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穢き世の美しき檻
 
 [タイトル]
 
 Stage5のタイトル。きたなきよのうつくしきおり
 竹林の奥にひっそりと佇む屋敷、永遠亭。
 幻想郷の人妖にも知られていないその佇まいの奥に
 この異変の真相が堅く護られていた。
 長い廊下と数多くの封印された扉、
 地上の兎と月の兎の迎撃。
 
 美しく神聖なる月の都やその民からすれば、
 地上は穢い世界であり、そこに這う地上人ならびに妖怪は
 高位なる月人よりも位の低い存在である。
 穢い地上の中で、姫を秘匿するためだけに組まれる大規模な術式。
 月をすり替え、不完全な満月とし、地上と月を結ぶ通路を改変し、
 永い廊下と無限の扉を作り出し、全ての扉に強固な封印術を施す。
 姫を隠す、美しく巨大な術式密室。
 
 タイトルと共に以下の字幕が現れる。
 「『穢き所に、いかでか久しくおはせん。』
  そういうと閉ざされた扉は一枚残らず開き――」

 
 これは本作にも関わりが深い「竹取物語」の一場面。
 竹取の翁や帝はかぐや姫を月に帰すまいと
 屋敷の内、扉の奥に匿い、家人や帝の派遣した軍隊総勢2000人で護りを固める。
 しかし、降臨した天人達を前にして、戦意を無効化され、
 武力や人員は何の効果ももたらさなかった。
 「いざ、かぐや姫。穢き所にいかでか久しくおはせん」
 (さあ、かぐや姫。こんな不浄な所にどうして長い間いらっしゃるのか)

 と天人が言うと即座に、人が触れてもいないのに戸や格子はことごとく開いてしまう。
 それを受け、かぐや姫は自ら屋敷外に歩み出で、月へと帰るのであった。
 
 東方永夜抄的にはこのあと月の使者の一人であった永琳と輝夜は結託し、
 月の使者を皆殺しにして地上に隠れ住む。
 永琳も輝夜も前回の一連のやり取りから月の民のやり口を知っているため、
 この度の「地上の密室」づくりにはさらにその対策を強化している。
 ダミーの扉を多数設置し、それらも含めてさらに封印術式を施す徹底ぶりだ。
 また、狂気の赤い瞳を備えた兎軍を編制し前衛に当ててもいる。
 月の狂気への耐性を持つため、精神攻撃で戦意をそがれることがないのだ。

 
 
シンデレラケージ 〜 Kagome-Kagome
 
 [音楽]
 
 Stage5のテーマ曲。
 〜日本のシンデレラを隠す檻は、
  無理に連れ出そうとしても、絶対に姫は出て来ない。
  それは篭目の所為である。
  しかし、天人の一言で全ての扉が開かれてしまう。〜

 (曲解説より)
 
 ・cage …「鳥かご、檻、ケージ、監獄」
 
 Cinderella Cage.
 「シンデレラの檻」
 シンデレラは継母や姉達からいびられこき使われていたが、
 別に幽閉はされていない。
 日本の10世紀末頃の作品である「落窪物語」も継母からいじめを受ける構図が
 シンデレラと似通っているものとされるが、
 こちらは主人公の姫君が幽閉されたりもするので
 「」という観点ならばこちらの方が近いだろうか。
 しかしながら、シンデレラのストーリーでポイントとなるのは
 午前0時で解けてしまう魔法である。
 午前0時になれば魔法は解けてしまうという制限のため、
 自分の望んだ空間から自らの意思で去らねばならない。
 一方、竹取物語では、中秋の名月の下、子の時(午後11時から午前1時)に天人達は現れる。
 自分を愛してくれる人々、育ててくれた両親のもとから、
 ささやかで美しい日々から、自らの意思で去らねばならないのは
 午前0時に魔法が解けてしまったからか。
 
