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東方の紅魔の郷

 
 各種記事に著してきた様に、
 東方紅魔郷には元ネタとして関わるいくつかの作品がある。
 本項では東方紅魔郷の舞台設定に大きく関わったか
 インスピレーションを与えたか、あるいはかすっているかもしれない要素を
 並べ書きなぐってみようと思う。
 
 まず、代表的な 「作品」 を挙げる。
 
 ・「そして誰もいなくなった」 アガサ・クリスティー
  フランのスペル 「そして誰もいなくなるか?」
  フランのテーマ曲 「U.N.オーエンは彼女なのか?」
  フランと魔理沙、エクストラ撃破後の会話
  そして、森博嗣の作品を間接的に介してルーミアの 「十進法」 に関わる。
 
 ・「すべてがFになる」 森博嗣
  レミィのスペル 「レッドマジック」
  確証は弱くなるが、咲夜のスペル 「操りドール」 「殺人ドール」 に関わる。
  森博嗣作品に関してはZUN氏のコメントに 「詩的私的ジャック」 にちなむものがある。
 
 ・「黄泉津比良坂、血祭りの館」 「黄泉津比良坂、暗夜行路」 藤木稟
  咲夜のテーマ曲 「月時計 〜ルナ・ダイアル」 のコメントには
  作品名が書かれ、元ネタが明かされている。
 
 ・「ジョジョの奇妙な冒険」 荒木飛呂彦
  咲夜のスペル 「ザ・ワールド」
  レミィと魔理沙の会話 「パンの枚数」 に関わる。
  また、以降の東方作品でもいくつかネタが用いられている。

 
 
 
 紅魔館の位置

  
 東方文花帖や東方求聞史紀では湖の畔に建つとされているが、
 ここでは東方紅魔郷当時の設定について掘り下げる。
 東方紅魔郷当初の紅魔館についての記述は以下の通りである。
 
  いつのまにか、霧で湖の全体が見渡せなくなっていたことに気づくと、
  勘の普通な少女は、湖に浮かぶ島に何かがあるのでは?と思ったのだった。
 
  湖は、一面妖霧に包まれていた。

  (中略)中心地には島があり、そこには人気を嫌った、
  とてもじゃないけど人間の住めないようなところに、
  窓の少ない洋館が存在した。

  (マニュアル・バックストーリーより)
 
 湖に浮かぶ島とそこに建つ館が舞台である。
 ここでは 「そして誰もいなくなった」 と 「すべてがFになる」 を持ち出そう。
 
 「すべてがFになる」 は、妃真加島 (ひまかじま) と呼ばれる島が舞台であり、
 そのハイテク研究所で起こる密室殺人事件を扱う推理小説である。
  彼女が当地、愛知県内のある研究所にいるということは、その分野では周知のこと
  だった。三河湾に浮かぶ妃真加島にある私立研究所に、真賀田四季はいる。
  その研究所は、彼女の両親の資産と、関係財団の助成で建てられたものであり、
  真賀田四季は、その事件以来、ずっとそこで研究を続けている、という話であった。

 真賀田博士は十四歳の頃、両親を殺害。心神耗弱が認められ無罪となったが、
 以来、真賀田研究所に幽閉されている身である。
 島とは船もしくはヘリで行き来する。
 
 「そして誰もいなくなった」 は、インディアン島と呼ばれる島が舞台であり、
 その邸宅で起こる連続殺人事件を扱う推理小説である。
  ヨット好きのアメリカの富豪が島を買い取って、このデヴォンの海岸に近い島に
  贅を尽くした近代邸宅を建てた記事が最初だった。ところが、アメリカの富豪の
  三番目の妻が船に弱かったので、邸宅と島とが売りに出されることになった。
  人目を引く広告が何回も現れた。そして、オーエン氏なる人物が買い取ったという
  簡単な記事が掲載された。

 このオーエン氏が、例のU.N.オーエンである。
 文中にあるように、島へは船で移動する。

 

