄想。〜
 〜明らかに本来の意味と違う使い方をしている。〜
 〜案外楽勝? その辺が永琳の思いやりの心。〜

 (スペル解説より)
 
 壺中の天地は、中国の後漢書・方術伝に見られる故事。
 市場で薬を商う老人が、夕暮れに店を閉めると、
 あたりを伺い、店先においてあった大きな壺にひょいと入ってしまった。
 それを見かけた役人が翌日問い質すと、壺の中に連れていってもらえることになる。
 壺の中には荘厳を極めた玉殿があり、美酒と佳肴が溢れる、
 この世のものとは思えない別天地であった。
 この故事から、壺中の天地は
 俗世間を離れた別世界、酒を飲んで俗世間を忘れる楽しみ、仙境を意味する。
 ちょっとした楽園。
 
 また、森博嗣の「封印再度」に、その口よりサイズの大きな鍵が入っている壺
 天地の瓢(てんちのこひょう)が描かれる。
 う〜ん、似ているだけであまり関係しないかな?
 
 天丸が不明。
 「夜空の珠」ということか。
 あるいは、てんがんと読んで、同音の天眼に変換。
 天眼(てんがんてんげん)は、仏教用語で五眼の一。
 すべてを見通すことの出来る眼。
 また、天眼通は、六神通の一。普通の人の見ることの出来ない事象を自在に見通す力。
 咲夜を見てビックリ。

 【改訂用の備忘録】
 壺中の天地の故事は、後漢書よりも 「神仙伝・巻五・壺公」 に見られる
 エピソードの方が古いという点を補足。
 (2007年1月13日の拍手メッセージによります。感謝)

 
 
覚神 「神代の記憶」
 
 [スペル]
 
 永琳のスペルの一つ。かみよのきおく、あるいは、じんだいのきおく
 画面上部の永琳から下方に、レーザーが次々枝分かれして模様を描き出す。
 反対に上方には大玉を多量に広げる。
 また、自機依存で粒弾を雨の様に降らせる。
 
 〜系譜を模した光。
  二分木は物凄い勢いで増幅して、生命を彷彿させる。〜

 (スペル解説より)
 
 ・神代かみよ)…「歴史の始まる前の神話で伝えられている時代。神話時代」
 ・神代じんだい)…「日本神話で、神々が支配していたとされる、神武天皇即位までの時代」
 
 一本の線から二本の線に分かれる樹状の系譜。デンドリマー。
 神代の神々の記憶。
 イザナギとイザナミの国産み・神産みにあるように、
 男神と女神のカップルからその子が産まれる以外にも、
 例えば黄泉から還ったイザナギがその穢れを落そうと禊を行うと
 それだけでもろもろと神が生まれたりする。
 それこそ物凄い勢いで増幅される。
 ちなみに、その禊の際に三貴子、アマテラス・ツクヨミ・スサノオが生まれている。
 造化の三神の一、高御産巣日神(たかみむすひのかみ)の子にあたるのが
 八意思兼神と萬幡豊秋津師比売命(よろずはたとよあきつしひめのみこと)である。
 造化の三神については慧音の「ファースト(以下略)
 
 覚神は不明。
 神性の目覚めを意味するか、あるいは、
 ・かく)…(仏教用語)
   「対象を覚知するもの。心。心が妄念を離れている状態。涅槃の理を悟った上での智慧。仏陀」
 ・覚りさとり)…
   「物事の真の意味を知ること。(仏教用語)迷妄を払い永遠の真理を会得すること」
 悟りの神、だろうか。
 永琳には似合うが、あからさまに神仏習合…。
 また、法華神道では、神には3種、
 善の有覚神、悪の邪横神、どちらでもない法性神、があるとしている。

 
 
神符 「天人の系譜」
 
 [スペル]
 
 永琳のスペルの一つ。あめひとのけいふ、あるいは、てんにんのけいふ
 神代の記憶の上位版。Hard, Lunatic にて使用。
 
 〜系譜を模した光。
  でも、出生率が激減している今はこんなに末広がりにならない。〜
 (スペル解説より)
 
 ・天人あめひと)…「天上界の人。都の人。天つ神の血を引く人。」
 ・天人てんにん)…(仏教用語)「天に住む者」
 ・系譜 …「先祖から子孫に至る一族代々のつながり。また、それを書き表した図や記録」
 