 ちなみに、永夜抄ステージ1開始は子の刻、午後11時である。
 ほぼ同時に永夜の術が行使され始めたとするならば、
 中秋の名月の子の時に異様なる永夜の異変が幻想郷を包んだことになる。
 かつて月の使者が地上に降りたのと同じ時間に大きな異変が起こる。
 この符合は永遠亭の面々を身構えさせる。
 (月の使者が来た!)
 タイミング的に、永夜の術は月の民の仕業と解釈され、
 月と地上のルートを長時間確保するための永遠の満月の術と誤解されたに違いない。
 しかし、子の時から随分と時間が経ち、異変も持続しているが使者は来ない。
 ようやく永遠亭を訪れる者があった時、鈴仙は思わず口にするのだった。
 「遅かったわね」
 
 カゴメカゴメについては、東方紅魔郷でのフランドールのスペル参照。
 禁忌 「カゴメカゴメ」
 
 そのカゴメに加えて、竹の籠(かご)の籠目はさらに特別である。
 竹は呪力あるいは神秘的な力を持つと信じられていた事はStage4のステージタイトル解説で
 述べたことであるが、竹で編んだ籠は呪具でもあった。
 籠目は邪霊の侵入を拒む聖なる目であったのだ。
 籠に籠()もる姫は、すなわち竹林に籠もる者でもあり、
 幽々子の言う「龍」とは輝夜を指す。
 五つの難題の一つ「龍の頸の玉」ではなく、輝夜そのものを竹の籠の龍とみたのである。
 
 竹取物語においても、竹から見出されたかぐや姫は
 最初は3寸(およそ9センチ)の大きさであった事もあり、の中で大切に扱われた。
 絶世の美女に成長して以降も、屋敷の内に始終引き籠もっていた。
 噂を聞きつけた男どもが昼夜問わず年中屋敷を訪れ、屋敷の周りをうろつき、
 あわよくば屋敷に侵入せんとしていたため、匿われていたとも言える。
 帝であってもかぐや姫を一目見るためだけに策を弄している。
 結局、籠もり続けたかぐや姫も、天人の一言であっさりと連れ出されてしまうのだった。
 「天人の一言」については前項参照。

 
 
因幡てゐ
 
 [キャラクター]
 
 Stage5の中ボス。いなばてゐいなばてい)。
 「地上の兎」
 健康に気を使って長生きするうちに妖怪化した妖怪兎。
 永遠亭に住む大量の兎(地上の兎)のリーダー格。
 狡猾な詐欺師。
 ラストワードではスペルとカットインイラストを持つが、
 ストーリーではスペルも会話も無く、
 中ボスとして現れて弾幕を仕掛け、撃墜される前に退却する。
 人間を幸運にする程度の能力を持つ。
 
 〜根っからの詐欺師。人を騙す度に報復を受けるが、全く懲りてない。
  耳は白く、髪の毛は黒い……。これは白兎なのかどうか判らない。〜

 (ラストワード「エンシェントデューパー」のスペル解説より)
 この解説と因幡の姓からすると、やはり「稲羽の素菟いなばのしろうさぎ)」が由来か。
 古事記に描かれる、大国主のエピソードに現れるもので、
 大国主(当時は若い頃で、名は大穴牟遅神(おほなむぢのかみ))が出会った傷ついた兎の話。
 兎の言うには、サメ(ワニザメ)達を騙してその背を渡り、
 沖の島(あるいは淤岐島)から稲羽を目指したが、渡る最後に嘘であるとばらしたところ
 サメに皮を剥がされてしまった、とのこと。
 (しろうさぎの「素」とは裸の意とされる)
 そこへ通りがかった八十神(やそのかみ)に嘘を教えられ、
 海水で身体を洗って良く風に当たったところ、皮が裂け、全身を傷んでいる。
 大国主は、その頃は八十神の荷物持ちで、八十神のしばらく後に通りがかった。
 大国主の教えにより、淡水で身を清め、全身に生薬(蒲黄)を施したところ
 傷は元通り癒えたとされる。
 
 因幡は鳥取県東部にあたる。
 古事記には稲羽国と記載される。
 また、稲葉とも書かれるが、7世紀に因幡国が成立したとされる。
 第14代天皇の皇后、神功皇后(じんぐうこうごう)が鳥取県東部の駟馳山(しちやま)の
 麓でにわかに産気づき、山に仮御殿を作り休んだとされる。
 七日七夜休んだので「七夜山(しちやま)」だそうだ。
 その際に、軍船に立てる紅白二流の幡(はた)を山上に立てたことから
 「幡に因む」の意味で「因幡」の国名になったのだとか。
 