 
 紅魔館
 
 
 簡単に表現すれば、緑に囲まれた中に異彩を放つ紅い洋館である。
 また、窓が少ない、大きな時計台がある、といった特徴もある。
 さらに、窓が少なくて暗い上に今回の紅霧異変である。
 幻想郷全体が夏の日差しを遮られ、ぼんやりと明るい程度に減光されている。
 紅魔館の中は極めて暗い。
  妖霧の中心地は、昼は常にぼんやり明るく、夜は月明かりでぼんやり明るかった。
  霧の中から見る満月はぼやけて数倍ににも膨れて見えるのだった。

  (中略) 中心地には島があり、そこには人気を嫌った、
  とてもじゃないけど人間の住めないようなところに、窓の少ない洋館が存在した。

  昼も夜も無い館に、「彼女」は、いた。
  (マニュアル・バックストーリーより)
 
 ここでは 「すべてがFになる」 と 「黄泉津比良坂、血祭りの館」 を扱おう。
 
 「すべてがFになる」 は前述の通りである。
 真賀田研究所の外観については以下の様に語られる。
  「あんな事件があったので、隔離されているといった方が正確かもしれません。
   出入り口は一つしかありませんし、常に厳重に監視されています。真賀田女史は
   十五年間そこから一歩も出ていないんですよ。まあ、研究所自体が、ちょっと
   変わっていましてね……、窓は一つもありません。我々全員、女史とほとんど
   同じような密室環境で仕事をしているようなものです」

 紅魔館は、窓が少ないとは言え、極端なところでは
  霊夢 「この家には窓が無いのかしら?」
 のセリフもあり、窓が無いと錯覚するほど暗いのだろう。
 
 また、窓の少ない造りと異変もあいまった内的なものであるが、
 「昼も夜も無い」 の描写がある点は 「すべてがFになる」 にやはり共通である。
 真賀田研究所は窓が一つもないので当然であるが。
  「博士は、もう、その部屋に十五年も閉じ籠もっていらっしゃいますね」 萌絵は
  頭に仕舞ってあった質問事項を思い出す。 「季節もない、夜も昼もないところに
  十五年もいて、どんな変化がありましたか? ご両親が一度に亡くなられたことで、
  どんな変化がありましたか?」
  「まず、最初にお断りしますが、私は初めから自分の自由意志でここに
  いるわけではありません。」

 
 「黄泉津比良坂、血祭りの館」 は、五百年の歴史を持つ十津川村随一の名家である
 天主家で起こる連続猟奇殺人事件を扱う小説である。
 寂しい山中の閉ざされた館が舞台であり、「血祭りの館」 が前編、
 月時計がちらりと登場する 「暗夜行路」 が後編である。
 以下、装飾等の描写は適宜削り抜粋にて舞台となる館の様子を記す。
  野生の獣や魍魎の類なら別として、到底、人など通いそうにもない寂しい山の
  頂近く、それも蔦草の絡まる杉木立と竹藪に囲まれた暗所の一角に、突然、
  壮大な館が出現したとすればどうであろう?
  しかもそれは偏奇な擬洋風館で、外壁は毒々しい赤色なのである。
  門から館の玄関にそって一列、そして館を取り巻いて、松明の赤い炎が
  妖しく揺らめき、血塊のような館の姿を照らしている。
  館は八角形の本体の上に円筒形の高い尖塔を持っていた。三階建ての尖塔である。
  尖塔の七階部分には、途方もない大時計が埋め込まれ、時計盤が壁面一杯に
  顔を覗かせている。

 こんな奇怪な建物が建った時の様子と麓の住人の噂はこのような具合である。
  「四、五年ほど前のことになるかいなぁ。見たことも無いような気味の悪い
   赤い建物を建てたんですわ。なんで赤いか知ってますか? ようさん
   女子を人買いから買って、その血を絞って館の壁に塗ったいう噂ですわ。
   天主いう家は昔から妖術を使って栄えとるらしいんです。それであそこの
   館、『血祭りの館』って呼ばれてるんですで。呪われた家なんです」

