火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力 パチュリーの操る精霊魔法は、火水木金土日月の7成分を 単独あるいは合成魔法としての構成となっている。 東方紅魔郷においては、 日・月の魔法をExtra
Stage にて、 火・水・木・金・土の魔法をStage4にて使用してくる。 火+水+木+金+土+日+月
の並びでピンと来る通り 一週間あるいはその源となった七曜をモチーフとしつつ、 また、木火土金水の合成魔法の相性としては 五行思想に大きく依拠している。 五行思想に見合う形を考えれば、日・月は陰陽思想に関連するだろうか。 さて、七曜とは、 肉眼で見える五惑星の火星・水星・木星・金星・土星と、 太陽・月の合計七天体のことであり、いずれも 他の星々、天球からは独立して運行する点で これら七天体は同種の物と古代よりみなされており、 古代の天文学や占星術などの面で特別視、神聖視されてきたものである。 陰陽思想とは、古代中国の思想より発展した、 宇宙のあらゆる事物は 陰と陽の互いに対立する属性二つに分類される とする思想である。 陰陽二気によりあらゆる事物の消長盛衰が起こり、 また二気の調和により自然の秩序が保たれる。 本作では陰陽玉の模様としても馴染み深い。 五行思想もまた、古代中国の思想であり、 万物は木・火・土・金・水の5元素から成るとする説である。 しばしば西洋の四元素説と比較される。 (四元素説については後述する) この万物の基本的な構成要素、元素を扱う五行思想が パチュリーの魔法のベースとなっている様であり、 本項ではこれを中心にパチュリーの魔法(スペル)について述べてゆく。 なお、陰陽思想と五行思想が結び付いて生まれた陰陽五行思想もあるが、 こちらは五行(木・火・土・金・水)のそれぞれに陰陽二気を配するかたちで、 この形式ではパチュリーの魔法には今のところ現れていない様である。 「五行相生」 さて、五行思想の5つのエレメントにはそれぞれの間に相性があり、 特に代表的なものとしては 相性の良い
「相生関係」 と、相性の悪い 「相剋関係」
がある。 このうち、相生関係がパチュリースペル、 特に東方紅魔郷では重要である。 五行相生は以下の関係である。 木生火:
木は摩擦などで火を生じる 火生土: 物が燃えて生じた灰は土に帰る 土生金:
土中より鉱物・金属が得られる 金生水: 金属表面には水滴が生じる(凝結) 水生木:
水は木の生育に必須である そして、パチュリー所持の二成分合成スペルは以下の5つである。 木&火符
「フォレストブレイズ」 火&土符 「ラーヴァクロムレク」 土&金符 「エメラルドメガリス」 金&水符
「マーキュリポイズン」 水&木符
「ウォーターエルフ」 いずれも上の五行相生の関係に合致している。 すなわち、相性の良い成分同士を合成しており、 おそらくは相乗効果が期待されるとかあるに違いない。 また、単独元素のスペルもこの構成に基づいている。 例えば、難易度ノーマルで魔理沙・魔符の場合は 第1スペルが
木符 「シルフィホルン」、 第2スペルが 火符 「アグニシャイン上級」である。 五行相生の
「木生火」が、木符→火符のスペル使用順にも適応されている。 ・木生火 木符「シルフィホルン」→火符「アグニシャイン上級」(N・魔符) 木符「シルフィホルン上級」→火符「アグニレイディアンス」(H/L・魔符) ・火生土 火符「アグニシャイン」→土符「レイジィトリリトン上級」(N・霊符) 火符「アグニシャイン上級」→土符「トリリトンシェイク」(H/L・霊符) ・土生金 土符「レイジィトリリトン」→金符「メタルファティーグ」(N・恋符) 土符「レイジィトリリトン上級」→金符「シルバードラゴン」(H/L・恋符) ・水生木 水符「プリンセスウンディネ」→木符「シルフィホルン上級」(N・夢符) 水符「べリーインレイク」→木符「グリーンストーム」(H/L・夢符) このように、単成分のスペルの場合は、 その使用順によって術が強化されたりするということかもしれない。 なお、東方萃夢想や東方文花帖においては 相生関係以外にも相剋関係や日・月も交えた合成スペルが 多くは実験的スペルであろうが、使用されている。 「元素」 さて、先の段落では古代中国の五行思想が 西洋の四元素説としばしば比較されることを挙げた。 この要素はパチュリーの各スペル名に盛り込まれている。 西洋では古代ギリシアのアリストテレスが発展させた四元素説が知られる。 これは水・空気(風)・火・土の四つを万物の根源としており、 これがアラビア科学や錬金術師・パラケルススへと継承された。 パラケルススの著書や錬金術に関与するのが 「プリンセスウンディネ」 「シルフィホルン」
「賢者の石」である。 各スペルの項にも述べたが、 例えばウンディーネやシルフは四大精霊としてパラケルススの著書に記された。 (このほか、「シルバードラゴン」
「エメラルドメガリス」
「マーキュリポイズン」も 錬金術に関わる可能性がある) 西洋の魔女であるパチュリーに、西洋錬金術は違和感なく馴染む。 西洋の四元素説と東洋の五行思想がしばしば比較されるのと似て、 西洋の錬金術に対してはしばしば中国の錬丹術が比較に挙げられる。 錬金術と錬丹術という視点では、ここではマーキュリポイズンが どちらにも水銀の関わりが深いことから着目される。 このように、西洋と東洋の元素観ならびに錬金術(錬丹術)、 これらを意識的にパチュリーのスペルとして関連させている と考えても違和感は小さい。 一方、古代インドにおいても「存在を構成するものは地・水・火・風の四大である」 とする論があり、これに関与するのが古代インドの火神・アグニの名を冠する 「アグニシャイン」
「同レイディアンス」である。 インドにおいても錬金術の研究の歴史があり、 上記で示したスペル間の関連性はここでも保たれ、強固である。 また、五行思想とあわせて紹介した陰陽思想の方も 陰陽の二気が万物を構成する要素とも解釈出来る点で「元素」的、とも思える。 パチュリーのスペルには陰陽が月と太陽とに対応し、 それぞれ「サイレントセレナ」
「ロイヤルフレア」に関わる。 先ほどの単独スペルの発動順と五行相生の関係を思い起こせば、 月符 → 日符
の発動順にも、「陰陽」の単語に見る漢字の順序が 関与しているのかもしれない。 以上を総合すると、各種スペルは陰陽・五行・四大元素と いずれも万物の根源と考えられた要素に基づくか関連するものであり、 それらを研究、理解し司ることが、錬金術とパチュリーの魔術で密接なのであろう。 そして、それこそが万物に宿るとされる精霊を扱う魔法、 パチュリーの専門とする魔法の本質であると考えられる。 合成魔法やスペル順のシーケンスは、 その基本に則った上での五行思想の面での応用に過ぎず、 一方で、萃夢想・文花帖に見られる変則的な合成魔法は それこそ錬金術研究においての試行錯誤の様に 「実験」
の様相が強く表れているのであろう。 後に(文花帖)彼女のスペル名に科学の要素が見え隠れするのは 錬金術の時代から試行錯誤や新知見の獲得を繰り返し、科学が進展してきたように 実験の成果が着実に現れてきているのかもしれない。
参考 「Wikipedia」(週、七曜、陰陽、五行思想、陰陽五行思想、元素、四大元素、錬金術) 「東方Wiki」>東方紅魔郷スペルカード#4面ボススペルカードキャラ別出現表
Special Thanks 「剣聖の水浴び場」>研究・考察 >精霊魔法研究 |