 「てゐ」は由来不明。
 は現代仮名遣いでは使われない、わ行い段に位置する仮名。
 昔は実際にウィという発音で、いとゐは区別されたと考えられている。
 「てゐ」という古語はあるのだろうか?
 〜している、の意で、〜てゐる、の表現は古文で頻繁に目にするが…。
 「竹取物語」では、かぐや姫登場の一番最初の分に見られる。
 「それを見れば、三寸ばかりなる人、いと美しうてゐたり(居たり)。」
 
 干支は、古代中国で日付を記録するのに十二支と十干を組み合わせて利用したもので、
 現在もあまり一般化はしていないが、「ひのえうま」などを生み出す組合せである。
 十二支の卯(うさぎ)は第4番目である。
 十干の第4番目には丁(てい)が当たる。
 ちなみに、十干の第1〜3番目は本作の刻符ノルマの達成ランクに用いられている。
 甲・乙・丙
 
 幸運の能力は、「ウサギの足」に基づくであろうか。
 欧米では、ウサギの足は幸運のお守りとして使われてきた。
 紀元前600年以前の西ヨーロッパから既に幸運のアイテムと信じられてきており、
 現在もなお欧米では人気が高く、イギリスのウェールズでは現在も洗礼に用いられ、
 赤ん坊に幸運な人生を与えるためにその頭をウサギの足で擦る習慣が残っている。
 地下に穴を掘る、大きな目と耳、多産であるなどの特徴から、
 地下の霊と交流できる霊的な性質を持ち、健康と繁栄と豊穣の象徴でもあると考えられている。
 その中でも、ウサギの足は小さくて簡単にしなびることからお守りとして手軽に用いられる。

 【改訂用の備忘録】
 一般には白兎とされる因幡の素兎。
 鳥取県にあるのは白兎海岸、白兎神社である。
 しかし、正しくは素兎と言われるように、てゐも黒髪で完全にには白くない。
 白は英語で white、ローマ字と見て発音(またはキーボードでローマ字入力)すると
 うぃて。すなわち、ゐて。
 素兎は白ではないのでひっくり返って、てゐ。
 関連は不明。
 (2008年5月5日の拍手メッセージに拠ります。多謝)

 
 
鈴仙・優曇華院・イナバ
 
 [キャラクター]
 
 Stage5のボス。れいせん・うどんげいん・いなば
 「狂気の月の兎」
 月に暮らす妖怪である種族・月の兎。
 姫を匿う術式の手伝いを担い、扉の封印と侵入者の迎撃を担当する。
 狂気の赤い瞳で相手の感覚を乱し、
 平衡感覚や視覚を狂わせるばかりか、弾幕の実体すらも狂わせる。
 狂気を操る程度の能力を持つ。
 
 数十年前、月に地上人が攻め入った折に
 戦争のどさくさに紛れ、鈴仙は仲間を見捨てて命からがら地上に逃げて来た。
 人間以外が住む幻想郷の噂を聞きつけ、おそらくはその能力で幻想郷の大結界の波長をずらし
 なんとか幻想郷に入り込むことに成功する。
 輝夜・永琳の住む永遠亭に匿われる身となり、永琳に師事する。
 そして現在、
 月の兎同士の念話をその耳で受信する。
 月に基地を作ろうとする地上人と対立する月の民の溝は深まり、
 全面戦争に突入しようとしていることが判った。
 ついては鈴仙を戦力に引き戻そうと、次の満月に迎えをよこすと言う。
 永遠亭に住む鈴仙も永琳も輝夜も月の民から見ればお尋ね者であり
 鈴仙だけでなく輝夜も隠さなければならないと永琳は言う。
 月人の能力は驚異であり、大術式を施さなければならない。
 弟子である鈴仙は永琳を手伝い、封印を行ってゆく。
 あれ? 私は匿ってもらえないのかしら…?
 (永琳は、鈴仙の前では鈴仙と姫を匿う術式と言っているが、
  そうでない時は「姫のため」と言い、
  たぶん鈴仙は上手いこと口車に乗せられているのだ)
 