 天人てんにん)と天上界の人は同義。
 「天人の五衰」の天人。
 六道の一つ、天上界の住人で、
 あらゆる迷いを捨てきってはいないが、苦の少なく、喜びの多い境遇にあり、
 空を飛んだり、音楽を奏でたりする。
 非常に長寿だが、寿命は有限。
 計り知れないほど長寿であるならば、その出生率は著しく低いと予想される。
 あっという間に世界が飽和してしまわないためだ。
 先進国は医療技術が進み、高齢化が進む。
 社会要因として生産から安定にシフトしていることもあるが、両者は密接である。
 安定環境においては生産性が低下する。
 出生率は低下の道を辿る。
 
 ここでは、かぐや姫に登場した天人、つまり月の民も踏まえるだろうか。
 
 長寿で末広がりにはなりにくくとも末は広がるべくして拡がる。
 天つ神の代から永い歴史を系譜で追えば、それは永くて広いわけだ。

 
 
蘇活 「生命遊戯 −ライフゲーム−」
 
 [スペル]
 
 永琳のスペルの一つ。
 自機近くに放たれた使い魔が、定期的にドットを模した弾丸を自機周りに敷く。
 永琳からは大玉、中玉、暗弾が全方位に放射される。
 限局されたスペースで、狭い隙間を縫うスペル。
 だが、弾丸の包囲はめくらましにもなっており、厄介。
 
 生命のゲーム。つまりはライフゲーム。
  理学系卒じゃないと意味がわからないかも。人生ゲームではない。〜
 〜ライフゲーム。但し延命するだけして、世代交代せず御家断絶。
  全然ルールには乗っ取っていない。薬の与えすぎで寿命が長すぎる。〜

 (スペル解説より)
 
 ライフゲームは、1970年にイギリスの数学者、
 ジョン・ホートン・コンウェイにより考案されたシミュレーション。
 プレイヤーは初期状態を設定するのみでその後の状態が決定される。
 碁盤のような格子(セル)に対して、通常の空白は「死」、黒いセルは「生」とみなす。
 死んでいるセルの周囲8セルのうち3つが生きているセルである場合、生になる「誕生」、
 生きているセルの周囲8セルのうち2か3の生きているセルがあれば、生のまま「維持」、
 その2つ以外の場合は全て死ぬあるいは死のままである「死亡」。
 1世代で全セルに対してこの3パターンいずれであるか判定し、
 状態を変化させたものが次の世代である。
 考案された当初は全て手作業だったが、コンピュータに移植されると
 世界中にファンが広まり、人気を博した。
 プログラマーの気晴らしに使用され、企業や研究機関のPCに損害を与え続けているとされたほど。
 生命の誕生、進化、淘汰などのプロセスを再現したシミュレーションであるとも言われる。
 生物集団においては、過疎も過密も個体の生存に適さない側面があるためだ。
 固定・振動・移動・繁殖などの特徴的なパターンが見出されており、
 それらの発見もライフゲーム熱をもたらした要因である。
 コンピュータや計算の概念を数学的に議論するためのツールとなる仮想計算機械モデルである
 チューリングマシン、ライフゲームはその万能チューリングマシンであることが証明されており、
 ライフゲームは計算機で実行可能な全てのアルゴリズムを作ることができる。
 オリジナルのルール(23/3)の他に、新しいルールに変更したバリエーションもある。
 
 ちなみに、ライフゲームも人生ゲームも英語では同じ "The Game of Life" であり、
 考案者の名前をその名称に入れて区別する。
 ライフゲームは "Conway's Game of Life"。
 
 ・蘇活そかつ)…「よみがえること。蘇生」

 【改訂用の備忘録】
 古代中国では星の配置や動きを読み取り、人や軍や国の運命や生死を占ってきた。
 永琳の備忘録でも触れた北斗星君や南斗星君は生死を司る。
 一方、本スペルでは自機周囲に炸裂する弾丸が碁盤目に区切られた様に
 規則正しく配置される。この一端はドットを連想させ、「ライフゲーム」 にリンクする。
 他方で碁と言えば、碁盤状に天元や星と呼ばれるポイントがあり、
 碁全体も星にちなんでいるとも言われる。
 死活問題の 「死活」 も囲碁由来の語である。
 (2008年7月17日の拍手メッセージに拠る所が大きい。多謝)

 
 
蘇生 「ライジングゲーム」
 
 [スペル]
 
 永琳のスペルの一つ。
 生命遊戯 −ライフゲーム−の上位版。Hard, Lunatic にて使用。
 
 〜ライフゲームの医療改善版。
  余り寿命を長くして出生率を減らすと最後はこうなる。〜
 〜とあるゲームメーカーとは一切関係は無い。〜

 (スペル解説より)
 