 魔理沙の 「もともと呪われてるぜ」 (エクストラバックストーリー) も想起されるか。
 また、別の記述。
  目の前に聳えた異国風館。
  なのにその姿がどこかグロテスクで醜怪に感じられるのは、不思議な印象であった。
  裏寂れた山中の高台に、場違いな豪奢で異形の建造物がぽつりと建っている様子は、
  まさに『血祭りの館』と呼ばれるに相応しい館の偏奇さだけを際だたせている。

 

 
 紅魔館の内部空間
 
 
 紅魔館内は紅く暗い。それよりも気になるのはその広さである。
  霊夢 「それにしてもこの館って、外から見て、こんなに広かったっけ?」
  パチェ 「家には空間をいじるのが好きな人がいるのよ」

 咲夜の能力で空間が操作され、館内は遠大な構造ともなり得る。
 
 ここでは漫画 「ジョジョの奇妙な冒険」 を取り上げよう。
 
 「ジョジョの奇妙な冒険」 は、特にザ・ワールドも絡む第三部に着目する。
 吸血鬼DIO と因縁深いジョースター家を中心とした一行が
 吸血鬼DIO を倒すため世界を旅する物語が第三部に当たる。
 スタンドと呼ばれる、ビジュアル化された超能力を駆使した戦いが魅力である。
 さて、物語も終盤、第三部のラスボスである吸血鬼DIOの館内に至るが、
 そこはDIOの部下、ケニーGの能力で幻覚空間となっていた。
  (ギギギ ギギギ)
  (フオオオオオオオ)
  
  「おい 見ろよこのろーか… 終わりが見えねーぜ」
  「本物じゃあねーよな… トリックか幻覚だよな…」

 (中略)
  
  「おいアヴドゥルどうする? 延々続いて見えるぜ」
  「うむ ジョースターさんは館に火を放てといったが……
   こんな遠大な迷路では火を放つのはこっちが危険だ……」
 ケニーGを倒すと館の内観は正常な空間を取り戻し、普通の館となった。
 (それでも結構広大で豪華な館だったが)

 

 
 紅魔館の催し物
 
 
 特に 「東方文花帖」 で明らかになったことだが、豆撒きなど
 その時の興味や季節柄や思いつきから種々の催しがある。
  この洋館では、度々変わった催し物が開催されている。ただ、その殆どが
  事前に告知がないため、関係者以外に知られる事は少ない。それでも、
  メイドの数も多く、紅魔館内部の者だけでも十分盛り上がっているようである。
 
 ここでは再び 「そして誰もいなくなった」 を紐解こう。
 
  「スティクルヘヴンでも、オーエンなるものの代理として、彼がすべてのことを
   取り計らっています。島で一週間、陸と交渉を断って暮らす賭けをするのだから、
   救助を求められても気にしないでくれ――村民にこう説明したのもモリスなのです」
  「そんなことを言われても、村民は怪しまなかったのかね」
  メインは肩をすくめた。
  「閣下はインディアン島がアメリカの若い富豪エルマー・ロブスンのものであった
   ことを忘れておられる。ロブスンはしじゅう、奇想天外なパーティを催していました。
   村民もはじめは目をまるくしたようですが、しまいには慣れてしまって、インディアン
   島のこととなると、どんな話を聞いても驚かないようになってしまったのです」
  副総監は苦りきって、うなずいた。

 

 実際どうかは不明で、偶然の可能性もありますが、
 いずれの作品もスペルカード名などで関連があり、
 上記の符合も看過しにくいところである。

 

 
 参考
 藤木稟著 「黄泉津比良坂、血祭りの館」 徳間文庫
 荒木飛呂彦著 「ジョジョの奇妙な冒険」(15,16) 集英社文庫
 森博嗣著 「すべてがFになる」 講談社文庫
 アガサ・クリスティー著、清水俊二訳 「そして誰もいなくなった」 ハヤカワ文庫

 



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