 本名はレイセン。
 地上人にカムフラージュするため、漢字を当てている。
 レイセンは「冷戦」からだろうか?
 後述のスペル解説で、「赤」の話題に共産主義、その対比として資本主義と思しき表記がある。
 東西冷戦の最中、白熱した宇宙開発競争の中、アポロ11号は月への一番乗りを果たした。
 また、平安時代前期の僧に「霊仙(りょうせん)」があった。
 最澄や空海と共に中国に渡り、三蔵の称号を得、帰国することも無く彼の地で生涯を終えた。
 日本人で唯一「三蔵」の尊称を得た僧である。
 経・律・論、3種類の仏典に精通した学僧に与えられる尊称が三蔵であり、
 「西遊記」の玄奘三蔵が有名。
 また、霊仙にちなむ寺院として「霊仙院」がある。
 
 優曇華院は、永琳がつけた愛称。
 優曇華は、サンスクリットの udumbara の音写「優曇波羅」の略で、
 インドの想像上の植物である。
 三千年に一度その花が咲き、その時には転輪聖王が出現すると言われる。
 転じて、極めて稀なことを例えて優曇華と言う。
 また、実在のクワ科の常緑高木を指す。
 果実は食用で、ヒマラヤ山麓やセイロン島に生える。
 他に、バショウの花を指すこともある。
 優曇華はまた、「竹取物語」にその単語が登場する。
 かぐや姫に5つの難題をふっかけられた5人の求婚者の一人、車持(くらもちの)皇子が
 蓬莱の玉の枝を入手したと噂になった時、「車持皇子は、優曇華の花持ちて上り給へり」
 (車持皇子が優曇華の花を持って上京なさる)
と騒ぎになったと描写がある。
 これを聞いた時、かぐや姫は負けを覚悟したそうだ。
 このことから蓬莱の玉の枝=優曇華の花と同一視されることもあるが、
 ここ一箇所しか用いられない表現で、同一視に慎重な説もある。
 「うつほ物語」では蓬莱にある不死薬を優曇華としている。
 
 イナバは、輝夜がつけた愛称。
 むしろ輝夜は全ての兎をイナバと呼んでおり、特に区別はない恐れもある。
 名前としての表記はカタカナで、てゐの姓・因幡とはいちおう異なる。
 
 「月の兎」は何故かしばしば日本の妖怪事典だとか妖怪一覧に名を連ねる。
 月と兎の関わりに言及する伝承は主にアジアに集中しており、
 特に日本の民間伝承は月と兎の関連が民間にまで深く浸透している。
 月面で餅をつくし、十五夜の月を見て跳ねる。
 玉兎(ぎょくと)は、月に兎が棲むという伝説から、月の兎や、月そのものを指す言葉である。
 「今昔物語」には、次の様にある。
 昔天竺に猿、狐、兎が居た。
 三獣の前に老人(帝釈天が獣たちの善心を試そうと身を変えたもの)が現れ、
 老いて力が無い自分を養って欲しいと頼んだ。
 そこで、猿は果物・野菜を集め、狐は供え物などの飯・魚貝類を集めて老人に与えるが、
 兎は何も見つけることができない。
 兎は思案した末に、「どうぞ私を食べて下さい」と火の中に飛び込む。
 予想を越えた心に帝釈天は元の姿に戻り、
 火に飛び込んだ兎の姿を皆に見える様にと月の中に映したとされる。

 【改訂用の備忘録】
 京都府京都市右京区嵯峨北堀町に曇華院がある。
 別名を竹の御所。現在は通常非公開。
 (元ネタスレ2の911より)
 
 銘仙(めいせん)と呼ばれる種類の絹織物がある。
 主要な産地の一つが秩父である。
 秩父銘仙の資料館である 「ちちぶ銘仙館」 は
 八意思兼命を主祭神の一柱に祀る 「秩父神社」 から 1km 程度の距離にある。
 銘仙と鈴仙が字面で似ており、緋想天では瓦斯織という織物関連のスペルも持つ。

 
 
狂気の瞳 〜 Invisible Full Moon.
 