 ・rising …「昇る、上がる、上向きの、高まる、増大する、上昇、復活、出現、反乱、暴動」
 
 Rising Game.
 「蘇生遊戯」
 医療の暴走。恐ろしい…。
 ちなみに "rising" の類音に "writhing" 「身もだえ、苦悩、身をよじる、のたくる」がある。
 恐ろしい…。
 人を救うのに熱心で、医術の技が熟達する余り、死者まで蘇らせて
 冥界の王ハデスの怒りを買ったギリシア神話の名医・アスクレピオスを想起させる。
 
 スペル解説中のゲームメーカーとは、ライジング(RAIZING)のこと。
 1993年設立のゲーム開発会社で、販売担当のエイティングと共に設立されたが、
 2000年にエイティングと合併、その後会社は解散した。
 主にアーケードゲームを製作し、質の高いシューティングゲームを開発したことで知られる。

 
 
操神 「オモイカネディバイス」
 
 [スペル]
 
 永琳のスペルの一つ。
 中央ほどに位置した使い魔からほぼ全方位に暗弾が放射されるが、
 狭い一部の角度だけ安全地帯となる。
 その状態で使い魔は放射方向をゆっくりぐるりと巡らせながら
 これまたゆっくり下降してゆく。
 使い魔の示す安全ルートを辿りながら、永琳から放たれる粒弾群をかいくぐる。
 
 〜道を示す頭脳。
  むしろ邪魔。〜
 〜とてもじゃないけど思慮のある装置とは思えない。〜
 (スペル解説より)
 
 ・device …「装置、仕掛け、考案物、工夫、計画、方策、図案、意匠、模様」
 
 オモイカネについては、八意永琳の項を参照。
 岩戸隠れの段では神々を指揮する神であったことから「操神」だろうか。
 ディヴァイスは単に装置として以外にも、
 権謀術数に長ける永琳に似合う意味が掛けられている気がする。
 
 Omoikane Device.
 「思兼神装置」

 
 
神脳 「オモイカネブレイン」
 
 [スペル]
 
 永琳のスペルの一つ。
 オモイカネディバイスの上位版。Hard, Lunatic にて使用。
 使い魔からはレーザーも照射される。
 暗弾の連射とレーザーの掃射の性質の違いを実感できる。
 永琳からの粒弾群もより厄介に。
 
 〜道を示す頭脳。頭は良いんだろうけどね。〜
 (スペル解説より)
 
 人工頭脳装置よりも脳のニューラルネットワークは神秘。
 脳を模した装置、そのオリジナル。
 
 Omoikane Brain.
 「思兼神脳」

 【改訂用の備忘録】
 女神転生シリーズに登場のオモイカネは
 脳をモチーフにしたグラフィック。

 
 
天呪 「アポロ13」
 
 [スペル]
 
 永琳のスペルの一つ。
 永琳を中心に赤と青の暗弾群が爆発的に広がり、一時停止後粒弾に変じる。
 粒弾は全て永琳に向け収束し、極複雑系交差弾幕となって降り注ぐ。
 
 〜13は不吉な数字。
  それが何故失敗したのかは、月の民だけが知っている。〜
 〜いつも思うんだけど、アポロってアポロンの事じゃないの?
  アポロンって太陽の神でしょ? そのまま太陽に突っ込めばいいのに。〜

 (スペル解説より)
 
 アポロ計画のうち、7回(アポロ11号〜17号)が月着陸ミッションであり、
 その中でアポロ13号は事故のため唯一月着陸を果たしていない。
 アポロ13号の概略は以下の通りである。(ちなみに日付は協定世界時に基づく)
 1970年4月11日、ケープカナベラルのケネディ宇宙センターから打ち上げられる。
 同4月14日、地球から321,860km 地点で液化酸素タンクNo.2の爆発事故発生。
 噴射には危険が伴うため、月の重力を利用したターンを行う。
 この時、4月15日、地球から最大400,171km 、月には254.3km の距離であった。
 4月17日、南太平洋上に着水。飛行士達は奇跡の生還を遂げる。
 
 打ち上げの二年前の時点で、液体酸素タンク内のヒーター部品を規格をとり違えて
 設置していたことが爆発の原因と後の検証で明らかとされている。
 起動時のショートによって火災が発生し、酸素タンクが爆発、
 その爆発により2基の酸素タンク、水素タンクを含むセクタ4が吹き飛んだと考えられている。
 宇宙船の酸素は、乗組員の呼吸の他にも、コンピュータや暖房などのエネルギー源として
 燃料電池に用いられる他、その結果生み出される水も重要なものであり、
 宇宙空間での爆発、酸素の喪失など実にクリティカルな事故であった。
 