 [音楽]
 
 鈴仙のテーマ。
 不可視の満月
  月に居る奴はみんな狂っている事になっているが、
  これは波長が違うから、常人にはおかしく見えるだけ。
  赤より赤くなれば、それは赤外線。
  人間には不可視なのです。〜

 (曲解説より)
 
 東方シリーズでは赤い瞳を一般に狂気の瞳とし赤を狂気の象徴としていると思われる。
 兎の赤い目や、赤い月を狂気のものとし、
 地上の兎よりも特に強力な月の兎の瞳、鈴仙の瞳を狂気の瞳としている。
 lunacy (狂気、精神錯乱)、lunatic (狂人、精神錯乱者、気の狂った、狂気の)
 という様に月は狂気である。
 特に東方永夜抄では、隠された真実の月にその狂気をあてはめている。
 月に頼る妖怪も真の月の狂気には精神が昂揚するなり感覚が狂わされ、
 感受性の強い人間は狂気の瞳をその眼に宿し、狂ってしまう。
 真実の月が可視となった際は直視したりその光を浴びすぎることは危険である。
 「竹取物語」においても、月を見ては物思いに沈むかぐや姫に対して
 「月の顔見るは忌むこと」と家人から注意の声が掛けられる。
 女性、特に妊婦が満月を見つめることを善しとしない伝承は世界に散見される。
 
 曲解説を少し補足。
 可視光は、波長の長い光の赤から波長の短い光の紫まで、
 一般的に言う所の虹の七色が分布する。
 可視光の波長が長くなると、その色は赤に近づく。
 これをレッドシフトと呼ぶのだが、これが解説文中の「赤くなる」である。
 赤よりもさらに光の波長が長くなると、その光は可視光の領域から外れ、赤外線と呼ばれる。
 可視領域から外れた、不可視の光。
 
 ちなみに、ウサギ目全64種において赤い目のウサギは存在しない。
 突然変異のアルビノを品種として固定させた日本白色種が多数飼育される様になったため
 ウサギとは一般に白い毛で目は赤いとする誤解が広まってしまったとされる。
 アルビノとは色素を持たない突然変異種であり、色素が無いため毛は白く、
 虹彩も透明であるため眼底の血管の赤が映え、それが目の色として認識されてしまう。

 
 
波符 「赤眼催眠(マインドシェイカー)」
 
 [スペル]
 
 鈴仙のスペルの一つ。( )内が読み仮名。
 円形に放射された全方位銃弾が、狂気の瞳の作用により左右2つの輪に分離される。
 狂気の作用の間は銃弾もすべて幻視となるが、当たり判定も無くなる。
 
 〜抗い難い、狂気の赤い瞳。
  全ては幻視だ。幻視に惑わされるな。〜
 〜幻視中は、真直ぐのはずの物が別の方向に進んでいるように見える。
  でも実際は幻視は当たらない。〜
 (スペル解説より)
 
 ・催眠 …「眠くなること。人為的に眠気を催させたり睡眠に似た状態にすること」
 ・shake …「振る、揺さぶる、動揺させる、ぐらつかせる、乱す」
 
 ここでは催眠術に近い精神干渉。
 赤い瞳の狂気を介する暗示により、幻視を引き起こす。
 というか、実際に銃弾の位置はずれるが。
 
 Mind Shaker.
 「精神振盪術」

 
 
幻波 「赤眼催眠(マインドブローイング)」
 
 [スペル]
 
 鈴仙のスペルの一つ。( )内が読み仮名。
 赤眼催眠(マインドシェイカー)の上位版。Hard, Lunatic にて使用。
 漢字は同じで読みが異なる。
 
 〜兎の目を見た人間の心が亜光速で堕ちていくから、兎の目は赤い。
  もしくは共産主義だから。〜
 〜精神を痛めつけすぎると、人間は体だけ残る。抜け殻だ。
  人間は体が資本? いやいや精神が資本でしょう。〜

 (スペル解説より)
 
 ・blow …「吹き動かす、吹きつける、吹く、爆破する、破壊する」
 
 Mind Blowing.
 「精神放逐」
 ブロー(blow)には、殴打、一撃、強打、打撃、精神的打撃の意味もあるが、
 これらの動詞としての意味、殴打するとか打撃を与えるの意味は持たない。
 -ing を付けることができる動詞としての意味は上記の様になり、
 爆破、破壊についても爆風を伴う破壊のニュアンスである。
 ここでは精神を吹き飛ばす、あるいは追い出すのニュアンスを元に意訳した。
 
 スペル解説の補足。
 亜光速で堕ちるから赤い、というのは光のドップラー効果を指す。
 音のドップラー効果は一般にも救急車などのサイレンで馴染み深い。
 音源の近づく場合の音の観測では、観測者からは相対的に音の波長が縮められていると観測され
 音源が遠ざかる場合は音の波長が伸びて観測される。
 波長が短いと高音、高周波の高い音であり、
 波長が長いと低音、低周波の低い音である。
 近づくサイレンの音は高音で、通り過ぎて遠ざかる音は低音となるのがドップラー効果である。
 音の波と同様に光の波についても、観測系と光源の速度差によるドップラー効果が現れる。
 亜光速で遠ざかれば光の波長は伸び、前述のレッドシフトにより光は赤くなる。
 アニメ「トップをねらえ」においても亜光速で近づく光源は青い光で、
 観測者を通り過ぎて遠ざかる時には赤い光が輝いて表現されている。
 
 赤→血→革命の連想から、一般に革命・社会主義・共産主義を象徴する色である。
 赤から共産主義を連想し、共産主義に対する資本主義が連想される。
 共産主義と資本主義の対立は、鈴仙の項にも記したが、
 冷戦と宇宙開発競争、ひいてはアポロ計画などで本作に関わる。

 
 
狂符 「幻視調律(ビジョナリチューニング)」
 
 [スペル]
 
 鈴仙のスペルの一つ。( )内は読み仮名。
 画面中ほどを左右から使い魔がしきりに横切る。
 使い魔は上下方向に銃弾を放ちつつ移動するため、銃弾群の斜線で網目が形成される。
 狂気の瞳の作用により左右どちらかに銃弾列は平行移動する。
 狂気の作用の間は銃弾もすべて幻視となり、当たり判定も無くなる。
 Easy はそうでもないが、Normal では幻視を利用しなければ不可避。
 
 〜人間と妖怪の波長合わせ
  波長が合わないから幻視が起こる。あの兎は波長を外すのが上手い。〜

 (スペル解説より)
 
 ・幻視 …「実際にはないものが、あるように見えること」
 ・調律 …「楽器の各音の高さや音色を正しくととのえること。調音」
 ・visionary …「先見の明のある、予見力のある、空想的な、幻の、幻想的な、非現実的な」
 ・tuning …「調律、同調、波長調整」
 
 Visionary Tuning.
 「幻視調律」

 
 
狂視 「狂視調律(イリュージョンシーカー)」
 
 [スペル]
 
 鈴仙のスペルの一つ。( )内は読み仮名。
 幻視調律(ビジョナリチューニング)の上位版。Hard, Lunatic にて使用。
 銃弾列とは離れてやや遅れて降下する単独の銃弾が織り交ぜられる。
 
 〜外れた波長は実は当たらない。ただの幻視だ。
  むしろ問題は、相手が急に波長を戻す事にある、って判ってるって。〜

 (スペル解説より)
 
 ・illusion …「錯覚、幻想、幻覚、幻影、幻、薄い網状の絹」
 ・seeker …「捜索者、探求者、追求者、追尾装置」
 
 Illusion Seeker.
 「幻覚の探求者」
 鈴仙の狂気を操る力で強化された幻視。
 波長を調節し、幻視に至る狂気を見出す。

 
 
懶符 「生神停止(アイドリングウェーブ)」
 
 [スペル]
 
 鈴仙のスペルの一つ。( )内は読み仮名。
 画面四隅に配された使い魔からそれぞれ全方位銃弾が放たれる。
 Normal では四隅の使い魔は3体ずつである。
 複雑な弾幕だが、狂気の瞳の作用により銃弾群は一時停止する。
 狂気の作用の間は銃弾もすべて幻視となり、当たり判定も無くなる。
 
 〜普通の人間に感知出来ない位の長い波長。
  幻視は止まってみえる。〜

 (スペル解説より)
 