 Apollo 13.
 「アポロ13」として映画化されており、有名。
 
 アポロ(Apollo)は、ローマ神話でほとんど太陽神として信仰されるが、
 もともとはギリシア神話のアポロン(Apollon)に由来し、
 アポロンは詩・音楽・予言などを司る美青年の神である。
 ギリシア神話においてもヘリオスと混同されて太陽神とされたり、
 一部では医術の神としても信仰された。
 主神ゼウスの息子で、アルテミスとは双子。
 アルテミスも元は山野の狩猟の女神であったが、
 セレネ(サイレントセレナのセレナ)と混同されて月神とされた。
 月と関係のあるヘカテと混同あるいは同一視されることもある。
 ちなみに、旧ソ連の無人月探査計画はルナ計画であった。
 当初はアメリカの一歩先を進んでおり、アポロ計画の方が後進である。
 ルナはローマ神話の月の女神で、ギリシア神話のセレネと同一視される。
 旧ソ連の方はちゃんと月にちなんだ計画名だった。

 
 
秘術 「天文密葬法」
 
 [スペル]
 
 永琳のスペルの一つ。てんもんみっそうほう
 暗弾列を勢いよく全天に向けて放った後、術式開始。
 画面下方に自機の動くフィールドを残して周囲に使い魔をうずたかく積み上げる。
 使い魔を配した後は大玉を定期的に左右あるいは自機照準で発射するだけであるが、
 大玉は使い魔を刺激し、使い魔から暗弾がばら撒かれる。
 
 〜大層な名前だけで、理屈も無く空を弄る永琳。〜
 〜永琳が用意した偽物の月は、本物より豪華。
  でも、幽々子いわく「古めかしい月」らしい。昔は豪華だった?〜
 〜宇宙には浪漫があるよね。でも車椅子の男の宇宙は難解。
  もはや彼の論は彼にしか訂正できない。妄想だとしたら凄すぎる。〜
 (スペル解説より)
 
 ・天文 …「天体に起こる様々な現象。天空に起こる現象を見て吉凶を占うこと。その術」
 ・天文学 …「天体の位置・運動・性状・組成・進化など宇宙の構造・進化などを研究する学問」
 ・密葬 …「ひそかに死者を葬ること。特に、身内だけで内々に葬式をすること」
 
 宇宙空間をいじり、攻撃を為す無茶な術。
 しかし、理屈はないらしい。
 音の伝播しない宇宙においてひっそりと死をもたらす。
 宇宙に抱かれて冷たくなる。
 
 ちなみに、スペル解説にある車椅子の男とは
 イギリスの理論物理学者、スティーブン・ウィリアム・ホーキングのこと。
 「ホーキング、宇宙を語る」など一般向けの啓蒙書で知られる。
 専門的にはブラックホールの蒸発や宇宙論などの理論で知られ、
 一般相対性理論が破綻する特異点の存在を証明したり
 一般相対性理論と量子力学を結びつけた量子重力論を提示している。
 膨張宇宙を時間的に遡れば、非常に高エネルギー高密度の一点に収束してしまい、
 それはブラックホールの中心の様に特異点とされる状態になってしまうが、
 そこに量子力学のトンネル効果を当てはめて宇宙誕生を論じたり、
 ブラックホールの事象の地平付近での量子の振る舞いからホーキング輻射を予測したりと
 宇宙論の発展に偉大な寄与をしている学者。
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症しており、重篤な筋肉萎縮と筋力低下をきたしている。
 運動系が広範に障害されて、症例の半数ほどは発症後5年以内に呼吸筋麻痺により死亡する
 進行の極めて速い病気である。
 ホーキングの場合は進行が遅い部類であるのか治療が功を奏しているのか
 発症から随分経過しても存命であるが、それでも手足の自由は利かず車椅子生活で、
 発音も困難であることから車椅子に音声合成装置を取り付けて
 マシンボイスでコミュニケーションを取っている。
 
 (以下の文章は、2006年5月21日に頂いた拍手メッセージによるところが大きい。多謝)
 
 また、陰陽寮の天文博士の仕事として「天文密奏」があった。
 天文の変化をいち早く察知して吉凶を占い、これを天皇に奏することである。
 占星術の書を読むことを禁じられた天文観測者からの記録は
 漏洩が禁じられており、陰陽寮の者がこれを判じて
 もし何らかの異変があれば吉凶を占って奏する。
 季ごとに封をして中務省に送り、国史に記入する。
 こちらには占言を記載しない。
 陰陽師は呪術、占星術、天文学などなどに通じており、
 かの安倍晴明も記録の上では52〜54歳の間に天文博士となり天文密奏を行っている。
 