 ・idle …「怠ける、怠惰な、使用されていない、価値のない、つまらない」
 
 「生神」は、これまでのスペルの「マインド」と関連した「精神」のもじりであろうか。
 上位版では生神と書いて「マインド」と読ませるようだし。
 生神(いきがみ、生き神)ならば、人間の形でこの世に現れてくる神、
 または、神の様な崇高な心を持った徳の高い人、を意味する。
 また、キリスト教の中でも東方正教会に属する日本ハリストス正教会では
 聖母マリアを生神女(しょうしんじょ)と称する。
 生神(うるかみ)と読めば、石川県羽咋郡の地名である。
 
 Idling Wave.
 「怠惰なる波動」
 アイドリングは、車のエンジンの空転を指すことでおなじみの語である。
 が、ここでは「怠惰」の意味である。
 というのも、の意味するところが「怠惰な、無精な、だるい、物憂い」であるから。
 狂気の瞳でいったん弾幕は当たり判定を失い停止する、それを指す。
 ちなみに、アイドリングストップ宣言は直訳すると
 アイドリングしながらの駐車をするぜ宣言となるので注意だ。

 
  
懶惰 「生神停止(マインドストッパー)」
 
 [スペル]
 
 鈴仙のスペルの一つ。( )内は読み仮名。
 生神停止(アイドリングウェーブ)の上位版。Hard, Lunatic にて使用。
 四隅からの銃弾群に加えて、
 狂気の瞳で弾幕が停止される少し前に、すべての使い魔から自機狙い銃弾が乱射される。
 
 〜この弾幕って、弾の中の人がのんきなんだよね。
  ちょいと一休み、なんて言っているからプレイヤーに逃げられる。〜

 (スペル解説より)
 
 ・懶惰らんだ)…「めんどうくさがり、怠けること。怠惰」
 
 Mind Stopper.
 「精神停止」

 
 
散符 「真実の月(インビジブルフルムーン)」
 
 [スペル]
 
 鈴仙のスペルの一つ。( )内は読み仮名。
 全方位に密度の高い銃弾群と、いくつかの使い魔を放射する。
 使い魔は飛程に弾丸を配置していく。
 狂気の瞳の作用により、画面上から全ての弾が消え失せるが、別次元で飛行しており
 狂気の作用後は少し時間が進んだ位置にすべての弾が出現する。
 
 〜完全に狂うと常人には見えなくなる、本当の月はいつも狂気なのだ。
  既に幻視ですら捕らえる事が出来ない。〜
 〜紙一枚ずれただけでも世界は消える。
  本当の満月は、狂っているからこそ目に見えない。新月?〜
 〜「つーか幻視さえも見せなきゃ、ただの別次元での攻撃にしかならないじゃん。」
  と、慌ててたまに波長を戻すオッチョコチョイな月の兎。〜
 (スペル解説より)
 
 英題は「狂気の瞳 〜Invisible Full Moon」に同じ。
 真実の月は見えない。新月?

 
 
月眼 「月兎遠隔催眠術(テレメスメリズム)」
 
 [スペル]
 
 鈴仙のラストスペル。( )内は読み仮名。
 画面左端には上方から下方へ、右端には下方から上方へ
 どんどんと使い魔が移動しながら、反対側の端へと銃弾を連射する。
 狂気の瞳の作用により、銃弾は上下方向に平行移動し、軌道がシャッフルされる。
 狂気の作用の間は銃弾に当たり判定は無くなる。
 
 〜月からの援軍。
  もはや幻視なのか本物なのかわからない位。〜
 〜月から催眠術を掛けるには、月を見てもらう必要がある。
  お月見とは、大昔の月人が考えた人間操作術なのかもしれない。〜

 (スペル解説より)
 
 ・tele- …(連結形)「遠い、遠距離の」
 ・mesmerism …「魅惑、魅力、メスメリズム、催眠術」
 
 メスメリズムとは、18世紀にオーストリアの医師、Franz Anton Mesmer が開発した、
 生命現象を司る物理的流体・動物磁気を操作し、万病を治すとした治療法。
 その実は、トランスや暗示効果など、今で言う催眠術を使って病気が治ったと思わせた療法。
 動物磁気説は科学的に顧みられる事のない遺物となり、いわゆるインチキ療法だったが、
 後に催眠療法や精神分析の道を開くきっかけとなった。
 
 Telemesmerism.
 「遠隔催眠術」



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