 天文道や陰陽五行説、十干十二支に基づいて、
 日付・曜日・二十四節気・十二直・選日・二十八宿・九星・暦注下段などを定める暦注は、
 暦に記載される日時・方位などの吉凶、その日の運勢などの事項のことで、
 科学的・天文学的な事項から非科学的・迷信的なものまで含まれる。
 永琳の服の左胸には北斗七星が描かれる。
 北極星を中心に天球上を回転する北斗七星に着目し、十二支による方位と組み合わせて
 吉凶判断を行うものが十二直である。
 昭和初期までは暦注の中で最重視されていた。
 まぁ、永琳の服には実際とは対応しない方向を向いたカシオペア座も描かれており、
 十二直まで進むのは深読みかなぁ。
 単純に暦(こよみ)、というところか。
 暦は未来を扱うものであり、予言的な性格から占星術と大きく関わる。
 こよみの語源は、日読み(かよみ)であるとされ、
 日本神話の月の神、月読(ツクヨミ)との対比で永琳に当てはめたか?
 というのは何かあからさまに深読み…(汗)
 
 理屈なく、不思議な力で天文現象を弄り、
 凶の宿命を相手にもたらす術だろうか。
 十二直の満(みつ)は動土・服薬が凶、定(さだん)は旅行・訴訟が凶。
 二十八宿の虚(とみてぼし)は相談・造作・積極的行動に凶、
 危(うみやめぼし)は衣類仕立て・高所作業に凶。
 八専、十方暮、不成就日、三隣亡、三伏、受死日、十死日、五墓日、帰忌日、血忌日などなど
 まったくろくでもない運勢に?
 地獄に落ちるわよ。

 
 
ヴォヤージュ 1970
 
 [音楽]
 
 Final ラストスペルのテーマ。
 「蓬莱の薬」「永夜返し」で流れる。
 旅人
  でも人間は旅をしている。妖怪はいつもお留守番であり、
  人間の旅行のスーブニイルなのだ。〜

 (曲解説より)
 
 詳しくは、「ヴォヤージュ 1969」と「アポロ13」を参照。
 ヴォヤージュ 1969はアポロ11号、人類が初めて月に降り立った。
 ヴォヤージュ 1970はアポロ13号の事故、月の呪い。
 
 スーブニイルとは、フランス語 "souvenir"
 記念品、記念、思い出、土産物、の意。
 月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
 舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老をむかふる物は、
 日々旅にして、旅を栖(すみか)とす。
 ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
 淀みに浮ぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。
 世中にある、人と栖(すみか)と、又かくのごとし。
 短命で移ろいやすい人の世の中。

 
 
禁薬 「蓬莱の薬」
 
 [スペル]
 
 永琳のラストスペル。ほうらいのくすり
 輝夜が現れ、ラストスペル発動。
 永琳の創薬術と輝夜の永遠の能力が織り成す、禁断の薬。
 制限時間を避けきる回避特化弾幕。
 小さな菱形および長亀甲を描くレーザーが終始、永琳を中心に張り巡らされる。
 第一形態は永琳からの全方位暗弾ばら撒き。暗弾は途中で粒弾に変化する。
 第二形態は、永琳から暗弾と錠剤弾が放射されるオモイカネディバイス風味。
 途中、自機狙い三方向楔弾も追加される。回る。
 第二形態以降、輝夜から1秒ごとに得点アイテムが落される。
 第三形態は、緩急差のついた全方位暗弾。途中で粒弾に姿を変える。
 第四形態は交差系の全方位暗弾。これも途中から粒弾。
 第五形態はまたも全方位暗弾。規則正しく等間隔で全方位に打ち出される暗弾と、
 第一形態同様ばら撒かれて途中で粒弾に変化する暗弾のブレンド。
 高密度・高速の弾幕だが、輝夜の永遠の能力により時間の流れはスローになる。
 
 〜ストーリー上重要なポイントでもある蓬莱の薬。
  気になるのは苦いのかどうかだけだ。〜
 〜ここでの蓬莱は、蓬莱で取れる〜、の意味もあるが、本当は
  輝夜が自分の名前を使っているだけかも。輝夜の薬でも同じ。〜

 (スペル解説より)
 
 蓬莱については、以前の事典に記載あり;咒詛 「首吊り蓬莱人形」
 
 良薬は口に苦し。
 きっとショック死するほど苦いに違いない。



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